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 第43回 平衡機能検査技術講習会レポート 会期:2013年7月16日(火)~20日(土)

「北国の女」看護課 北川 悦子
「北国の女」看護課 北川 悦子

 2013年7月16日(火)~20日(土)の5日間、日本めまい平衡医学会主催の第43回平衡機能検査技術講習会に参加させていただきました。
 場所は東京日本橋にある興和株式会社の11階で、ビルの窓からは東京スカイツリーの上部が眺められました。
 東京は前日まで35度前後の猛暑だったそうですが、研修が始まってからの数日間は30~32度位の気温で、東京の方々は「今日は過ごしやすいですねぇ」と、話されていましたが、北国育ちの私にとっては、『猛暑』でした……。
 研修は講義と実習で、平衡機能に関する知識と技術を学んできました。講習会で学んできたことをご紹介します。

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1.平衡機能とは?

スカイツリー
スカイツリー

 平衡機能とは、体のバランスをとる機能のことです。地球の重力に対して倒れないようにバランスをとるため、重力に対する自分の位置をとらえ、重力とのずれを感じ、元の位置に戻そうとする体内センサーが働いています。
 この姿勢を保持する体内センサーは、視覚・内耳・体性感覚(体性とは身体を意味し、皮膚・粘膜・筋肉・腱・骨膜・関節嚢・靭帯などの身体を構成する組織にある感覚)の3つです。

 視覚は周囲の景色と自分の姿勢を合わせ、自分の動きや傾きを感じています。
 内耳は頭の動きや傾きを感じています。
 体性感覚は各骨格筋の伸び縮みや、足の裏の皮膚圧で動きや傾きを感じています。
 この3つのセンサーが動きの変化を感じて、その信号を脊髄・脳幹・小脳・大脳に送り、筋肉の伸び縮みを制御して、姿勢が保たれるようになっています。
 これらのどこかに障害が起これば、めまいがしたり、平衡障害を起こします。

 このセンサーの中で最も優先権があるのが視覚です。
 では、内耳はどのように頭の動きや傾きを感じとっているのでしょうか?

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2.内耳(前庭)の構造について

 耳は外耳・中耳・内耳の3つに大きく分けられます。(図1)
 内耳は耳の奥の側頭骨という骨の中に位置しています。
 内耳は聴覚を司る蝸牛と平衡(バランス)を感覚を司る前庭で構成されています。この2つは隣接しているため、平衡機能と聴力は密接に関わっています。

(図1)
(図1)
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●前庭

 前庭は三半規管と耳石器で構成されています。どちらも内リンパ液で満たされています。
 三半規管は頭の回転を、耳石器は直線の動きを感じ取ります。

(1) 三半規管

 三半規管はその名の通り3つの半円状の管からなり、互いに垂直に位置しています。  その位置によって外側(水平)半規管、前半規管、後半規管と呼ばれています(図2)。  各半規管内には膨大部と部分があり、この中の膨大部稜という部分に毛の生えた感覚細胞が存在します。この感覚毛はクプラというゼラチン状の物質でまとまり、膨大部内を横切って反対側に接しています。  頭が動くと内耳液も動き、クプラが傾きます。これによって感覚細胞が刺激され、各方向の回転を感じます(図3)。

(2) 耳石器

 耳石器は左右の直線の動きを感知する卵形嚢と、前後・上下の直線の動きを感知する球形嚢から構成されています(図4・5)。
 耳石器には平衡班という感覚上皮があり、感覚上皮からでている感覚毛が、上に乗っているゼラチン状の耳石膜に入り込んでいます。

(図2)
(図2)
(図3)
(図3)
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(図4)
(図4)
(図5)
(図5)
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 耳石膜の中には炭酸カルシウムよりなる耳石(平衡砂)があります。
 頭が動くと耳石膜の中の耳石が動き、感覚細胞が刺激され、各方向の直線の動きを感じます。
 三半規管・耳石の有毛細胞に、前庭神経終末が分布していますが、感覚細胞が刺激されると、その刺激は電気信号に変えられ、前庭神経に伝えられます。

 前庭神経は、小脳橋角部から脳幹に入り、小脳に直接いく繊維と分かれたあと、前庭神経核を形成します。
 前庭神経核は、さらに小脳・脊髄・大脳皮質へ繊維を送り、眼筋(眼を動かす筋肉)の神経に連絡して、前庭(三半規管・耳石器)と眼球運動や自律神経と密接に結びついています。

3.眼球運動について

 例えば、頭を右に動かすと眼球は左に、頭を左に動かすと眼球は右に動きます。これを前庭動眼反射といいます。
 その後、眼球を正面に戻そうとする動きをします。
 これは物を見る時に、眼の中心で物を正確に捉えようとしているためです。
 この一連の動きにより、私達は動いている中でも視点を定めて一点を見つめることができたり、視線を他の物へと移すこともできます。

 通常は刺激が無くなるとこの眼球運動は治まります。又、刺激の無い場合はこの眼球運動は起こりません。
 平衡機能を司る器管に異常が生じると、この眼球運動が治まらず、眼球が動揺したままとなります。これを眼振といいます。
 このため視点が定まらず、めまいを感じることになります。

 病気ではないめまいもあります。人の体内センサーは、普段の生活でのある程度の刺激に対しては、対応できるようになっています。
 遊園地の乗り物やアトラクションなどで、体をぐるぐる回されたり強く揺らされると、刺激が内耳に伝わり眼球の動揺が治まらず眼振を起こします。このためめまいを感じることになります。この刺激は自律神経にも伝えられるため、吐き気なども感じたりします。

4.めまい疾患の種類

 めまいには、内耳の前庭が障害されて起こる内耳性めまい(末梢性)と、神経から脳にかけて障害されて起こる中枢性めまいがあります。

◇ 内耳性(末梢性)めまい

(1) 良性発作性頭位めまい症(BPPV)

 内耳性めまい疾患の中で最も多い疾患です。
 何らかの原因により、耳石器から剥がれた耳石が、三半規管に入り込むことによって起こる疾患です。
 三半規管の中でも後半規管が最も多いといわれています。

 起床時・就寝時・頭を上に向けたり下に向けたりした時に、めまいが起きます。
 めまいの持続時間は数秒~数十秒で、じっとしていると治まりますが、同じ頭位で再度めまいが起こります。
 聴力に影響はありません。
 治療法としては、当院で行っているエプリー法などがあります。この治療法は、眼の動きを見ながら頭や体の向きを変えて、三半規管に入り込んだ耳石を耳石器に戻す方法です。

(2) メニエール病

 内耳のリンパ水腫が原因とされています。  難聴・耳鳴り・耳閉感と回転性めまいを繰り返します。  めまい発作は数十分~数時間持続します。

(3) 前庭神経炎

 風邪等の後に、片側の前庭神経がウイルス感染を起こして発症するといわれています。  激しい回転性めまいが数日持続した後、歩行時のふらつき感が数週から数ケ月続き、消失します。めまいは繰り返すことはなく、聴力に影響はありません。

(4) 突発性難聴に伴うめまい

 突発性難聴は突然起こる難聴で原因は不明ですが、耳の中の血流障害などが考えられています。  蝸牛とともに前庭が障害された場合に、めまいが起こるとされています。めまいは難聴と同時に発症することが多く、数時間~数日で軽快します。

◇ 中枢性めまい

 めまいを起こす中枢性疾患の中で最も多いのが脳血管障害です。 小脳出血・小脳梗塞・くも膜下出血・脳梗塞などがあります。  脳血管障害以外では脊髄小脳変性症・多発性硬化症・脳腫瘍などがあります。  めまいで受診される2~3%の方が、中枢性めまい疾患といわれています。疾患によっては、生命にも関わることがあるため、全身状態が安定していることを確認したうえで、めまいがどこの障害で起きているのか、各種の聴力検査・平衡機能検査等を行い、内耳性めまいか中枢性めまいかを慎重に診断していきます。

5.平衡機能検査

 平衡機能を調べる検査には、眼球の動きを見る検査と、身体の平衡(バランス)を見る検査があります。 当院で行っている検査をいくつかご紹介します。

◇ 眼球運動に関する検査

(図6)
(図6)
(図7)
(図7)
(図8)
(図8)
(図9)
(図9)
(図10)
(図10)
(図11)
(図11)
(図12)
(図12)

 特殊なめがね(フレンツェル眼鏡)を装着して、眼振を調べます(図6矢印)。

(1) 注視眼振検査

 座った状態で正面・上下・左右を見て貰い、眼振の有無・程度を調べる検査です。  脳血管障害などで眼球運動の障害が生じます。

(2) 自発眼振検査

 暗所での眼振の有無・程度を調べる検査です。  正常では眼振は見られません。

(3) 頭位・頭位変換眼振検査

 頭位をどちらか一方に傾けたり臥位にしたりして、三半規管や耳石器を刺激し、眼振を調べます(図7)。  疾患や障害部位によって、異なる眼振や異常な眼振が見られるため、めまいの鑑別診断をする上で重要となります。

(4) 視標追跡検査(ETT)

 左右や上下に動く視標をジーッと見てもらい、眼球運動を調べます(図8)。  小脳や脳幹障害などで異常が見られます。

(5) 視運動性眼振検査(OKN)

 連続的に眼の前を横切る視標(目印)を見てもらい、視線を移す際の眼球運動を調べます(図9)。  正常な人は指標を追っていくことができますが、小脳・脳幹障害や先天性眼振などで異常が見られます。

(6) 温度刺激検査(カロリックテスト)

 外耳道に冷水や温水を注入して、外側半規管の内リンパ流動を起こさせ、これによって誘発される眼振を調べます(図10)。  左右別に外側半規管の機能を診ることができます。内耳障害がある場合は、眼振反応が見られないこともあります。

◇ 体平衡に関する検査

(7) 重心動揺検査

 直立姿勢をとった時の体の揺らぎを、開眼・閉眼それぞれの状態で記録します。コンピューターが内蔵された台に乗って計測し、足の裏からみた人の重さの重心の揺れを記録し、数値として解析されます(図11)。  健康な人でも閉眼すると体は揺れますが、内耳性めまいの場合はそれが顕著になります。又、中枢性めまいの場合は開眼・閉眼の違いがなく、大きな連れが見られます。

(8) 書字検査

 開眼・遮眼(目隠しをした状態)の文字を比較し、一連の文字、各文字にあらわれる所見を比較します(図12)。
 当院ではカタカナでア・イ・ウ・エ・オを縦に書いてもらっています。
 内耳障害の場合は、文字が左右どちらかにずれていきます(B)。
 中枢性障害の場合は、不調和で支離滅裂な文字だったり、文字が震えていたりします(C)。

6.まとめ

 めまい検査の中には、めまいを誘発するものもあり、患者様には少し辛い思いをさせることもあると思います。
 検査を行う側の私たちは、なるべく負担をかけずに検査できるよう、誘導の仕方を工夫し、わかりやすく説明することが大切です。また、正確な検査結果を得るためにも正確な知識と技術が必要であることを再認識しました。今回の講習会で学んだことを、今後現場で活かしていけるよう努めたいと思います。

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参加者と記念写真
参加者と記念写真
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