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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

聴力測定技術講習会 中級レポ 看護課 浅野 佳代

2回目の講習会

 2014年2月20(木)・21日(金) 第25回聴力測定技術講習会を受講しました。私はこの講習会に参加するのは2回目で、今回の〈中級〉は前回2011年の聴力測定技術講習会〈一般〉を終了した者を対象に行われるものです。
 内容は次の通りです。

2月20日(木)
1日目
  • ・耳音響放射・耳鳴り検査
  • ・新生児・乳児聴力検査
  • ・聴覚生理
  • ・耳管機能検査・インピーダンスオージオメトリー
  • ・聴覚検査とマスキング
2月21日(金)
2日目
  • ・聴覚検査と法令
  • ・補聴器とその検査
  • ・人工内耳とその検査

 この中で、当院とかかわりのある検査と補聴器について中心に報告します。

中耳・内耳の検査

 音は外耳―鼓膜―中耳―内耳と伝わっていきます。中耳は音圧を物理的に内耳のリンパ液に伝える役目をはたし、その音圧は内耳で電気信号に変えられます。
 信号は神経から脳へと伝わって音として認識されます(図1・2)


1.ティンパノメトリー検査

 中耳の機能を知るための検査がティンパノメトリーと耳管機能検査です。ティンパノメトリーは、鼓膜の動きやすさをみる検査です。外耳道圧と中耳腔圧が等しい時に鼓膜は最もよく動きます。正常な状態では外耳道圧と中耳腔圧は等しくなっています。イヤープローブを外耳の入口にあて外耳道を陰圧から陽圧に変化させます(図3)。そのとき鼓膜に音圧をかけその音圧の跳ね返りを測定します。鼓膜がよく動く場合、音は吸収されますが、動きが悪いと抵抗(インピーダンス)が強く音がはねかえってきます。それを測定しグラフ化したのがティンパノグラムという検査結果のグラフです(図4)。

 外耳道にかけた圧力が0になった時、鼓膜が最もよく動いている状態(グラフの山が中央に来ているA型)が正常な状態です。外耳道に陰圧をかけた時、鼓膜が最もよく動く山が陰圧部分(左)によっている(C型)場合は中耳腔内も陰圧になっているということで、これは耳管の機能が悪く中耳内の換気がうまくいっていない時などにおこります。又、炎症で中耳腔内に水が溜まっていたりすると鼓膜が動かず、山のない平坦なグラフ(B型)になります。

2.耳管機能検査

※当院では行っておりません
 次に、耳管機能検査といって耳管の機能を調べる検査があります。耳管は鼓室と上咽頭を結ぶ約3.5㎝の管状の器官で頭蓋底深部を走行しています。耳管は中耳の平衡圧や分泌物の排泄、感染防御の役割をもち、普段は閉鎖していますが、嚥下時などにごく短時間開きます。

 耳管が通らなくなる耳管狭窄症になると中耳が陰圧になり耳閉感や自声強聴(自分の声が響いて聞こえる)等がおこります。又、中耳の老廃物が排泄されず滲出性中耳炎をおこしたりします。逆に、開きすぎても同様に耳閉感・自声強調や呼吸音が聞こえる等の症状がでます(耳管開放症)。

(図3)インピーダンス・オージオメトリー装置のブロックダイアグラム
(図3)インピーダンス・オージオメトリー装置のブロックダイアグラム
(図4)ティンパノグラムの分類
(図4)ティンパノグラムの分類

3.耳音響放射検査(OAE)

 内耳(蝸牛)の機能を調べる検査に、蝸牛のコルチ器の外有毛細胞の機能をみる耳音響放射という検査があります(図5・6)

 蝸牛内で、音波によるリンパ液の揺れを感知し電気信号に変換して神経に伝えているのが内有毛細胞と外有毛細胞です。そのうち外有毛細胞は有毛細胞自体が音に反応し伸縮して音を増強(小さい音は大きく、大きい音はそのままに音の差を小さくして伝えている)させているのではないかといわれています。その時、外有毛細胞自体も音を発生させています。その音を測定することで、外有毛細胞が正常に働いているか調べる検査です。蝸牛病態の把握や難聴の部位診断、他覚的聴力検査(聴力ではなく、音波の電気的な刺激を計測して聞こえを計る検査)・新生児や乳幼児の難聴スクリーニング等に用いられます。

 耳音響放射は、蝸牛の外有毛細胞の障害による難聴で消失します。感音難聴があっても高迷路性難聴(蝸牛より奥の神経経路の障害)の場合、耳音響放射は消失しません。

 耳の入り口側の中耳に障害がある伝音性難聴でも耳音響放射は検出されません(音自体が内耳に届かないため)。誘発耳音響放射では約30dBHL、歪成分耳音響放射で約60 dBHLの難聴で検出されなくなります。

 また他覚的検査として機能性難聴や詐聴の診断の際に用いられる場合もあります。いずれにせよ病態の診断は一つの検査だけでなく、他の複数の検査と組み合わせ行なわれます。

4.聴性誘発感応(聴神経~脳の聞こえの反応)

 聴性誘発反応は、聴覚の神経経路の反応で聴力レベルや聴覚障害部位の判定を行う検査になります。これらも他覚的検査です。

5.聴性脳幹反応(ABR)

 音刺激により誘発される脳波の電位変化を記録したものです。一定の潜時(約10秒。年齢などによって違いあり)のあとⅠ波~Ⅴ波まで記録されます。Ⅴ波の出現が認められるかが大事になります。反応閾値は約3KHzの音で、低音域の音には反応しません。高音域のみの難聴で低音域が聴こえている場合、反応は出ませんので注意が必要です(図7)

 臨床応用としては、患者が音が聞きとれているかを申告してもらう標準聴力検査では、評価が困難な症例である新生児・乳幼児の聴力検査や、機能性難聴・詐聴に対しての他覚的聴力検査として、また意識状態に影響されず再現性が良好であるため術中モニタリングや昏睡状態の脳幹病変の評価に用いられます。

 ABRは蝸牛神経複合活動電位発生から下丘までの聴覚伝導路を起源とする誘発電位で、反応の各ピークが脳幹の解剖学的部位にその起源が推定されることから聴覚伝導路の中で、どの部位に障害があるのか評価したい時にも用いられます。


聴性定常反応聴力検査(ASSR)

※当院では行っておりません
 聴性脳幹反応が低音域の音に反応しないのに対し聴性定常聴力検査(ASSR)は500・1000・2000・4000Hzの周波数に反応します。潜時や波形から神経学的応用はできませんが、他覚的聴力検査法として臨床応用されています。ただ、解析ソフトを搭載した専用検査機械が必要となります。

 近年、新生児スクリーニングが普及し、これに関連して生後3ヶ月までに難聴の程度を診断し、生後6ヶ月までに療育を開始することが推奨されています。聴性行動反応聴力検査や条件詮索反応聴力検査などの心理学的聴力検査とABRやASSRの他覚的聴力検査を組み合わせて総合的に判断します。しかし心理学的聴力検査は適応年齢が限られ検者の経験によって結果にばらつきが生じることから、聴覚スクリーニング後の正確な聴力評価には他覚的聴力検査の果たす役割が大きくなります。

(図8)講習会場
(図8)講習会場

 ABRやASSRの臨床応用としては

  • (1) 新生児聴覚スクリーニング後の確定診断
  • (2) 超早期(1歳未満)補聴器装用聴力閾値測定
  • (3) 人工内耳植え込み耳選択指標
  • (4) 機能性難聴
  • (5) 重複障害時聴力診断(発達障害など意思疎通が困難な方への検査)
  • (6) 詐聴の判定

などに用いられます


新生児・乳幼児検査

 小児難聴のなかで高度難聴は約1000人に1人、年間出生約120万人とすると年間約1200人(NICU入室児50~100人に1人)の割合で誕生しているそうです。

 先天性難聴に対して、新生児聴覚スクリーニングが行われていますが、これは義務ではないので都市部では高額である等の理由で実際に受けている新生児が少ない(東京都では4割)そうです。その後は3歳児健診、就学時健診でスクリーニングされます。その機会を逃すとあとは誰かが気付くしかないということになります。小児難聴の診断の問題点は、軽度・中等度の難聴が見つけにくいことにあります。両親が言葉の遅いことを気にして医療機関などで相談しても、医療者が難聴に気付かない、また健診などで難聴が指摘されても、それを受け入れない両親がいるなどの問題があります。

 どんな時に聴力検査をするのかですが、
(1) 生後3ヶ月ごろに出生時のスクリーニングで指摘される。
(2) 1歳未満では音に対する反応が乏しいと母親が気付く。
(3) 1歳~2歳では1歳半健診で勧められて、又発語が認められない。
(4) 2歳以上では言葉の遅れや発語がみられない。1語文(〝ママ〟や〝まんま〟など)のみしか話さない等で気付いた時になります。

 言葉の遅れの原因は難聴のほかに発達障害や自閉症、中枢性疾患も含まれることもあるので注意が必要です。ABRやASSR・OAEなどの他覚的聴力検査は大事な情報になりますが、単独では決定できず複数の検査を組み合わせて診断するのが大事なポイントになります。

 乳幼児の聴力測定は子供が音に対してどのような反応をしたか注意深く読み取り、検者自身の判断により子どもの聴力閾値を推定しなければならない所に難しさがあります。子供の体調や気分でも結果がかなり左右されることがあり、複数の聴力検査を組み合わせて行い、判定は慎重に1回の検査では判断しないようにする必要があります。

 補聴器とその検査

 補聴器とは、電気的に音を拡大して耳に聞かせる小型の装置でその機能の本質は音の増幅です。デジタル方式が主流になっており雑音抑制や周囲の音環境に応じた設定変化、ハウリング抑制などの機能を備えるようになりました。難聴者の聴覚コミュニケーションを改善するためのもので、聴覚障害が存在し補聴器の効果が期待でき、本人、又は家族のニーズがある場合に補聴器の適応になります。

 但し補聴器の効果はニーズを完全に満たさないことが多く(本人の期待度やイメージとの違いや聴力像によって補聴効果が得にくかったり、雑音が気になったりなどの理由)、補聴効果を予測してニーズをどの程度満たせるか、そしてそれがコストに見合うかを予測する必要があります。

補聴器装用のために必要な聴覚検査

(1) 純音聴力検査

 難聴の種類・程度(聴力閾値)・聴力型・左右差がわかります。

(2) 語音聴力検査

 語音聴力検査は「あ」「う」等の言葉の聞き取りを調べる検査です。

 音の大きさによって、どの程度言葉が聞き取れるかを調べ、正解率(弁別能・最高語音明僚度)を%であらわします。

 弁別能が60%以上あれば会話内容は、ほぼ理解できるので補聴器装用は有用です。弁別能が60%未満でも補聴器を装用しながらの聴力検査で明瞭度は改善する可能性はあり、音の情報量は増えます。音の大きさを上げることで明僚度が上がるならば補聴器は有効です。

(3) 補充現象と補聴器

 補充現象とは、音が大きくなった感覚が通常感じるより大きく感じたり、響いて聞こえたりする現象です。

 補充現象陽性の人は小さい音は聞こえないが大きな音はあたかも難聴がない人と同じよう、あるいはそれ以上に大きく聞こえ不快に感じるため、ちょうどよく聞こえる範囲がせまく補聴器はあわせにくくなります。

(4) 不快閾値検査

 不快閾値検査とは、その大きさの音を聞くと不快で耐えられなくなる最小の音のレベルで周波数ごとに提示音を大きくしていき不快で耐えられないレベルを求める検査です。補聴器適合において最大出力が不快閾値を超えないように調整します。聴力閾値と不快閾値の差をダイナミックレンジといいます。

 補充現象陽性の人はこのダイナミックレンジが縮小します。

(5) 音場検査

 次に補聴器装用効果を評価する検査として音場検査があります。

 音場検査はヘッドフォンを使用せずスピーカーから比較的広い空間に音を発して行う聴覚検査で、補聴器を使用した状態でも測定ができ、補聴器の効果を評価するために用いられています。

 聴覚検査と法令

 ちょうど講習の頃に某音楽家(?)の詐聴疑惑がワイドショーをにぎわせていました。身体障害者の認定は身体障害者福祉法で定められています。純音聴力検査の4分法(平均値を算出する方法)の聴力平均を用い、次のような基準があります。

2級 両耳の聴力レベルが100dB以上
3級 両耳の聴力レベルが90dB以上
4級 両耳の聴力レベルが80dB以上または両耳の最高語音明瞭度が50%
6級 両耳の聴力レベルが70dB以上または一側の聴力レベルが90dB以上かつ対側が50dB以上

 6級以上の認定で補聴器を作成する際の補助などがうけられます。

 国民・厚生・共済年金法や労働者災害補償保険法などでそれぞれ等級が決められており、保証や障害給付がうけられるようになっています。

 今回講習に参加したことで、一般の講習で学習したことに加え、聴力測定技術に関する理解をより深めることが出来ました。忙しい中講習に参加させていただいた院長先生はじめスタッフの方々に感謝します。

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