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fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(3)

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(3)目次

145話 補聴器の選び方

An.:  三好先生、前回までのお話なんですけれども。
 ともすると私たち、耳についての知識の乏しい一般の人間は、難聴をお持ちの難聴者、つまり耳が遠いもしくは不自由な方に対しては、まるで大きな声が万能のような錯覚がありました。
 耳が聞こえにくいんですから、単純に大きな声で話し掛けてやれば良い、みたいな。
 でも先生のご説明では、難聴にはさまざまなタイプがあって、決してすべての難聴者に対して、大きな声が有効とは限らない、とのことでした。
Dr.: その通りです、江澤さん。
 それは、いったいどうして、でしたっけ?
An.: 耳の聞こえの悪化には、いろいろのパターンがあって、ですね。
 もっとも身近な、高齢者の耳の聞こえの悪化では、カン高い音域から聞こえの悪化が始まります。
Dr.: そうすると、どんなことが起こるんでしょうね?
An.: 日本語の中の子音って言って、「サシスセソ」が聞こえなくなっちゃう。
 ですから会話してて、話の内容は8割理解できるのに、一番最後の、一番肝心の、「そうした」のか「そうしない」のか、そこを聞き取りそびれます。
Dr.: それじゃあ、会話全体の意味がまったくぼやけっちゃいますよね。
An.: それから先生。高齢者に小さな声で話し掛けても、ちっとも聞こえないくせに、大きな声を出してやると、喧しいって顔をされちゃいます。
Dr.: 年齢による耳の神経の変化で、「補充現象」ってのが起きていて、小さな音は聞こえないのに、大きな音はいきなり響いて聞こえるんですよ。
 お年寄りご本人に、悪気があるわけじゃありませんから(笑)。
An.: 年齢による聞こえの悪化以外の場合でも、難聴者に対して大きな声は万能とは言えないんでしょうか?
Dr.: 耳の病気の種類によって、それぞれ特徴的な聞こえの悪さを示すこともあるものですから。
 単純に大きな声が通用する難聴の方が、もしかしたら少ないのかも知れません。
An.: そうなんですね!? 江澤は、初めて知りました。
 そういう耳の不自由な方に応対する場合、どういうことに気を配ったら、良いでしょうか?
 今までそういうことを考えたことが、あまりなかったものですから。
Dr.: 耳の病気にはさまざまの種類がありますから、まずもっとも身近なお年寄りの聞こえの悪化への対応法を、考えてみましょう。
An.: お年寄りには、最近進歩してきた補聴器も、役に立つんじゃないでしょうか?
 この頃は補聴器も小型化して、見るからに性能の良さそうな製品も、電気屋さんの店先で見かけますよ。
Dr.: そうですね、江澤さん。
 その方一人ひとりの聞こえのタイプに合わせて、しっかりと調整した補聴器は、役立ちそうですね。
An.: えっ、先生、補聴器って、合わせたり調節したりするんですか?
Dr.: 江澤さん。メガネだって、その人によって、度を調節したりしますよネ?
An.: 近視用メガネとか、遠視用とか乱視とか、ですよね(笑)。
Dr.: メガネを選ぶときだって、いろいろ微調整するじゃあ、ありませんか。
An.: アレッ! でも補聴器って、電気屋さんの店先で、お孫さんがお年寄りに買ってプレゼントしていたりしてますよ!
Dr.: お年寄りは可愛いお孫さんの、お小遣いを貯めて買ってくれた補聴器だから、お孫さんの前ではニコニコして耳に入れてますけど・・・・・・。
An.: お孫さんがいなくなると、その補聴器は箪笥の中に永久にしまわれて。
Dr.: それっきり、二度と役立つことはなかったりして・・・・・・。
An.: それじゃあ、お年寄りご本人もお孫さんも気の毒ですよねぇ・・・・・・。
 どうして、そんなことが起こるんでしょうか、先生?
Dr.: 実は補聴器を選択するときにも、メガネを購入するときと同じように、微調整が必要なんです。
An.: 耳では、メガネの場合の、近視・遠視・乱視の調節とは、また違うんでしょうけれど。
Dr.: でも、その方の聞こえのレベルに合わせて機種を選び、微調整をして。それから。
An.: それから・・・・・・?
Dr.: メガネでも、レンズとフレームを組合せた後、実際に眼にかけてしばらく待つことが多いものです。
An.: メガネをかけたら、少し間をおいて、外の世界をしばらく見てみなくっちゃあ。
Dr.: ホントにその方にピッタリあったメガネかどうか、それで判りますから、ね。
An.: それじゃあ、補聴器の場合でも。
Dr.: そうです。機種を選び、実際に装用してみて、少し間をおいてからでなければ、ピッタリその方に向いた補聴器かどうか、判りません。
An.: お孫さんのプレゼントの補聴器は、ご本人に合っていないことも・・・・・・。
Dr.: 決して、少なくないのではないかと。
An.: 補聴器は、結構高価な製品もありますから、ね。
 お孫さんは気の毒、ですよね?
Dr.: それにお年寄りの場合には、第76回目のOAでお話ししたような、滲出性中耳炎の合併もあって、それは補聴器装用の前に確認しておかないと。
An.: それは大切ですね。次回滲出性中耳炎についても、もう一度復習が必要かも知れませんね。本日は、ありがとうございました。

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146話 補聴器のデジタル化

An.: 三好先生、前回までは耳の日の話題から、耳の遠い方ことに誰でもなってしまう可能性の高い、お年寄りの難聴についてお話が進んでいました。
 お年寄りのそれは、カン高い音域から聞こえが低下するので、母音すなわち「アイウエオ」に比べて、子音つまり「サシスセソ」が聞き取りにくく、日本語では会話の端々がぼやけてしまう。そのために相手の言っていることが、「イエス」なのか「ノー」なのか判然とせず、会話全体の意味が把握しづらく、対話が難しい。そう教えて頂きました。
Dr.: さすがは江澤さん、その通りです。
 それから江澤さん、お年寄りの難聴については、たしかもう1つ、特徴がありましたよね?
An.: 先生、それは「補充現象」です。
Dr.: その現象は、つまり・・・・・・?
An.: お年寄りの耳では、小さな音は聞き取りづらいんです。かと言って、大きな声はいきなり喧しく聞こえることになって、これまた聞きづらいものなんです。
 それを「補充現象」と言うんですけど、お年寄りに話し掛けるときの注意点の、もう1つのポイントです。
Dr.: 耳だけではなく、聴覚の中枢である脳そのものの老化も、聞き取りづらさに関連してますし、ね。
An.: そんなわけでお年寄りと会話するには、大きな声で話し掛けるだけじゃなく、考慮しておかなくっちゃあならない様々なポイントがあると伺いました。
 それに対して、最近性能の良くなってきている補聴器などを、うまく活用することができないだろうかと、そんな辺りの話題も進行しています。
Dr.: たしかに補聴器それ自体の性能は、以前と比較にならないほど向上しているんです。
 ことに近年のデジタル化の技術は、補聴器においても重要な働きをしています。
An.: それは先生、具体的にはどのような?
Dr.: どんなに性能の良い補聴器でも、アナログの技術しか使用できなければ、それは単純に言って「補聴器」ではなく「拡声器」の1種です。
 これも、例えとしては極端なんですけれども、アナログは「大きな声」を人間の代わりに機械が出しているようなもので(笑)。もちろんこれは極端な比喩ですから、ギャグの1種類だと思って聞いて頂きたいんですけど(笑)。
An.: それじゃ先生。アナログがデジタルになると、補聴器はどこがどう、違ってくるんでしょうか?
Dr.: 江澤さんは、コンピューターのきわめて原始的な原理のお話をご存じですよね?
An.: コンピューターは、受け取ったすべての信号を「プラス」か「マイナス」かに、全部分解するんでしたよね、先生。
Dr.: それを再生するためには、江澤さん?
An.: 分解した「プラス」の濃密な部分・疎らな部分、あるいは「マイナス」の濃い部分・薄い部分を、組み立ててもとの信号に再現するんでしたよね?
Dr.: そうです、江澤さん。それこそが、「デジタル化」という、コンピューターの原理なんです。
 それを通信に使用したり、音波を記号化した上で逆に音波に戻したり。そんなことも、できるんですけど。
An.: 先生、それってデジタル通信や補聴器のデジタル化のことじゃ、ありませんか!?
Dr.: さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。私たちが今話題にしている、デジタル補聴器ってその技術を活用した機器のことなんです(笑)。
An.: 江澤は、デジタル通信って、いろんな環境の良くない通信状況下にあっても、正確な情報を信号として伝えることができるって、聞きました。
Dr.: アナログ通信ですと、複雑な多数の信号をそのまま送るものですから、雑音や歪みなどの影響を受け易いんです。
An.: それに対してデジタルだと、送られる信号は「プラス」と「マイナス」だけですから・・・・・・。
Dr.: 歪みや雑音の影響を受けにくいんです。
An.: それでデジタルは、音響機器に向いているんですね!
Dr.: 補聴器の場合には、この単純な信号をうまく加工することも、たやすいので。
An.: 判りました、先生。老化した耳で聞き取りの悪い「子音」部分、つまり「サシスセソ」の音域の信号を強調して再生、そして聞き易くすることも、不可能じゃないんですね。
Dr.: しかも補聴器のダイヤルを調節することで、そのお年寄りの聴力にうまく合わせた再生音を、その方の耳だけに届けることも夢じゃないんです。
An.: 先生、それってスゴイことですよね。
Dr.: 現在の補聴器が、そうしたすばらしい性能を持っていることを前提に、でもその前にその方の耳そのものを耳鼻科医が良くチェックしておかねばならない。江澤さん、それを忘れてはなりません。
An.: 三好先生。先生のおっしゃっていること、先日以来のテーマとなっている滲出性中耳炎を考えると、良く判るような気がします。
 補聴器は、例えばお年寄りでは年齢的な聞こえの変化に加え、滲出性中耳炎など治療で良くなる病気も併せ持っていることが、とっても多いから。
 耳の中を観察せずに補聴器を選択しても、ベストチョイスではあり得ない。つまりそういうこと、なんですよね?
Dr.: 仙台弁では、そういうすれ違いのことを「アッペトッペ」と表現します(笑)。
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An.: 先生。耳鼻科医抜きの補聴器は、つまりアッペトッペなんですね(笑)。
Dr.: 老眼でメガネを購入する場合にも、眼そのものの病気が存在しないかどうか、確認は必要です。
 お年寄りの耳の聞こえも、まず耳鼻科医で耳そのものの病気を検査しておかなければ、どんなに良いデジタル補聴器も、まるで役に立ちません。
An.: 先生、本日もありがとうございました。

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