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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

『宮城保険医新聞』2013 夏季特集号に、エッセイが掲載されました。~「それでも回っている」~三好 彰(三好耳鼻咽喉科クリニック)

 それでも地球は回っている。
 そうつぶやいたのは、獄中のガリレオ・ガリレイだったろうか。
 彼は、地動説を否定する陰惨な宗教裁判によって異端視され、生涯自宅へ戻ることはなかった。

BPPVの治療光景
BPPVの治療光景

 ガリレオ・ガリレイではないが、「それでも回っている」、そう訴えて医療機関を受診する患者が今、激増している。
 最近ようやくその実態が知られるようになった、BPPVつまり良性発作性頭位めまい症の患者たちである。

 内耳の三半規管の中を浮遊する耳石、つまり剥がれたカルシウム片の刺激により、すさまじいめまいの発生するこの病気は、しかしまだ治療法が一般に知られてはいない。


 このため救急車で医療機関に搬入され、有効な治療を受けないまま、何週間も自宅へ帰れない患者も少なくない。

 運が悪いと、医師の検査で何ら異常なしと診断され、何年間も放ったらかしにされるケースだって、ゼロではない。
 きっと彼らは叫びたいだろう。「それでも、回っている」と。

 一見難解なこのBPPV。しかし診断と治療は、きわめて簡単である。

不運な現代のガリレオ・ガリレイ
不運な現代のガリレオ・ガリレイ

 目の動きすなわち眼振を特殊なカメラで記録し、いずれの半規管に耳石が存在するのか診断。その眼振を観察しながら患者の体を捻り、耳石を半規管の外へ出てしまうよう操作する。たったそれだけで、何年間も悩まされたしつこいめまい発作が治癒してしまう。

 エプリー法と名付けられたこの操作法、学会により「めまい専門医」の資格を与えられた医師なら、誰でも目の前ですぐ行なえる。

 不運な現代のガリレオ・ガリレイたち。
 彼らを、一刻も早く救ってやるために、BPPVという疾患とエプリー法そしてめまい専門医の存在が、本紙をお読みの皆様に知れ渡ることを祈っている。