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fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(11)

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(7)目次

153話 発音・発声障害の矯正法

An.:  三好先生、耳の日の話題から、電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルについてのお話が、進んでいます。
 お話でベルは、もともと英語の発声と発話を教える言語療法士だったこと、その発話法にはベルのおじいさんがもともと携わっており、ベルのお父さんも発音の矯正を仕事にしていたこと。などなど、教えて頂きました。加えて、ベルのお母さんの
名前がイライザで、バーナード・ショーがこの名前の主人公の活躍する下町英語矯正物語を、有名なミュージカル「マイ・フェア・レディ」の脚本にした。そんなエピソードも、伺いました。
 バーナード・ショーは、ベル一家の知り合いだったんですってね?
Dr.:  江澤さん。その「マイ・フェア・レディ」のエピソードが重要なのは、現実のベルのお母さんも英語が不自由だったという、真実があるからなんです。
An.:えっ、ベルのお母さんのイライザは、本当にロンドンの下町娘だったんでしょうか?
Dr.:  これは私の副業(笑)の、耳鼻咽喉科に関するお話なんですけれどもベルのお母さんのイライザは、耳が不自由だった。つまり難聴者だったんです。
An.: それじゃ、アレクサンダー・ グラハム・ベルの身内には、耳の不自由な人がいつもいたんですね。難聴者のことを、親身に考えるような環境が、身の回り に整っていた?
Dr.:  実はベルの奥さんも、難聴だったんです。それについては、 あとでまた触れますが。耳の不自由な人も、ロンドンの下町娘 じゃありませんが、話し言葉が正確ではなくなります。
An.: えっ、どうしてですか、先生。
Dr.:  赤ん坊だった人間が、言葉を覚えてしゃべるようになるためには、他の人がしゃべっているのを耳で聞き、コミュニケーションの手段として使い始める。
そんな手順が必要なんです。
 言葉の正確な発音法だって、耳から入った会話を習得するところから、スタートするんですもの。
An.:「マイ・フェア・レディ」のイライザが、下町言葉でしゃべるのも父親の影響でしょうから・・・・・・。
Dr.:そう!   ホラ、「運が良けりゃ、運が良けりゃ」って、歌で有名なイライザの父親・アル
フレッドのせいですよ(笑)!
An.:イライザは、寝物語に下町言葉を聞かされて育ったんでしょうよ、ね?
Dr.: それと関連するんですけど、前にお話ししましたように、耳が不自由な場合、言葉が均等に聞き取れないのではなく、難聴の耳の周波数特性に応じて歪ん
で聞こえます。
 ですから、生れ付き聞こえに難点がある子どもの場合、発音も耳の周波数特性を反映、歪んでくることがあるんです。
An.: 五感のうち聴覚を担当する耳に、入ってくる音つまり情報が偏っていると、インプットに異常があることになりますから、アウトプットに相当する発声もしくは発音も、不正確な偏ったものになるのは当然ですよね。
Dr.:  私たちが子どもの頃から、地域特有のなまり言葉を聞いて育つと、私たちの発音にもなまりが感じられるようになります。
 そして、私たちの耳がもしも不自由だったならば、私たちの発音も耳に入った歪んだ音そのままの発音を、そのまま口に出すことになります。
An.:発音もしくは発声というのは、耳に入った情報の反映なんですねぇ!
Dr.:  その意味では、周辺環境のなまり言葉に染まった発音や発声と、不自由な耳から覚えた偏った発音もしくは発声。この2種の成り立ちには共通点があるんです。
An.: それを矯正してやることは、不可能なんでしょうか?
Dr.:  実はこうした偏った発音や発声は、耳に入ってきた情報がどうであれ、アウトプット器官である口やのどの訓練で、矯正してやることができるんです。
An.: そんなことができるんでしょうか? 江澤は考えたこともありませんでしたけれど。
Dr.:  江澤さん。「マイ・フェア・レディ」の中で、ヒギンズ教授が主役のイライザの下町英語を、懸命に修正していたシーンを思い出してください。
An.:  あぁ、あの有名なシーンですね?
 三好先生ご推薦の、バーナード・ショーの原作「ピグマリオン」。これが「マイ・フェア・レディ」の原作なんですよね?
 そこにはこう、書いてあります。
  ”ヒギンズ
じゃあ言ってみろ、「ア・カップ・オブ・ティー」。
  イライザ
ヤァ・カッパラッテー。
  ヒギンズ
舌を前に突き出すんだ、下の歯に押しつけるように。
ほら、カップ。
  イライザ
クゥ、クゥ、クゥ、ーー
できねぇ。クゥ、クゥアップ。
  ヒギンズ
よくできました。”
Dr.:  これこそが、グラハム・ベルのおじいさんが売り物にしていた、発音・発声障害の矯正法の現場だったんです。
 バーナード・ショーはそれを、おもしろ可笑しく戯曲に仕立てたんですよ(笑)。
An.:  江澤の発声訓練も大変でしたけれども。
 ベルのおじいさんの朗読と弁論のクラスも、かなり大変(笑)だったみたいですねぇ!
Dr.:  戯曲に書き込まれたギャグっぽい部分は、たしかにそうなんですけれども。こうした経験からベルのお父さんは、発音や発声を口の形やのどの使い方で分類し、その使い分けで正確な発音と発声を再現する手法を編み出します。
An.:  たしかに・・・・・・。口やのどの形を一定の形態に整えて、息を大きく吐いてやるとまったく同じ音声を再現することは、できます。
Dr.:  その手法を、グラハム・ベルは耳の不自由な子どもたち、難聴児に応用するんです。
 それが聾学校などでの教育法に取り入れられ、ベルは聾教育つまり難聴児教育に熱中するようになります。
 お話は続く、です。
発音・発声障害の矯正法 クイーンズ・イングリッシュと下町英語

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