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fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(12)

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(12)目次

157話 難聴児の言語教育と発話法④

An.:  三好先生お話の流れは、3月3日の耳の日の話題から、電話を発明したことで有名なアレクサンダー・グラハム・ベルの誕生日が、ひな祭りと同じ3月3日であることの話題で盛り上がっています。
Dr.:  グラハム・ベルは、電話を発明しただけでなく、コミュニケーションの基礎となる、会話もしくは人間同士の対話について、一生追求した人でした。
An.: 先生、アレクサンダー・グラハム・ベルは、実はその祖父から教えられた独特の発話法の教師をしていたこと。この発話法は正統なクィーンズ・イングリッシュで、英国の地域の住民たちの地域なまりの強い英語を、そもそもは訓練することに役立っていたけれども、やがて耳から聴覚の情報が入らず、その発音・発声の歪んでいた聴覚障害児・聴覚障害者の、言語教育に応用するようになった、と教えて頂きました。
Dr.:  前者の、英語の発話法矯正のエピソードが、ベルの知り合いであったジョージ・バーナード・ショーの手によって、ロンドンの下町なまりのいなか娘イライザが、社交界デビューを果たす、『ピグマリオン』という戯曲になります。
An.:  その戯曲が、オードリー・ヘップバーン主演のミュージカル映画、『マイ・フェア・レディ』として変身、すっかり有名になってしまいます。
Dr.:  ミュージカルでは、イライザと言語学者のヒギンズとのハッピーエンドに終わるんですけれど、原作はけっしてそうではなかった。
An.: 先生のご説明では、バーナード・ショーはただの皮肉屋ではなくって、その生きていた時代の精神を反映して、しっかりしたバックボーンのもとに、世の中の事象を批判し続けた。そんな思想家としての一面も、原作の『ピグマリオン』から、うかがい知ることができる。
 そういうこと、なんですね?
Dr.:  さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。バーナード・ショーの活躍した時期の英国は、以前に触れたように産業革命直後の社会の貧富差の激しい、非常に不安定な様相を呈していました。
An.:  マルクスとエンゲルスが、『イギリスにおける労働者階級の状態』というタイトルの論文を発表したのが、1845年でした。
 このOAの224回目で、伺いました。
Dr.: バーナード・ショーは、1856年の生まれですが、マルクスがロンドンで「国際労働者協会」、つまりいわゆる第一インターナショナルを設立したのが、1864年です。
An.: それが先生、共産主義なんでしょうか?
Dr.:  1848年、マルクスの出版した『共産党宣言』という書物中に、有名な「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している、共産主義という妖怪が」との言葉が、書いてあります。
An.: その言葉、江澤もどこかで聞いた覚えがあります!
Dr.:  ですからショーは、そういう社会的な激動の英国を生きてきており、彼の書く戯曲にもどこかしらそんな社会的思想の影響が、にじみ出ています。
An.: 具体的には、先生、どんな風に?
Dr.:  江澤さんは、『人形の家』って、ご存じですか?
An.: ええ。子どもの頃、わたしたちの世代には大人気で、バービー人形のセットでお家がありまして・・・・・・。「人形の家」(笑)。
Dr.:  着せ替え人形のシリーズでしたよね!?
 アメリカで、バーバラという娘のために作成されたモデルが、全世界で流行になって。
An.:  先生。アメリカ製がバービー人形で、江澤の大切にしていたのは、リカちゃん人形でした(笑)。
Dr.:  ちょっと待ってください。
 私の言いたいのは、リカちゃんでもバービーでもなくって、ですね。ノルウェーの戯曲作家である、ヘンリク・イプセンの『人形の家』という戯曲です(笑)。
An.:  先生! そう言えば江澤も、その本のこと、学校の授業で習った覚えがあります。
 主人公の名前は、たしかノラ!
 子どもの頃ですから、授業を受けた生徒たちは、一瞬のら猫の名前かと(笑)カン違いしました。
Dr.:  北欧の旧家を描いた、愛と結婚の物語でして・・・・・・。
 1879年に発表されたんですけれども、旧いしきたりにしばられる家族制度を否定して、社会へと船出する女性を描いたこの作品は、当時のヨーロッパに多大な反響を引き起こしたと、言われています。
An.:  そうそう、ノラのお話は明治時代の日本でも、たいへんな反応があったと、江澤は授業で習いました。
Dr.:  バーナード・ショーも実は、こうした流れの中で『ピグマリオン』を書いたものですから・・・・・・。
An.:  先生! それじゃ、戯曲の結末でイライザとヒギンズ教授とのハッピー・エンドはあり得ない!
Dr.:  ショーはイライザに、ヒギンズ教授の特訓の後、英国のノラとなることを期待していたんです。
 教育が乏しければともかく、淑女つまりレディとしての十分な教養を持つようになったイライザは、ノラ同様ヒギンズの家を出ていかなければならなかったんですよ。
An.:  イライザも大変(笑)。
Dr.:  オードリー・ヘップバーンの演ずるイライザは、甘いストーリーのミュージカルにふさわしく、ヒギンズ教授と丸く納まるんですけれども。それは・・・・・・。
An.:  たしかに、ショーの原作の意図とは、まるで異なる結末なんですね!
 先生のお話をお聞きすると、ヘップバーンのロマンス映画も、さまざまの社会背景を反映している、いわば社会の鏡みたいな一面もある。そんな感想を抱きます。
Dr.:  バーナード・ショーは、戯曲を書くだけでなく、当時の文明批評を手懸けていまして。
 中でも、ワーグナーの壮大な楽劇つまりオペラの1種についても、興味深い評論を残しています。
An.:  そこにも当時の時代を読む、キーワードが隠されているんですね。そのお話も楽しみ!
人形の家とノラ? 人形の家とノラ?


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