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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

げんき倶楽部杜人

~シリーズ 学校健診その24~

 耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって30年余り。今回は2013年2月にfmいずみで放送された内容を紹介する。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

~シリーズ 学校健診その25~

An.: 三好先生、前回は高地トレーニングのお話の前に、高山病についてのご説明がありました。そして高山病は、酸素の薄い高地に到着してから数時間後に症状が出ること、先生と一緒にチベットへ行った調査団のメンバーのお一人が、現地の料理のきついにおいに反応して高山病を発症したことについて伺いました。におい、つまり嗅覚は、その刺激で消化管すなわち胃や腸に反応を起こさせるとお聞きしました。
Dr.: 迷走神経といって、内臓を支配している神経とにおいを感じる嗅神経は、奥の方でつながっているんです。だから、例えば空腹時に食べ物のにおいを嗅ぐと、おなかがグーッと鳴ったりするんです。
An.: 江澤もお昼になっておなかが空いているときに、fmいずみの前のレストラン街からいいにおいがすると、おなかが自然に反応してしまうんです。
Dr.: 迷走神経は、消化管だけでなく腹式呼吸を調節する横隔膜という筋肉の動きに関わっています。この横隔膜のけいれん、つまり「しゃっくり」のことですが、その実態はこむら返りのような、横隔膜の不規則な筋肉収縮なんです。迷走神経の他の末端を刺激すると、それが横隔膜に伝わり、しゃっくりが止まります。
An.: そのためにはどうすれば良いのでしょう?
Dr.: 江澤さん、しゃっくりが止まらなくなったらどうしますか?
An.: えーっと…そうそう、冷たい水を一気飲みしたり、とっても酸っぱいお酢を思い切り飲んだりします。
Dr.: 本人に気付かれないように、後ろからそっと近寄って「わっ」と大声を上げる、なんてこともしますね(笑)。
An.:します、します(笑)。
Dr.: 論文で調べてみると、まずは頭痛、それに吐き気や嘔吐(おうと)などの胃腸症状、目まいや立ちくらみといったこの番組ではおなじみの症状、疲労、衰弱や睡眠障害などの全身症状が見られるようです。二日酔いにそっくりの頭痛や、寒け、眠気も伴います。
An.: どうしてそうなるのでしょうね?
Dr.:びっくりすると一瞬、息をのみますから。
An.:そうですよね(笑)。
Dr.: こうした、冷たい水を一気飲みする、お酢を飲む、息をのむといった動作は全て、迷走神経の末端を刺激します。それがきっかけとなり、迷走神経に正しい刺激が再び伝わるようになるので、横隔膜はけいれんしなくなり、しゃっくりが止まるんです。
An.: ちっとも知りませんでした!!
Dr.: それはともかく、迷走神経はそのように胃腸に分布していて、嗅覚の刺激で内臓の症状を起こすことがあるんです。
An.: 江澤のお昼前の空腹感の増強は、嗅神経と迷走神経のせいだったんですね(笑)。

 

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耳掃除をすると出る咳の謎

Dr.: ついでにお話ししますと、この迷走神経は他にもいくつか面白いエピソードに関わっています。
An.: 具体的には、どのような?
Dr.: これは個人差がありますが、耳掃除をすると咳の出る人がいます。
An.: それはなぜでしょうか?
Dr.: 江澤さん、気管や気管支に異物が入り込んだりすると咳が出ますよね?
An.: えぇ。間違って何かを吸い込んでしまったときには、すごく咳が出ます。
Dr.: あれは、気管や気管支の中に入った異物を排出しようと、横隔膜が急激に収縮して咳が出るんです。
An.: 鼻粘膜では、花粉症のときにくしゃみが出ます。あれは花粉が異物、つまり通常はそこに入ってこない成分だからですよね。
Dr.: 気管や気管支でそのような咳が出るのも同じ理屈で、気管および気管支に分布している迷走神経の末端を異物が刺激して、異物排出機構が働き、咳が出るんです。
An.: 人体の合理的な反応ですね。
Dr.: それを医学用語で「ヘーリング・ブロイエル反射」と呼びます。
An.: 江澤は横文字が苦手です(笑)。
Dr.: 実は耳の穴にも迷走神経の末端が分布していることがあって、耳掃除をすると…。
An.: 迷走神経の末端を刺激する?
Dr.: そこでヘーリング・ブロイエル反射が起こるんです。
An.: 耳掃除をしただけなのに、人体は気管や気管支に異物が入り込んだと錯覚するんですね!
Dr.: だから変な空咳が出るんですよ(笑)。
An.: 人体の合理的反応が、ちょっとだけ勘違いをするんですね(笑)。
Dr.:
 話はそれますが、江澤さんは太陽や何かまぶしいものを見たときに、くしゃみが出ることはありませんか?
An.: あります。でも先生、あれも何か人体の仕組みと関連するのでしょうか?
Dr.:  くしゃみは、花粉症の場合もそうですが、鼻粘膜の三叉(さんさ)神経の末端が刺激されて発生します。一方、目の虹彩にはまぶしいものを見ると縮瞳、つまり黒目が小さくなる反応が備わっています。
An.: カメラのレンズを絞るような理屈ですね。
Dr.:  その縮瞳する神経と三叉神経は一部分でつながっているんです。ですから、まぶしいものを見ると三叉神経の末端が刺激されて…。
An.: 花粉と同じ反応が起こり、くしゃみが出るんですね。先生、本日のお話も面白かったです! ありがとうございました。
迷走神経と腹時計 迷走神経と腹時計

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