3443通信 オンライン  
みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(18)

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

fmいずみ ラジオ3443通信 耳の日(18)目次

163 難聴児の言語教育と発話法⑩

An.:  三好先生、前回はヘレン・ケラーが、盲聾唖という三重苦を担いながらも、人間に備わっている他の五感を活用して、世界を拡げていったとのお話を伺いました。
 その一方で先生からは、五感の中でも聴覚や視覚が思考に関わっていて、それ故に世界中のあらゆるものに「名前」がつけられていること。そして、私たちはその名前を自由に駆使して、会話や議論をしていること。そういう事実についても、教えて頂きました。
Dr.:  目の前に存在する具体的な物質だけじゃなくって、抽象的な概念もつまり「考え」となるためには、まずものにはすべて「名前」がついていることを、理解せねばなりません。
An.: 「言葉」という、概念を具体化する手段を活用することができれば、それは可能なんでしょうけれども・・・・・・。ヘレンの場合、三重苦のためにそれが難しかったわけですね?
Dr.:  江澤さんは、もうすでにヘレン・ケラーの一生について、勉強しておられるでしょうから(笑)。
 ヘレンが「言葉」に目覚めた、有名なエピソードをご存じですよね。
An.:  江澤は、映画になったヘレン・ケラーの伝記の印象が強いんですけど・・・・・・。
 確か、サリバン先生が冷たい井戸水をヘレンの手に注いだとき、ヘレンがその水の冷たさや触覚を感じた瞬間に、サリバン先生がヘレンの手のひらに指文字を書いた・・・・・・んでしたよね、三好先生。
Dr.:  サリバン先生は、そのときなんと書きましたっけ?
An.:  思い出しました!
 たしか、サリバン先生はヘレンの手のひらに "w-a-t-e-r" 、つまり水と書きました。
Dr.:  その一瞬のことを、ヘレンは自伝にこう書いています。
“私はじっと立ちつくし、その指の動きに全神経を傾けていた。すると突然、まるで忘れていたことをぼんやりと思い出したかのような感覚に襲われた─感激に打ち震えながら、頭の中が徐々にはっきりしていく。ことばの神秘の扉が開かれたのである。この時はじめて、 "w-a-t-e-r"が私の手の上に流れ落ちる、このすてきな冷たいもののことだとわかったのだ。この「生きていることば」のおかげで、私の魂は目覚め、光と希望と喜びを手にし、とうとう牢獄から解放されたのだ!”
An.: 劇的な瞬間ですね。
Dr.: ヘレンはこう、続けます。
“井戸を離れた私は、学びたくてたまらなかった。すべてのものには名前があった。そして名をひとつ知るたびに、あらたな考えがうかんでくる。家へ戻る途中、手でふれたものすべてが、いのちをもって震えているように思えた。今までとは違う、新鮮な目でものを見るようになったからだ。”
An.: 三好先生がさきほど触れておられた、すべてのものには名前がある、という事実にヘレンは目覚めたんですね?
Dr.:  ヘレンはその直前、自分の意志が相手に通じないことにいらだち、大切にしていた人形を壊してしまったんですけれど。
 それについてもヘレンは、こう書きます。“家の中へはいるとすぐに思い出したのは、壊した人形のことだった。手探りで暖炉のところまでたどり着き、破片を広い上げる。もとに戻そうとしたが、もうもとには戻らない。目は涙でいっぱいになった。何とひどいことをしたのかがわかったのだ。この時、私は生まれてはじめて後悔と悲しみを覚えたのだった。”
An.: ヘレンはそれまでは、具体的な事象と感情とを、結びつけることができなかったんですよね?
Dr.:  ものには名前があり、その名前によって思考の対象になる。
 私がヘレン・ケラーの話題で触れてきた、それがヘレンにも実感として判ったんでしょうね。
An.: ヘレンはその盲聾唖の三重苦を、どうやって克服したんでしょうか?
Dr.:  そういった、外へ表現できない、人間の中に潜んでいる状態の言葉を、内言語つまり内側に存在する言葉と医学的には表現するんですけど。
An.: 他人に対して表現された言葉は、それに対して?
Dr.:  そうです。「外言語」です。
 そして人間は言葉を他人に伝えるために、どんなことをするのでしょう。
 江澤さんのお仕事が、それに相当しますけれども。
An.: 先生、江澤のお仕事は伝えるべき内容を言葉にして、お話しすることです。
Dr.:  人間のコミュニケーションは、耳から言語を入力し、それを頭脳に伝えて考えます。それがインプットになります。
 頭脳で考えた内容を、アウトプットすなわち出力するのは、発声であってつまりそれが江澤さんのお仕事内容です。
An.:  つまり先生、人間のコミュニケーションは、耳からの入力とのどからの発声で構成されているわけなんですね!
Dr.:  そんなわけで、ヘレンも発声の訓練を受けることになります。
 入力と出力、出力と入力、その繰り返しが人間同士のコミュニケーションになっていますから、ね。
An.:  先生、お話を伺っていて、それはどこかで聞いたことがあるような。そんな気がしました。
Dr.:  遠距離での人間同士のコミュニケーションを可能にしたのが、ベルの発明した電話回線だったんですよ!
An.:  そうでした! アレクサンダー・グラハム・ベルの、最大の業績は電話でしたよね!
Dr.:  ですからベルの一生は、もちろん他にもたくさんの業績はあるんですけれども。何と言っても、世界中でコミュニケーションがとれるようにしたこと、なんです。
An.:  三好先生、ここにヘレン・ケラーの自伝がありますけれど。
その冒頭に、こう書いてあります。
“本書をベル博士に捧げる。博士は聴覚障害者の教育に尽くされ、電話の発明により、大西洋からロッキー山脈まで声が届くことを可能になされた方である”
Dr.:  ベルの偉大さと、ヘレン・ケラーの心からの感謝の念がにじみ出た謝辞ですよね。
 本日も、ありがとうございました。
WーAーTーEーR! WーAーTーEーR!

#

前の話 次の話