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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

げんき倶楽部杜人

~シリーズ 学校健診その26~

 耳・鼻・のどに関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって30年余り。今回は2013年2月にfmいずみで放送された内容を紹介する。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

~シリーズ 学校健診その26~

An.: 三好先生、前回は、におい、つまり嗅覚がその刺激で消化管、すなわち胃や腸に反応を起こさせること。それは、迷走神経という内臓神経と嗅神経との関連で発生する現象であること。それから、この迷走神経がしゃっくりや耳掃除のときの空咳に関わっていること。などなど、興味深いお話を伺いました。しゃっくりを止めるのに、後ろからそっと近寄って「わっ」と大声を上げることは知っていましたが、まさかそれが迷走神経の働きだなんて…。
Dr.: その迷走神経の働きのせいで、高山病になったチベット調査グループのメンバーが、標高3640mの高地で昼食を取ろうとして倒れてしまう。お話はそこから発展したように覚えています。
An.: 高山病って怖そう!
Dr.: 高山病になると、吐き気や嘔吐(おうと)、頭痛、呼吸困難といった症状が現れ、とても苦しい思いをします。
An.: 慢性の酸素欠乏状態が、その背景にあるんでしたよね?
Dr.: 高地では気圧が低いものですから、空気中の酸素濃度もそれに比例して低下します。加えて気温も低いことが多く、人体の血管が縮こまりがちになります。
An.: 酸素を体の隅々まで運ぶ赤血球が、十分に体内を回らなくなりますね。酸欠が、より一層ひどくなるのでは?
Dr.: それに対して人間の体は呼吸数が増えたり、脈が速くなったり、酸素をより多く運ぶよう努力します。
An.: 人間の体は、そういう高度に慣れるものでしょうか?
Dr.: もともと現地の人々は、そういった環境に適応して普通に生活していますから(笑)。
An.: そうか! 人間はたくましいですねぇ。
Dr.: 高地でもその環境に順応すると、体の中で赤血球を増加させるホルモンが分泌されるようになります。その結果、赤血球が増加し酸素の運搬が容易になるので、酸素が再び体の隅々まで届くようになります。
An.: 赤血球が多いと酸素の供給がスムーズで、空気の薄い高地でも楽なんですね。ということは、赤血球の多い状態で普通の標高の土地、例えばこの仙台市なんかで生活すると、通常の赤血球数の私たちよりもハードな動きが楽にできるのではないでしょうか?
Dr.: 江澤さんは「はだしのアベベ」といわれたマラソン選手をご存じですか?
An.: 名前だけは聞いたことがあるような…。どんな方でしたっけ?
Dr.: 1960年、ローマオリンピックの男子マラソンで優勝したエチオピアの選手です。エチオピアの首都アディスアベバは標高2400mの高地にあり、アベベ選手は普段から酸素が少なめの環境で生活していました。
An.: ということは、もともと血液中の赤血球が多めだったのでしょうか。
Dr.: ですからローマのような平地では余裕綽々(しゃくしゃく)で、マラソンでも普段のまま、はだしで快走し、たちまち世界の英雄になりました。高地トレーニングについて一般の関心が高まったのは、そんなことがきっかけだったんです。

 

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観光も高地トレーニングに

An.: 三好先生は、そんなアベベのまねをしてチベットへ高地トレーニングに行くんですか?
Dr.: 中国雲南省の昆明市、つまり今回の私たちの調査地が、実は高地トレーニングの本場なんですよ。標高1900mですからね。
An.: 標高1900mでしたら、日本国内にもいくつか候補地になりそうな場所がありそうですね。
Dr.: 高地トレーニングに適している世界の代表的な場所として、次のような地域が挙げられています。米国のコロラド州ボルダー市、同じくニューメキシコ州アルバカーキ市、スイスのサンモリッツ地域、そして話題の昆明市です。日本国内では、長野県の菅平高原、同じく峰の原高原、そして岐阜県の飛騨御嶽高原が知られています。
An.: 観光地としても有名な場所ですよね。
Dr.: 厳しいトレーニングを積むためには、気分転換に適した土地が良いのでしょうね。ちなみに私が目撃した高地トレーニングで最もつらそうだったのは、2001年に訪れたチベットのラサ市で、現地の軍隊が目抜き通りのあちこちで繰り返し何度もダッシュさせられていた光景です。
An.: 標高3640mの地でダッシュを繰り返すんですね。すごいですねぇ。
Dr.: 他の高地トレーニング地は全て標高2000m以下ですからね。きっと北京オリンピック向けの特別プログラムだろうと思っていましたけど(笑)。それを見ていた私たち自身、低酸素にあえぎながらの観光で、まさに高地トレーニングの最中だったんですよね。
An.: お互いさま、みたいな…。
Dr.: お話は続きますが、時間切れのようです。次回も楽しみにしていてくださいね。
はだしのアベベ はだしのアベベ

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