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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

fmいずみ ラジオ3443通信 アレルギー調査13

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

fmいずみ ラジオ3443通信 アレルギー調査(12)目次

176 ほら吹き男爵の冒険⑵

An.:  三好先生、前回は世界で初めて発見された花粉症、つまりカモガヤ花粉症のお話から、スギ花粉症で世界に有名な日本では、むしろカモガヤの花粉症は昔はあまりみられなかった。そんな話題を聞かせて頂きました。
Dr.:  カモガヤは牧草ですから、畜産の習慣のなかった江戸時代の日本には、当然少なかったんです。
An.: 江戸時代の日本に、牛や馬がいなかったわけでは、まさかありませんよね?(笑)
Dr.:  江戸時代の牛馬は、農業専用に使用されていましたから、畜産用ではありませんでした。
An.:  江戸時代には仏教の思想も一般的でしたから、肉食が食卓にあがることはまずありませんでした。
Dr.:  そんな中でも、「四つ足」でない、鳥肉は良く食べられていたようで……。
An.:  民話で有名な「鴨取り権べえさん」からも、鴨の猟が庶民レベルで一般的だったことが判ります。
Dr.:  鴨取り権べえさんは、あんまりたくさんの鴨を、眠っている夜のうちにヒモで結びつけてしまったものですから。
An.: 朝日に目が覚めて一斉に飛び上がった、すごい鴨の飛ぶ力に、空中高く舞い上がってしまいました。
Dr.: 権べえさんは、鴨の飛翔する方向をコントロールできなかったものですから(笑)。
An.: お寺の五重の塔のてっぺんにしがみついて、命だけは助かったんでしたよね(笑)。
Dr.:  似たようなお話がドイツにもあることを、江澤さんは酒田市のお母さんから聞かされていた、んでしたよね?
 山形県の酒田市は、当時の日本でも文化レベルのすごく高い街でしたから……。
An.: そのお話は「ミュンヒハウゼン男爵の冒険」。別名を、「ほら吹き男爵」の物語って言うんですけどね。
 江澤は夜になると、母親からお伽話をたくさん聞かせてもらって……。
Dr.:  ぐっすり寝付くんですね(笑)
An.: 「ほら吹き男爵」のストーリーも、江澤の耳の奥には母親のなつかしい声で聞いた物語が、まだ聞こえるような気がします。
Dr.:  江澤さん。ここにその、「ほら吹き男爵の冒険」と訳された岩波文庫本を、1冊持って来ました。
 その、なつかしい声で聞き覚えのあるエピソードを江澤さん、朗読して下さいな。
An.: わぁ、なつかしいっ! ……読みます。
〝ある湖で3~40羽の野ガモに出くわしたことがある。……運悪くワガハイの銃には最後の一発しか残っていなかった。……ワガハイのバッグに一切れ残ったベーコンの脂身を、麻ひもでできた犬の引き綱に結わえつけ、ポイと投げたもんだ。すると一番近くのカモが泳ぎ寄りパクリと呑んだ。結わえてあるのは脂身スベスベの奴ですからして、全然咀嚼消化されずに尻からツルリと出る。すると次のカモがそいつをパクリとやる、するとまたツルリ、というわけでつまりひもに通した真珠のように、カモさんたちは数珠つなぎになってくれたのであります。ワガハイそれを引き寄せ、カモの数珠つなぎのひもをば、肩から胴に輪に巻くこと6めぐり、ワガハイかくして家路についたのでありました。〟
Dr.:  手法は違いますが、ここまではまるで「鴨取り権べえさん」そっくりです(笑)。
 ほら吹き男爵は、権べえさんみたいな結末に終わるんでしょうか?
An.: 続きを読みます……。
〝鴨どもは皆まだ生きておったのでありますが、しょっぱなのショックから回復すると、羽を猛烈にバタバタやってワガハイもろとも空に舞い上がり始めたのであります。たいがいの御仁なら一大ピンチでありましたろう。しかしながらワガハイ、狩猟服の裾を舵代わりにし、ワガ住まいせる方向に飛行進路を按配したんであります。〟
Dr.:  「鴨取り権べえさん」とは、大分様子が違うみたいですね(笑)?
An.:  農耕民族と狩猟民族との、文化的相違(笑)なんでしょうか、先生。
 エンディングも、一味違うみたいです。
〝かくてワガ屋敷の真上に達し、今度は無事空から降りる算段をせにゃならん、となったところで、ワガハイはカモの首を一羽また一羽としめていき、かくして静かにゆっくりと、どんぴしゃワガ屋敷の煙突を通り抜け、厨房のかまどに軟着陸したのであります。幸いかまどには火はまだついていなかったわけでありますが、ワガ台所番はよほどびっくり仰天したようであります。〟
 先生、やっぱり「権べえさん」とは、ずいぶん違いますねえ(笑)。
Dr.:  おもしろいのは、「権べえさん」があくまで昔話の一種であって、言い伝えであるのに対して、「ミュンヒハウゼン男爵」は実在の人物が存在したってことです。
An.:  えっ、実話なんですか、これは(笑)?
Dr.:  1720年5月11日に生まれ、1797年2月22日に亡くなった、ヒエロニュムス・カール・フリードリッヒ・フォン・ミュンヒハウゼン男爵という、ドイツの貴族がいたんです。
An.:  その方が「ほら吹き男爵」?
Dr.:  この人物は軍務を終えて、30歳で引退生活に入りますが、狩猟と暖炉の前でのおもしろ話を亡くなるまで続けた人だったんです。その空想談をまとめた本が元になって、劇の脚本になったり映画のテーマになったりして、今でも有名なんです。
An.:  じゃあ、元になる本も存在するんですね?
Dr.:  ところがその原本の題名が長くって。
 「ミュンヒハウゼン男爵の奇想天外な水路陸路の旅と遠征、愉快な冒険」という名前なんですけど、ね(笑)。
An.:  「ほら吹き男爵の冒険」で、江澤には十分理解できます(笑)。
Dr.:  そんな古典的なお話を、江澤さんに聞かせて下さったお母さんは、やっぱりすごい教養のある方でして。江澤さんの生まれ育った酒田市の雰囲気と、無関係ではなさそうです。
An.:  酒田市って、そんな街だったんですね? 次回ぜひそのお話を聞かせてください。
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