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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

fmいずみラジオ3443通信咽頭異物2

An.:…江澤アナウンサー、Dr.:…三好院長]

fmいずみラジオ3443通信咽頭異物(2)目次

180 魚の骨と耳鼻科

An.:  三好先生、前回は美食家の天敵である、咽頭異物。ひらたく言えば、魚の骨をノドに引っ掛けてしまわないように、とのお話を実例を交えてご教示頂きました。
 三好先生が先日、苦労して患者さんのノドからつまみ出したのは、3㎝もあるサバのホネだったんでしたっけ?
Dr.:  どうやったら、そんなに大きなホネを気付かずに飲み込んでしまえるのか、なんだか不思議な気さえする。大変なサバのホネが、舌根部つまり舌の付け根に刺さっていまして・・・・・・。表面に顔を出しているのは、ホンの1㎝くらいなんですけれど。
An.:  三好先生が苦心して引き出すと、なんと3㎝もある大きなホネだったんですね(笑)?
Dr.:  のどの反射があるものですから、患者さんが苦しがってゲーゲーやっているのを、30分もかかって除去するのは、・・・・・・ホントにくたびれました(笑)。
An.:  魚のホネを間違って飲み込んだ際には、ご飯をまるごと飲み込むと良い。そんなお話を聞いた憶えもありますが。
Dr.:  表面に顔を出している部分よりも、粘膜に刺さり込んで見えない部分の方が長い、そういうホネだってありますから・・・・・・。
An.:  まるごとご飯がいつも有効だとは・・・・・・?
Dr.:  却って、ホネをノドの粘膜深く押し込んでしまう可能性だって・・・・・・。
An.:  それを考えると、たかが魚のホネと言えども、決して疎かにしてはならない。
Dr.:  そんな気はします。
An.:  魚のホネ以外では、どんなものがノドに引っ掛かり易いんでしょうか?
Dr.:  最近、仙台市内ではあまり多く見なくなりましたが、今でも稲刈シーズンの前後にはイナゴの佃煮を引っ掛けて、当院を受診する農家の方がおられます。
An.:  イナゴですと、足が引っ掛かり易いんでしょうね?
Dr.:  足をむしってから、佃煮にすると良いんでしょうけれども。
 ノドを覗くとどちらかの扁桃腺の陰に、イナゴの足が見えて、ぎょっとすることがあります。
An.:  ノドの異物は、扁桃腺に引っ掛かり易いんでしょうか?
Dr.:  イナゴの足は、左右どちらかの扁桃腺に引っ掛かり易いんですけれども。
 魚のホネは、扁桃腺の陰か舌根部に存在する傾向が強いんです。
An.:  それ以外の異物も、いろいろあるんでしょうか?
Dr.:  どんなに苦労するとは言っても、咽頭つまり口腔内にある異物は、そんなに命に関わるわけじゃあありませんが。
An.:  えっ、先生。命に関わるような異物も、現実にはあるんですね?
Dr.:  咽頭からさらに奥に入ってしまい、気管や気管支あるいは食道に入ると、重篤となり摘出も困難になる異物が多くなります。
An.:  それは先生、例えばどんな?
Dr.:  イナゴもそんな1例ですが、食習慣が異なると、思いもよらぬ異物の見られることがあります。
 私が教授を勤めている南京医科大学の耳鼻咽喉科では、当直医師が毎晩3~4症例の食道異物の緊急手術を担当します。
 その異物とは、江澤さん、何がそんなに数多く急患として来院するのか、その元となる美食は何なのか想像がつきますか?
An.:  三好先生から江澤がお聞きした限りでは、中国の代表的な美食は「北京ダック」ですけれど。まさかそれと何か関係があるとでも・・・・・・?
Dr.:  さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。ダック料理であることは間違いなく、その意味では百点満点です(笑)!
An.:  まさか先生、北京ダックがノドに引っ掛かるわけじゃあありませんよねぇ?
Dr.:  江澤さん。ダックはそもそも、中国のどの地方の料理でしょうか?
 湖水や河川の多い南寄りの地域の料理でしょうか、それとも乾燥した河川の少ない北京付近の名物でしょうか。
An.:  やっぱりダックは、水辺に近い湖水の多い地域に多く生息しているような気がします。ってことはつまり、北京ダックはもともと、北京の料理ではなかったってことになります(笑)?
Dr.:  ダック料理は本来、河川の多くダックの生息数の多い南京の名物だったんです。
 モンゴル発祥の元の国を、明の朱元璋が滅ぼします。明は首都を南京に置いたんですけれども、3代目の永楽帝が北京に遷都しました。その際に・・・・・・。
An.:  ダック料理を、南京から北京に持っていったんですね? そしてそれが北京ダックになった。
Dr.:  私の言いたいことを先に言わないでくださいよ、江澤さん(笑)。
An.:  ともあれ、南京ダックは北京ダックの先輩で、南京でもダック料理は名物なんですね!
Dr.:  南京ダックは北京と違って、丸ごとダックを蒸した料理ですので、ダックの皮も肉もホネもすべてが軟らかいんです。
 で、スープをすするようにして、肉やホネまですすって食べるものですから・・・・・・。
An.:  そのときに、誤ってホネを食道の中にまで飲み込んでしまうんですね。
Dr.:  吸い込まれたダックのホネは、細かく裂けた状態で食道の軟らかい壁に、グサッと刺さります。
An.:  痛そうですねぇ! サバのホネの何倍もつらそうですね。
Dr.:  それをほったらかしにすると、食道と肺との間にバイ菌が入ってしまい、そこに膿がたまるものですから。
An.:  南京医科大学の三好先生のお弟子さんたちが、当直のたびにその後始末をさせられるわけなんですね?
Dr.:  美食家にとって異物の問題は、決して疎かにしてはならない。それが人生の教訓です。
南京ダックと格闘する江澤アナ 南京ダックと格闘する江澤アナ

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