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日本安全保障・危機管理学会 第34回現地研修会レポ~米軍横田基地研修~

 2015年10月8日(木)、秋晴れの空の下、院長と青柳が所属する日本安全保障・危機管理学会(以下JSSC)主催の米軍横田基地研修に参加しました。
 以前、同学会が主催する米空母研修(本誌233号)にも参加させて頂いた事もあります。

横田基地とは

 横田基地は、かつて大日本帝国陸軍の航空隊が使用していました。当時の日本軍には空軍というカテゴリーは存在せず、主な航空機は陸軍航空隊・海軍航空隊として運用されていました。
 戦前は多摩飛行場と呼ばれ、後に立川飛行場から実験機の審査部門が移転してきた後、新鋭戦闘機(四式戦「疾風」など)の審査業務を行ってきました。
 戦争末期には、マリアナ方面から飛来するB29爆撃機による本土空襲を防ぐ為の臨時防空隊として活躍しました。
 戦後、その存在を把握していなかった米軍により、再び横田基地と呼ばれるようになり、現在までその名が受け継がれています。
 その後、朝鮮戦争、ベトナム戦争時にも重要な基地として機能しました。
 1970年以降は、空輸を行う際のハブ空港として利用されてきました。

現在の横田基地

 横田基地は、東京都の北側にある福生市を初めとした5市1町に跨っています。基地の広さは約8千平方キロメートル。東京ドーム155個分くらいの広さがあり、基地面積の4分の3は滑走路(緑地含む)が占めています。
 滑走路は幅61メートル、長さ4千メートル級の大型滑走路で、この規模の滑走路は国内では成田と関空にしかありません。

基地の人口は?

 基地人口は日米合わせて約1万1千人で、その内1万人ほどは米軍関係者で占められています。
 横田基地には3つの軍隊が存在しています。1つ目は航空自衛隊、2つ目は米軍、3つ目は国連軍です。
 国連軍は数人の軍人が配置されているのみですが、これは朝鮮戦争が未だ戦争継続状態とみなされている「休戦」状態のため、1954年にアメリカを主体とする国連軍後方司令部の設置以来、現在まで続いています。

研修当日

 天気は快晴。青梅線の牛浜駅から東に10分ほど歩くと、集合場所である横田基地の第5ゲートが見えてきます。
 基地のバスに乗車した一行は、ガイド役であるの安達曹長(作戦システム運用隊)の案内の元、基地内へと進んでいきます。本来はパスポートチェックを行ってから入場しますが、安達曹長の顔パス(?)で、スムースな入場となりました(もちろん事前にパスポート情報を届け出ています)。

第374空輸航空団

 最初の研修場所は、横田基地に駐留する米軍第374空輸航空団の司令部です。
 建物2階のブリーフィングルーム(作戦司令室)に入ると、米軍広報部・渉外担当の高橋さまから部隊の概要を説明して頂きました。
 横田基地には、第374空輸航空団を主体とする部隊が駐屯し、空輸を主な任務として受け持っています。
 この部隊は、地域・機能で分けた米統合軍9個の内、地球上の50%を作戦区域に含む太平洋軍に属しています。部隊の使命は、遠征部隊を世界のあらゆる場所に送る事、また西太平洋の空輸・運輸の中継を維持することです。
 どんな強力な軍隊も、補給が維持されなければ意味をなさなくなってしまいます。
 この部隊が運用する航空機には3種類あり、輸送機C−130「ハーキュリーズ」、要人輸送に使われるC−12「ヒューロン」、ヘリコプターUH−1「ヒューイー」があります。
 その他にも、機体を整備・給油する整備群や、基地の運用を担う使命支援群、1日400人の外来を受け付ける374医療群(入院は平時15床、有事139床)、軍用犬(通称K9)を育成する厩舎などがあります。

空港機能

 空輸を行う性質上、一般の飛行場と同様に人・荷物を受け入れる空港設備も備わっています。
 滑走路に面した貨物センターはその機能の殆どが自動化され、最大で1万8千700トンの貨物を
遠隔操作で処理することができるそうです。また、7万9千人の乗客にも対応することが可能です。
 この空港機能を管轄するのが、
515航空機動運用群と呼ばれる部隊です。

活動実績

 軍事基地としての機能を持つ横田基地ですが、この空輸能力を活かした災害救助活動も大きな活動の一つです。
 直近では、2015年にネパールで発生したマグニチュード8.2の大地震の際、ファースト・リスポンダー(初期対応者)として人的・物資輸送を実施しました。

1586倉庫

(図1)ガイドのエスカー上等空兵 (図1)ガイドのエスカー上等空兵
(図2)大量に保管されている医療用品 (図2)大量に保管されている医療用品

 この施設の案内をして頂いたのがエスカー上等空兵です(図1)ガイドのエスカー上等空兵。
 374医療群が管理するこの倉庫(ウェアハウス)には、各種医療器具や薬品など、様々な物品が保管されています。それらは有事の際に即座に運び出せるようにパッケージングされています(図2)。
 ちなみに、この倉庫内の物資を金額に換算すると約52億円相当になるそうです。宝の部屋?
 それだけの物資があるにも関わらず、1年に1回は消費期限の確認のため荷解きをするそうです・・・・・・。
 この建物の本来の機能は、物資の保管庫以外に外から来た患者への治療活動があります(図3)。
 戦地もしくは被災地で怪我・病気を負った人を、輸送機でこの基地へと一時的(12~72時間)に運び入れ、初期治療を行います。その後、容態が安定した患者はアメリカ本国へと搬送されます。
 私たちが使った入り口の反対側にも大きく開かれた戸口があり、輸送機が駐機できるロータリーがあります。着陸した輸送機はそのまま倉庫の横まで移動し、すぐさま患者を運べるシステムになっています。
 倉庫内には最大で200床のベッドを設置することができ、各ベッドには緊急時用のAEDや心電図などのユニットが付属しています(図4・5)。
 幸いなことに、訓練以外でこの施設が本格稼動したことは今まで一度もないそうです。

(図3)緊急用のベッドです (図3)緊急用のベッドです

(図4)ベッドに付属している心電図計 (図4)ベッドに付属している心電図計

(図5)心臓マッサージ用の機器 (図5)心臓マッサージ用の機器

昼食「Eクラブ」

(図6)食材は全てアメリカから空輸されています (図6)食材は全てアメリカから空輸されています

 基地内ではEクラブと呼ばれる下士官クラブで昼食です。ビュッフェ形式で好きな料理をお皿に盛って頂きます。これら全ての食材はアメリカ本国から空輸されて調理されるので、本場のアメリカ料理を味わうことができます(図6)。

YCC(ヨコタコミュニティセンター)

 コミュニティセンターには各種雑貨や食品類、ハンバーガーやフライドチキン等のファーストフードを販売するフードコートが備わっています。
 アメリカンサイズのファーストフードは、見ているだけでお腹が一杯になります。
 フードコート以外のエリアは基地IDを持っている人以外は立ち入りができず、また物品もアメリカ価格(日本の税金がかかっていない)のため、購入することが出来ませんでした。私たちが買い物をすると脱税になるそうです(笑)。

航空自衛隊とは

 日本に迫る空からの脅威を防ぐ(防空)ために設置された、防衛省の「特別の機関」にあたります。
 各種航空機(戦闘機、偵察機、早期警戒機、政府専用機など)を運用・管理し、有事の際は陸上・海上部隊の安全を確保するための制空権を維持します。
 主に4つの地域に分けた方面隊が編成されています。

  1. 北部方面隊
    北海道、東北の一部(青森、岩手、秋田)。
  2. 中部方面隊
    東北の一部(福島、山形)から関東、中部、近畿、四国の一部(徳島・香川の一部)。
  3. 西部方面隊
    中国、四国、九州地方。
  4. 南西混成団
    沖縄、南西諸島など。

そして、今回見学する航空自衛隊の航空総隊司令部は、中部方面隊エリアにあります。

航空総隊司令部

(図7)空自の主な基地 (図7)空自の主な基地

 航空自衛隊の航空総隊は、有事の際に戦闘機部隊や日本各地のレーダーサイトの情報を統括し、指揮するための実戦部隊です。
 2009年4月、北朝鮮による弾道ミサイル発射実験の際には、日本では初めてとなる統合任務部隊が編成され、航空総隊司令部が指揮を執りました(図7)。

航空自衛隊の装備

 主な装備品は航空機やヘリコプター、迎撃ミサイルなどです。代表的な装備を紹介します。

【戦闘機】

  • F−15(通称イーグル)
    アメリカのマクダネル・ダグラス社製(現在はボーイング社に合併)の第4世代にあたる制空戦闘機で、対戦闘機戦に主眼がおかれたハイパワー&高機動力な機体です。今は第5世代にあたるF−22(通称ラプター)に最新鋭機としての座を明け渡しましたが、開発から40年たった今でも運用されている機体です(図8)。
     日本には約200機が配備され、空自最強の戦闘機として、日本の空を守っています。
  • F−2
    三菱重工がアメリカのロッキード・マーティンのF−16多用途戦闘機をベースに日米で共同開発した機体です。空自の曲技飛行隊ブルーインパルスが所属する松島基地にも配備されています(図9)。
  • B−747(政府専用機)
    アメリカのボーイング社製の747型機を使用した政府専用機は、主に天皇・皇后両陛下や首相・大臣が搭乗し、外国要人の送迎などにも利用されます(図10)。

 原則として2機同時に運用され、片方の機体に不備があった際は、もう片方の機体に乗り換えるようになっています。
 この他にも色々な航空機が使われていますので、航空自衛隊のホームページもご覧下さい。

(図8)空自の主力戦闘機F-15「イーグル」 (図8)空自の主力戦闘機F-15「イーグル」

(図9)アメリカと共同開発したF-2支援戦闘機 (図9)アメリカと共同開発したF-2支援戦闘機

(図10)要人を乗せる政府専用機(米軍で言うエアフォース・ワン) (図10)要人を乗せる政府専用機(米軍で言うエアフォース・ワン)

米軍との情報共有

 2011年には米軍との情報共有・連携強化を目的として、府中基地からこの横田基地に機能を移転してきました。
 昨今の弾道ミサイルなどは非常に高速で飛んでくるため(北朝鮮のノドン型は約8分で日本に着弾)、1秒でも早く情報交換をして対応する必要があります。
 そのため、基地内では自衛隊と米軍の境目という物はなく、機能別にまとまって配置されています(自衛隊司令部の近くには在日米軍司令部など)。

日本を取り巻く現状

 現在、日本を取り巻く国際情勢は活発な動きを見せています。
 特に航空自衛隊では、日本の領空に侵入した国籍不明機に対して、戦闘機を緊急発進(スクランブル)させています。その回数は2014年の1年間で943回にのぼり、これは冷戦時代の944回に迫る対応数となっています。
ソ連崩壊に伴い減少していたスクランブルですが、最近はロシア及び中国機への対応が増えているそうです。

最後に

(図11)参加者と一緒に (図11)参加者と一緒に

 今回の基地見学を通して感じたことは、何気ない日常生活は、見えないところで必死に支え守っている人々がいるからこそ、得られる物だということです。
 努力なしに平和は作れず、常に危険を想定して準備するからこそ、万が一の事態にも対応することができる。これは仕事や災害に対しても言えることだと思います。
 今後もこうした研修を通じて、「平和を維持する人達」に対する理解が得られるよう、お伝えしていきたいと思います(図11)。

おまけ(その他の施設)

 基地内には、普段の生活を送る上で必要な施設も建てられています。

  • 託児所
    両親がそろって基地勤めをする方もいるので、子供を預かる施設も併設されています。
  • スポーツセンター
    テニスコートやバスケコート、プールやジムなどがあり、予約して使用するそうです。
  • 映画館
    週替わりで放映作品が切り替えられます。映画のタイトルは原題で表示されています(例えば、「FROZEN」の日本版が「アナと雪の女王」)。
  • マラソンコース
    基地内をグルッと1周する約10㎞のコース。ガイドの安達曹長いわく「超キツイ」そうです(笑)。