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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

2015年チベットアレルギー調査 旅レポ3 総務課 青柳 健太

毎年恒例、中国アレルギー調査の旅レポートの続きをご紹介いたします。

5日目 9月20日(日)ラサ → 林芝

(図1)曇り空のラサ (図1)曇り空のラサ

 昨日に続き、厚い雲が空一面に広がるラサの朝(図1)。院長・青柳・高橋Ns.・殷Dr.は、ラサ東部にあるインド国境沿いの街・林芝へ向かいます。
 また、2日前にラサで合流した名古屋チームとはここで別行動を取ります。名古屋チームはラサ駅からラサ・シガツェ鉄道に乗って、ラサから250㎞ほど西にあるチベット第2の都市シガツェへ行きます。
 この鉄道は、青海省西寧からラサまでを結ぶ青蔵鉄道の支線として2014年8月に開通しました。沿線に14の駅が建設され、総延長251㎞を約3時間で運行しています。
 将来的にはインドにまで延線される予定です。
 私たちの行程は、林芝までの約380㎞を専用車で移動します。以前は国道しか通じていませんでしたが、ラサ・林芝間の高速道路の建設が進められており(図2・3)、急峻な山脈地帯の手前までは高速道路を使うことが出来ました。それでも移動時間は10時間程度かかり、途中の山岳地帯では標高5000mの地点を通るなど、高山病に罹る恐れもあるルートです。
 青柳は30歳を越えて初めてのチベット(以前来た時は20代)ですので、内心ヒヤヒヤした気持ちでおりました。

(図2)高速道路の建設が進められています (図2)高速道路の建設が進められています

(図3)かなり大掛かりな工事です (図3)かなり大掛かりな工事です

ミラ峠の絶景

林芝までの行程の3分の1まで来たところで、観光名所であるミラ峠(標高5013m)が見えてきました(図4)。山肌にはチベット仏教の祈祷旗である五色のタルチョが風になびき、大勢の観光客が標高7000mを超える連峰を眺めています。
 同行した高橋Ns.は高山病のためバス内で休憩。私と院長のお弟子さんである殷Dr.は、無謀にも峠の先にある山を登りました。
 重い機材を抱えての登山は、ただゆっくりと登っているにも関わらず一瞬にして肺が酸素を求めてあえぎます。
 視線を落とすと、野生のリンドウが植生しており、その美しさにほんのわずかに苦しさが紛れました(図5)。

(図4)タルチョの下で (図4)タルチョの下で

(図5)厳しい環境に美しく映えるリンドウ (図5)厳しい環境に美しく映えるリンドウ

 何とか視界が通る位置まで登頂しました(図6)。写真で見るとふもとまではわずかな距離に見えますが、15分近くは掛かったと思います(うろ覚え)。遥か遠くに、人を拒んで寄せ付けることのない、荒々しい山々の姿が……(図7)。
 下から見たら、この位置が一番高く見えたのですが、先にはまだまだ高い峰が続いており、世界はどこまでも遠く、広く、高いのだと実感出来ました。
 ミラ峠を境にして少しずつ標高が下がっていきます。車窓には深緑の景色が目立つようになり、川も山脈から流れ出る雪解け水によって幅を大きく広げています(図8~10)。
 様相の変わる景色を楽しんでいると、目的地である林芝地区の中心地・八一鎮へ到着しました。北京時間では夜の8時を指していますが、実際にはまだ夜6時頃です(図11)。
 長距離の移動だったため、この日は夕食を摂ってホテルで休息しました。

(図6)立っているのがやっとです (図6)立っているのがやっとです

(図7)まだまだ先は遠い(図7)まだまだ先は遠い

(図8)野草を食むヤク (図8)野草を食むヤク

(図9)昔から使われている吊り橋 (図9)昔から使われている吊り橋

(図10)今では観光地になっています (図10)今では観光地になっています

(図11)八一鎮のホテル (図11)八一鎮のホテル

9月21日(月)林芝にて

 林芝はチベット自治区の南東部にあり、南にはインドとの国境が走る地帯です。木材の生産地でもあり森林の面積は地区全体の40%にのぼります。そのため、貴重な動植物の宝庫であるこの地域には、貴重な植生が数多く確認できるそうです。
 地区の中心である八一鎮は、人民解放軍の建軍記念日、8月1日にちなんで命名されました。

世界柏樹王園林

林芝には、2010年アレルギー調査で訪れた樹齢2600年の柏(ヒノキ)の大木がありますので、まずはそこを訪れます(図12)。
 八一鎮の東8㎞ほどのところにあるこの植物園一帯はヒノキの保護区に指定されており、樹齢1000年を超える古木が数百本植生しています。
 前に訪れた時と比べて園内の整備が行き届いており、麓のお土産屋さんの連なりも新しい建物になっていました(図13)。そして、園の奥に進んだ一行は、更なる驚愕の事実に直面します!

(図12)ヒノキの古木が生える公園 (図12)ヒノキの古木が生える公園

(図13)ふもとのお土産屋に売られているキノコ (図13)ふもとのお土産屋に売られているキノコ

 なんと、ヒノキの巨木の樹齢が大幅に増えていました(図14)。記録を見ると2015年にチベット大学が調査を行い、この巨木の樹齢は3233年に訂正されていました。数年訪れない間に約600年も樹齢が増えた事に、驚きを隠せません。
 樹高は約50m、直径が4.5mほどもある巨木は、10人が手をつないで一周するほどの太さです(図15)。自然の驚異にただただ圧倒された一行は、次の目的地に向かいます(図16・17)。

(図14)樹齢が大幅に増えていました!(私の樹齢ではありません) (図14)樹齢が大幅に増えていました!
(私の樹齢ではありません)

(図15)人と比べると巨大さがわかります (図15)
人と比べると巨大さがわかります

(図16)野鳥に忍び寄る青柳… (図16)野鳥に忍び寄る青柳…

(図17)ついでにリスも… (図17)ついでにリスも…


高峰を望む色季拉山口

八一鎮から北東に伸びる国道318号線は四川省の省都・成都市まで続いています。今回は、途中にある風光明媚な魯朗を訪れます。
 その道すがら、標高4720mの峠に立ち寄りました(図18・19)。天候に恵まれれば、21㎞先にある高峰ナムチャバルワ(標高7782m)が見られるのですが、この季節は雨が多く雲も厚いため、その姿を見ることは叶いませんでした。
 ナムチャバルワとは、チベット語で「蒼天を突き刺す矛」という意味を持っているそうです。その名にふさわしく、切り立った峰が雲を貫き、山頂が青く澄み渡る空に突き立っているとのこと。
 図20は、2010年調査の際に同行した浅野Ns.が撮影したナムチャバルワの写真です。彼女は自他ともに認める晴れ女だそうで、しっかりとその山の姿を写し撮っていました(泣)。

(図18)記念碑と共に (図18)記念碑と共に

(図19)山の神を崇めるためのタルチョ (図19)山の神を崇めるためのタルチョ


(図20)天空に突き立つナムチャバルワ (図20)天空に突き立つナムチャバルワ

もう1つの展望台・魯朗林海

(図21)一面に広がるヒノキ林 (図21)一面に広がるヒノキ林

 先ほどの峠を少し下ったところにある展望台です。眼下にはヒノキの樹海が一面に広がっており、その先にはナムチャバルワの雄姿が見える…はずなのですが、やはり雲は晴れてくれません(図21)。


山間の田園地帯・魯朗

 展望台から国道318号線を20㎞ほど北上すると、山間に田園地帯が広がっていました。村落には旅館もあり、シーズンは宿泊する観光客で賑わうそうです(図22)。村長の家でチベット名物のバター茶とバター飴? を頂きました(図23~25)。

(図22)風光明媚な村落 (図22)風光明媚な村落

(図23)村長の家 (図23)村長の家

(図24)チベット名物バター茶 (図24)チベット名物バター茶

(図25)恐らくバター飴 (図25)恐らくバター飴

 部屋の調度品はチベットではよく見かける彩色の模様が施されており、今の時期には使いませんが薪ストーブも置かれていました(図26・27)。

(図26)チベットらしい室内装飾 (図26)チベットらしい室内装飾

(図27)笑顔に見送られて (図27)笑顔に見送られて

 村落の周囲の景色は、桃源郷と呼ばれる雰囲気を醸し出しています。山のふもとの緩斜面は牧草地帯となっており、ヤクがモシャモシャと牧草を食んでいます(図28)。周囲を散策すると、野草や野花がちらほらと散見されます。植物図鑑があれば良かったですね(図29~31)。
 のどかな田舎町で一息ついた一行は八一鎮への帰途につきます。

(図28)ヤクが放牧されています (図28)ヤクが放牧されています

(図29)緑に赤い実が映えます (図29)緑に赤い実が映えます

(図30)岩肌に生える野花 (図30)岩肌に生える野花

(図31)リンドウ科(ゲンチアナ)の野花 (図31)リンドウ科(ゲンチアナ)の野花

9月22日(火)林芝 → 成都

今日は林芝から四川省の省都である成都へ向かいます。
 林芝の米林空港は3000m級の滑走路を持つ近隣では唯一の民間便が発着する空港です(図32)。飛行場から南の50~100㎞のエリアは、インドとの国境地帯(未策定)であるため、米林空港は軍民両用の空港になっています。
 2006年9月に開業した本空港は、中国国内で最も飛行が難しい飛行場と呼ばれています。その理由は、周囲を4000m級の高山に囲まれているため、発着するためには狭くて湾曲した峡谷沿いに飛行しなければならないからです。またその地形の影響で天候も変わりやすく気流も乱れやすい事も、理由に挙げられています(図33)。
 雨模様でしたが、それほど荒れることなく飛行機は飛び立ちました。
 眼下に広がる雲海の所々に、標高8000mを超える連峰が顔を覗かせています(図34・35)。
 飛行機の高度が低いように思えますが、5000mを超える高山地帯が続いているので、高度1万mを飛ぶ飛行機からは、地上が通常の半分の高さにあるように錯覚されます。

(図32)変わった形の屋根が特徴のターミナルビル (図32)変わった形の屋根が特徴のターミナルビル

(図33)小型の旅客機です (図33)小型の旅客機です

(図34)雲海に突き出る連峰 (図34)雲海に突き出る連峰

(図35)圧倒的な迫力を魅せる山岳地帯 (図35)圧倒的な迫力を魅せる山岳地帯

最後に

 成都市に着いた日は、高地から無事生還した安堵感から、夕食後にすぐホテルへと入り、酸素の薄さを気にすることなくグッスリと眠りにつきました。
 あくる日は、成都双龍空港から日本へ帰国しました。
 久々のチベット訪問でしたが、以前と変わらない空の青さと清浄な空気に、とても安心した部分もありました(高山病にかかる不安もありましたが)。
 日常生活では中々訪れる機会のない地域の空気に触れ、食事を摂り、文化に触れる事は、自身の世界観に驚く程の広がりを感じさせてくれます。
 貴重な機会を与えて頂いた院長始め、関係者各位に心から感謝申しあげます。
 また、次の旅レポでお会いしましょう。