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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

2015年チベットアレルギー調査 旅レポ3 総務課 青柳 健太

 2016年2月8日(月)~2月12日(金)の5日間、第80回聴力測定技術講習会に参加させて頂きました。
 この講習会は日本聴覚医学会主催で毎年行われ、全国から集まった検査技師・看護師・言語聴覚士の総勢116名の参加者が、聴力に関する知識や技術を学びました。
 開催地の東京は暖かく、早くも花粉を感じる陽気でした。

はじめに

私たちは普段何気なく音を聴き、外からの情報を得ています。その重要な役割を担っているのが【耳】です。これから講義で学んできたことを紹介します。

耳の構造と機能

 耳には聴覚に関係する部分と、からだのバランスをとる平衡機能に関係する部分があります。その構造は、大きく3つに分けられます(図1)。

(図1)耳の構造 (図1)耳の構造

① 外耳

聴覚器の最も外側に位置する部分で、耳介と外耳道からなり、音を集めて鼓膜に伝える役割をしています。 

② 中耳

耳の鼓膜から奥のことをいい、中耳腔、耳小骨、耳管からなる部分。
 鼓膜から内耳(三半規管、蝸牛、前庭)へ空気の振動(音)を伝える働きをしています。

○鼓膜

鼓膜は太陽光線では真珠色に見える薄い膜で、厚さ0.1㎜、縦径約9㎜、横径約8.5㎜ほぼ円形をなしています。
 鼓膜の外側は外耳道の皮膚の続き、中層には繊維の束があり、内側は中耳の粘膜で、計三層からなります。鼓膜も皮膚と同じく傷付いても再生することが可能です。

○中耳腔(鼓室)

鼓膜の奥の空洞状になっている部分で、この中に鼓膜に接して耳小骨があります。

○耳小骨

 鼓膜の内側に強固に付着するツチ骨から始まり、次にキヌタ骨、最後にアブミ骨が、それぞれ関節で連結しています。

○耳管

 中耳(鼓室)と上咽頭をつなぐ細い管状の器官です。この管は通常は閉鎖していますが、嚥下やあくびをするときに開き、その際に外界と鼓室との圧を等しくする役割をしています。

③ 内耳

 内耳は側頭骨の中にあり、内耳液(外リンパと内リンパ)で満たされており、蝸牛、前庭、半規管の3つの部分に分けられます。

○蝸牛

カタツムリに似た巻貝状の形態をしており、聴覚を司る感覚器官です(図2)。蝸牛管の内部は、リンパ液で満たされていて、鼓膜そして耳小骨を経た振動は、このリンパを介して蝸牛管内部にある基底膜に伝わり、最終的に蝸牛神経を通じて中枢神経に情報を送る役割をしています。

(図2)音を感じるカタツムリ管 (図2)音を感じるカタツムリ管

○前庭・半規管

 体のバランスを司る器官です。

音とは何か

私たちの環境には色々の音が存在します。音は【波】として空気などの物質の中を伝わり、この波が耳の中の鼓膜を振動、その振動が耳小骨を伝わり、内耳の蝸牛へと到達し、電気信号に変え、脳が音として知覚します。
 これらの機能が正常に働くことによって音を正確に認知し、コミュニケーションをとったり、音楽を楽しむことができます。

(図3)音の大きさを表した表 (図3)音の大きさを表した表

 音の高低を周波数(1秒間に波の周期が何回あるか)と言い、ヘルツ(以下、㎐)という単位で表します(図3)。また、音が伝わるときには、その強弱によって、空気の圧力も変化します。これを音圧といい、デシベル(以下、㏈)という単位で表します。
 聴力検査をするときは、この2つを使って周波数ごとの聴こえのレベルを表します。

耳の疾患(難聴について)

 聴こえの仕組みのどこかに障害があり、聴こえが悪くなった状態です。難聴の種類は大きく3つに分けられます。

○伝音難聴

伝音器(外耳、中耳)の部分に原因がある状態。
 この難聴をきたす疾患には耳垢栓塞、鼓膜穿孔、急性中耳炎、滲出性中耳炎、耳管狭窄症などがあります。

○感音難聴

内耳から聴神経の部分に原因がある状態。内耳で音が上手く処理されなかったり、音の電気信号を脳へ伝える神経が上手く働かないため、音が聴こえてもその内容がはっきりしないということがあります。
 この難聴をきたす疾患には騒音性難聴、メニエール病、突発性難聴、老人性難聴、心因性難聴、腫瘍によるものがあります。

○混合性難聴

伝音器と感音器の両方に原因がある状態。
 これらの難聴の診断とその程度を把握するために聴力検査が必要となります。

聴力検査

聴力検査の中で最も基本的な検査は純音聴力検査で、重要な検査です。
 検査は防音室(図4)で行われ、ヘッドホンをつけた状態でオージオメーターという装置からさまざまな周波数の音を、さまざまな強さで聴いて測定する方法です。

(図4)聞こえを測る検査室 (図4)聞こえを測る検査室

○純音聴力検査

人の耳で聴こえる周波数は20㎐から2万㎐と言われていますが、検査では通常125㎐から8000㎐の中の7種類の周波数を聴いてもらいます。そして、どのくらいの大きさの音から聴こえ始めるかを調べ、聴こえ始めた時点でボタンを押してもらい、その値を記録します。この最小限界の音の強さを【聴覚閾値】といい、音をさらに強くしていくと痛覚など聴覚以外の感覚が生じます。
この音の強さを【最大可聴閾値】といいます。
 人の最大可聴閾値は120~130㏈といわれています。純音聴力検査で測定できるのは最大120㏈までとなっています。純音聴力検査では、次の2種類の聴こえの検査をします。

○気導聴力検査

耳にヘッドホンをつけ、聞こえる方の耳から片方ずつ調べます(図5上)。

(図5)2種類の方法で聞こえを測ります (図5)2種類の方法で聞こえを測ります

○骨導聴力検査

骨導受話器を耳後部にあて、骨を振動させることにより直接内耳に音を伝える検査です(図5下)。
 聴力検査は左右それぞれ別々に検査します。一方の耳(検耳)を検査しているつもりなのに、他方の耳が検査音を聴いて(陰影聴取または交叉聴取といいます)応答すれば、誤った結果となります。そこで、これを防ぐため、検査をしていない方の耳に、検査音が聴こえないように、ノイズ(雑音)を聴かせて検査します。これを【マスキング】といいます。

語音聴力検査

言葉の聴き取りの検査です。
 人と人とが言葉を使ってコミュニケーションをする場合、声は聴こえても、何を言っているのかが理解できないと意味がありません。そうした点からも、言葉がどの程度聴き取れているのかということを調べることは非常に重要です。この検査では、日常会話で使われる語音、「ア」とか「イ」とかいう言葉を、どの程度の大きさだと何%正しく聴こえるかを調べる検査です。補聴器を作る時に大事になってきます。

その他の検査

○ティンパノメトリー

 鼓膜や耳小骨の振動(動き具合)を調べる検査です(図6)。外耳道を耳栓で密閉し、連続的に陰圧から陽圧まで変化させ鼓膜の動きの変化を測定します(図7)。
 中耳炎などで中耳内に水や膿が溜まっていたり、耳管の機能が低下している時など、鼓膜の動きが悪くなります。この他にも、耳小骨が固くなって動きが悪くなった場合や、外傷などで耳小骨が離断した場合などもこの検査でわかります。

(図6)鼓膜の動きをみます (図6)鼓膜の動きをみます

(図7)山が小さければ、鼓膜の動きが悪くなります(図7)山が小さければ、鼓膜の動きが悪くなります

○耳音響放射検査(OAE)

 音を聴かせた時、蝸牛の有毛細胞が放射する電気エネルギーを検知することで、聴こえを測る検査です(当院では未実施)。
 外耳道に耳栓をして音を聴かせ、反応を測ります。この検査は聴こえに関する内耳の機能を調べる検査ですが、乳幼児の他覚的な聴力検査のひとつとしても応用されています。

○耳鳴検査

 耳鳴りとは、実際には音がしていないのに、音が聴こえる状態です。あくまで自覚的な症状で、他人が聴き取ることは不可能です。
 検査は、オージオメーターから出す音の高さ(周波数)と強さ、および種類(純音または雑音)の内、もっとも耳鳴の音と似ている音を調べます。
 原因不明なケースも多くみられるようですが、陰に重大な病気が隠れていないか調べるために必要な検査です。

選別聴力検査

 学校での集団健診、会社勤務者や人間ドックなど集団を対象に行われ、集団の中から聴覚障害の可能性がある人を効率的に選別する検査です。
 検査の方法は左右各耳1000㎐と4000㎐の選別検査で、判定基準は1000㎐で30㏈、4000㎐で40㏈(雇い入れ時30㏈、学校保健の場合は25㏈)となっています。
 これらの他にも検査の種類や学んだことは数々あるのですが、一部を紹介させて頂きました。

慶應義塾大学病院を見学

(図8)慶應義塾大学病院です (図8)慶應義塾大学病院です

 研修3日目はグループ毎に分かれ、私達のグループは、慶応義塾大学病院に見学に行きました(図8)。
 慶應義塾大学は、一万円札に載っている福沢諭吉が開校した蘭学塾を起源としています。カリキュラム制などの近代的教育システムを日本で初めて導入した学校で、授業料の定額制を導入したのもこの学校が始めてだそうです。
 大学付属病院の前身は、1873年に三田で開校した慶應義塾医学所です。1917年に細菌学者で有名な北里柴三郎(P.6のローベルト・コッホの弟子です)を学部長として医学科が開設され、後に医学部として認定されます。
 第二次世界大戦の終戦間際、空襲で病院施設の6割が消失しましたが、懸命な誘導によって200余名の入院患者は全員無事に救出されたそうです。
 近年では、アジア初の医療用ロボットda Vinci(ダ・ヴィンチ)を導入するなど、最先端技術を積極的に活用しています。
 現在では、1日平均にして約3000人、延べ人数で約80万人近い外来患者を診療する総合病院としての機能以外にも、高度医療の研究・開発・評価・研修を行う特定機能病院としての取り組みも行っています。
 午前中は外来の検査を見学させて頂いたり、脳波から聴こえを測定する聴性誘発反応の説明をうけました。午後は、真珠腫性中耳炎の手術を見学させて頂きました。細かい作業で、神経を傷つけないように慎重に行われており、見学している側もとても緊張しましたが、貴重な体験をさせて頂きました。

合同実習

 研修4日目は前日のグループ毎に、純音聴力検査、マスキング、語音聴力検査、ティンパノメトリー、耳小骨筋反射の検査を実習しました。

最終日

(図9)涙の合格証書 (図9)涙の合格証書

 社会保障等についての講義の後、試験を受けて無事に合格証書を頂くことができました(図9)。
 5日間、私が勉強した内容のほとんどが難しい講義でしたので、終了した時は涙が出そうになりました。

まとめ

 講習会を終えて、聴器の解剖、疾患、検査など、基礎知識、技術を学ばせて頂き、改めてその重要性を認識致しました。まだまだ未熟者ですが、今後現場で役立つよう頑張りたいと思います。
 最後に、このような勉強の機会を与えてくださった院長先生はじめ、スタッフの皆様に感謝いたします。