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みみ、はな、のどに関する病名、症状などの用語集

第81回聴力測定技術講習会レポ 看護課 佐藤 直美~

はじめに

 2017年2月6日(月)~10日(金)に、東京五反田にあるTOCビルで開催されました、聴力測定技術講習会に参加いたしましたので、学んだことを一部ご紹介させていただきます。
 東京とはいえ、風はまだ冷たかったですが、仙台から行った身にはやはり暖かく感じました。

1.聴器の解剖・生理

 耳は外・中・内耳の3つの部分から構成されています(図1)“耳”という部位は思ったより奥行きがあります。
 外耳は耳介(耳たぶ)と外耳道からなり、耳介は集音による音圧の増強作用と音源の方向を知る働きをしています。外耳道はわずかに彎曲した管で、その一番奥に鼓膜が張っています。この管は音波を鼓膜に導き、共鳴腔となっています。
 外耳道と中耳の境界に鼓膜があります。鼓膜の内側にはツチ骨が付着し、ツチ骨はキヌタ骨と、キヌタ骨はアブミ骨と連結して、全体として耳小骨連鎖を形成しています(図1)“耳”という部位は思ったより奥行きがあります“耳”という部位は思ったより奥行きがあります。
 中耳は、鼓室・乳突洞・乳突蜂巣からなり、耳管により咽頭と連絡しています。耳管は通常は閉鎖していますが、嚥下やあくびをするときに開き、その際に外界と鼓室との圧の平衡が保たれます。耳管の炎症などにより内腔が閉塞すると、中耳の気体は吸収され鼓膜は内方に陥凹し、きこえが悪くなります。
 中耳には2つの耳小骨筋、鼓膜張筋とアブミ骨筋があり、それぞれの支配神経は、鼓膜張筋が三叉神経、アブミ骨筋が顔面神経となります。
 内耳は側頭骨の中にあり、内耳液(外リンパと内リンパ)で満たされています。内耳には、平衡覚に関係する前庭系と、聴覚を司る蝸牛が存在します。ヒトの蝸牛はほぼ2回転半巻いていて、前庭窓と蝸牛窓を持ち、蝸牛内の内耳液を振動しやすくしています。蝸牛の感覚細胞は有毛細胞で、内・外有毛細胞の2種類があり、頂上には細かい聴毛があります。
 鼓膜が振動すると、その振動がツチ骨、キヌタ骨を経てアブミ骨に伝えられ、蝸牛内の内耳液を振動させます。揺れの刺激で発電する有毛細胞が、その振動を電気的な信号に変え、その電気的信号が蝸牛神経から脳の聴覚中枢に送られて音として認識されます。

(図1)“耳”という部位は思ったより奥行きがあります (図1)“耳”という部位は思ったより奥行きがあります

(図2)鼓膜から奥の構造 (図2)鼓膜から奥の構造

2.音の基礎知識

 音とは何でしょうか? 音は音源となる発音体によって空気の振動を起こす、空気の中を伝わる疎密波と定義することができます。また、この疎密波が耳に達し聴覚機構を介して引き起こされる感覚とも定義されます。
 音には、高さ・大きさ・音色の3要素があり、物理量としての高さは周波数(Hz:ヘルツ)、大きさはデシベル(㏈)で表されます。
 感覚量としての高さにはピッチ、大きさにはラウドネスという尺度が用いられます。
 音色には、澄んだ・濁ったなど心理学的な因子を含む複雑な感覚量が関係します。
 ヒトの聴こえの範囲は、20~20,000Hz・0~120㏈とされています(図3)圧力の単位と音のレベル。

(図3)圧力の単位と音のレベル (図3)圧力の単位と音のレベル

3.聴力検査(図4)鼓膜を通じる気導と、骨を通じる骨導の2つの手段で音を聞きます

 聴力は、オージオメーターという機器を用いて測定することができます。ヘッドバンド(受話器)を外耳道入口部に当てて検査音をきいてもらう気導聴力検査と、受話器を耳後部(乳突部)に装着する骨導聴力検査があります(図5)ヘッドフォンの位置を変えて気導・骨導の検査をします。
 気導音は外耳道から入り、鼓膜・耳小骨を経由して内耳に到達しますが、骨導音は受話器から頭蓋骨に伝えられ、外耳や中耳の構造とは無関係に直接内耳に到達します。したがって、外耳や中耳に病変があり気導聴力が低下していても、内耳から大脳の聴中枢に達する経路(感音機構)が正常に働いている場合には、骨導聴力は低下しません。
 これに対して、感音機構に障害があると、外耳・中耳に病変がなくても気導聴力、骨導聴力がともに低下します。

(図4)鼓膜を通じる気導と、骨を通じる骨導の2つの手段で音を聞きます (図4)鼓膜を通じる気導と、骨を通じる骨導の2つの手段で音を聞きます

(図5)ヘッドフォンの位置を変えて気導・骨導の検査をします (図5)ヘッドフォンの位置を変えて気導・骨導の検査をします

4.難 聴(図6)難聴の原因箇所と種別

 難聴とは、耳から入ってきた音が何らかの原因で聞き取りづらくなる症状です(図7)音の聞こえは生活に多大な影響を与えます。
 外耳より入った音刺激が大脳に到達する経路のうち、どの部位に病変があっても難聴が発現します。障害部位によって、伝音難聴・感音難聴・混合性難聴に分類されます。
 外耳から中耳、前庭窓、蝸牛窓までの間を伝音機構といい、この経路に起こった障害が伝音難聴です。外耳道の狭窄や閉鎖、鼓膜の穿孔、耳小骨の形状の異常やその連鎖の離断または固着、鼓室内貯留液、耳管の障害などで発現します。
 気導聴力が障害される一方で、骨導聴力は原則として正常に保たれるため、気導骨導差(air bone gap: A-B gap)があります。
 内耳から聴神経を経て、大脳の聴中枢に達する経路のいずれかに障害のある場合を感音難聴といいます。気導と骨導は同程度に障害されて気導骨導差はありません。
 内耳性(迷路性)と後迷路性(後蝸牛性)に分けられますが、大部分は内耳性のものであり、種々の内耳の病変のために発症します。
 内耳は蝸牛および前庭半規管が隣接しているため、この両者が同時に障害を受けることも多く、難聴と共にめまいを生じることもあります。騒音性難聴や突発性難聴、老人性難聴、メニエール病などは一般的な感音難聴です。
 伝音機構と感音機構の両方が障害されたた場合が、混合性難聴と呼ばれます。伝音難聴になる疾患のうち、中耳疾患のある場合、中耳内病変が内耳に侵入した場合に発症することが一般的にみられる混合性難聴です。すでにある感音難聴に耳垢が生じた時のように、感音難聴と伝音難聴が別個に生じ混合性難聴になる場合もあります。

(図6)難聴の原因箇所と種別 (図6)難聴の原因箇所と種別

(図7)音の聞こえは生活に多大な影響を与えます (図7)音の聞こえは生活に多大な影響を与えます

5.ティンパノメトリー(図7)音の聞こえは生活に多大な影響を与えます音の聞こえは生活に多大な影響を与えます

 難聴の原因や病変部位を的確に証明するため、あるいは障害の程度を把握するために、簡単なものから複雑な手法まで多くの検査法がありますが、その1つにティンパノメトリーというものがあります。
 小さな端子を耳に入れるだけのこの検査は、まだ聴力検査が難しい幼小児にも有用です。
 ティンパノメトリーは、外耳道内を連続的に陰圧から陽圧まで変化させて、中耳の動きやすさを測定します。これを図示したものがティンパノグラムです。
 中耳腔と外耳道の圧が等しいときに鼓膜は最もよく動き、ティンパノグラムは、真ん中にピークのあるきれいな山型を描きます。それに対し、滲出性中耳炎などで中耳腔に液体が貯留し、鼓膜の動きが制限されていると、ティンパノグラムは、ピークのない平坦なものであったり、ピークの位置が真ん中ではなくずれていたりします。

(図8)空気圧を加えて鼓膜の動きを検査します (図8)空気圧を加えて鼓膜の動きを検査します

6.実 習

 講習会3日目と4日目は実習でした。
 3日目は受講生が互いの聴力検査を行いましたが、防音設備のない中、100余名が集っての検査でしたので、検査結果はよくなく、検査環境を整えることの重要性を再認識しました。
 4日目は、病院での検査の実際の様子を見学させていただきました。
 私の実習先は昭和大学病院で、午前は看護師による聴力検査、午後は医師によるめまい検査などを見学し、大変参考になりました。

さいごに

 最終日には無事に試験をパスし、合格証書をいただくことができました。
 聴覚検査は、機器のスイッチを押せば結果が出てくるというものではなく、検査する者の判断や被検者である患者さんの理解と協力のもとに行われます。
 日頃の検査で、患者さんにわかりやすい説明ができるよう、今回の講習会で学んだことを活かしていきたいと思います。