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2020年7月号(No.305)

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鼓膜の動きをみる検査

近年ことに小さな子どもたちを中心に、耳の鼓膜の内側に水みたいな炎症性の液体の溜まる滲出性中耳炎が増えています。この滲出性中耳炎、放ったらかしにしておくと子どもたちの耳が聞こえなくなり、とても大変です。
 けれども痛みの余りないこの中耳炎を、子どもではどうやって見つけ出せば良いのでしょう。だって子どもではふつう自分から、「耳が遠い」なんて言いませんものね。それに小さな子どもでは、大人みたいな方法で聞こえの検査をする訳にもいきません。
 はてさて、どうしたら良いのでしょうか?
 そんなときのつよ~い味方、それが今回ご紹介するティンパノメトリなのです。
 この検査、難しそうな名前の割に、検査法は簡単です。図1のように耳に小さな端子を入れて、図2の本体のスイッチを押します。するとたちまち、耳の中の鼓膜の状態が分かってしまいます。
 本検査の理屈をすごく単純化しますと、これは鼓膜を押したり引いたりして、鼓膜の動き易さを調べるものです。その場合、図3のように正常で鼓膜の内側に何も存在しない場合、鼓膜は良く動きますので本検査の結果も正常となります。
 それに対し、図4のように滲出性中耳炎で中耳腔に液体が貯留、鼓膜の動きを悪くしているときには、本検査の成績でも異常値が検出されます。
 ですからティンパノメトリでは、子ども本人が何とも言わなくても、滲出性中耳炎の検出が容易にできる訳です。
 その検査結果の読み方ですが、パターンは大きく分けて3つあります。図5がA型と呼ばれる形で、鼓膜がよく動いていることを示しています。真ん中にピークのある、きれいな山型を描いていますよね。
 それに比べB型と称される図6そしてC型の図7は、いずれも鼓膜の動きが悪くいかにも聞こえまで悪そうです。
 これは中耳腔に液体が貯留し、鼓膜可動性が制限されている状態を示しており、つまり滲出性中耳炎の存在することを示唆しています。
 この鼓膜可動性は、滲出性中耳炎の治療を受けると改善することが知られています。ですからこれを目安に、治療効果の確認をすることもできるのです。

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