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2020年6月号(No.304)

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水中で襲い来る耳痛

ここは南国パラオの海。暖かで透明なブルーの世界が、どこまでも広がっています。カラフルな熱帯魚が目の前を通り過ぎ、気分はもう人魚姫です。
 そんな素敵なダイビング。深度を一層深めてさらに神秘的な世界へと進もうとしたその瞬間、突然耳が痛くなります。(図1)。
 「イタタタタタ!」
 ダイバーは余りの耳の痛みに、人魚のつもりもどこへやら。たちまち、耳をおさえてうめきます。
 この、耳の痛みは何でしょう?
 航空性中耳炎のときにも述べましたが、鼓膜内外の気圧に大きな差があって鼓膜が強く圧迫されると、耳はひどく痛みます。これはダイビングの際も同じで、深く潜水し耳に水圧が強くかかると外耳道内の空気がその影響で鼓膜を内側へと圧迫します(図2)。
 パラオの海の耳の痛みはこれが原因で、生じたものなのです。そしてこの痛みは、耳管が開き鼓膜内外の圧が等しくなれば、たちまち消失します(図3)。鼓膜内外の圧差は潜水時と浮上時に発生し、浮上の際にも耳痛があります(図4、5)。しかし痛みの程度は、潜水の時がより強いものです。
 それではこの潜水時の耳痛は、どう予防するのでしょう。
 自分で耳管を開き鼓膜内外の圧を調整するには、3つの方法があります。えん下・あくび・ヴァルサルヴァ法が、それです。ダイビング中は急速に鼓膜内外の圧調整を行う必要があり、図6のヴァルサルヴァ法がよく行なわれます。これをダイビング用語で、「耳抜き」と称しています。
 ダイビングの上級者になると、潜水中にあくびをする要領で耳管を開くこともでき、効率良い圧調整が可能です。しかし初心者ではやはり「耳抜き」が、簡単で最良の圧調整法とされています。

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図1

02

図2、3

03

図4、5

04

図6

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