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2020年4月号

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ネブライザーによる換気法

滲出性中耳炎の治療の基本が換気であること、そのために耳管を通じて空気の入れ替えをすることについては、以前触れました。そしてその目的でカテーテル耳管通気や、ポリツェル球による通気そしてヴァルサルヴァ法の活用されることも、説明しました。
 それに加えて本項は、耳鼻科で一般に使用されているネブライザー(噴霧)を使った耳管換気法のご紹介です(図1)。
 この方法は通常の耳管換気に併用したり、あるいはポリツェル球通気やヴァルサルヴァ法の要領の飲み込めない子どもに応用したり、いくつかの活用法が考えられます。非常に有用な方法だと言えるのです。
 その実際ですが、まず通常の鼻のネブライザーを鼻の入り口にあてがいます。鼻の治療だけが目的ならば、この状態で鼻から息を吸い口から吐いていれば良い訳です。
 この状態では圧をかけられた空気が鼻腔内に充満し、それが後鼻孔から口に流れ出します。この際に鼻腔と口腔との間が封鎖されれば、ヴァルサルヴァ法と同じように空気の圧は耳管に流入します(図2)。
 ヴァルサルヴァ法では口を閉じて息むので、鼻腔内の圧は口腔へ逃れられません。またポリツェル法では、鼻入口部から鼻腔内へゴム球で圧を加え、同時に例えば「ハック」と子ども本人に発音させます。
 この発音の際、軟口蓋(口の天井部分)の粘膜の動きなどのために、鼻腔と口腔は遮断されます。ゴム球によって加圧された鼻腔の空気は、後鼻孔閉鎖によって口へ流れ出ることができません。
 結果的に加圧された空気は、耳管を通じて中耳腔内に流入します。
 ヴァルサルヴァ法やポリツェル球による耳管通気と中耳腔換気は、このような原理でなされているのです。
 ネブライザーを使用する場合には、鼻腔内はすでにネブライザーによって加圧されています。その圧を耳管に誘導するためには鼻腔・口腔間の閉鎖が必要です。
 そしてここではその目的で、水やジュースあるいはカルピスを子どもに飲ませるのです。
 つまり食物を飲み込むときや液体を嚥下する際に、口腔からそれらの内容物が鼻腔内に逆流しないよう、軟口蓋粘膜が後鼻孔を閉鎖します。その液体嚥下時の後鼻孔閉鎖を利用して、鼻腔内に加えられたネブライザーの圧を口腔へ逃がさず、耳管へと導いてやります。
 ですから子どもは最初に、口に水を含みます。そのまま鼻にネブライザーをあてがい、ネブライザーの圧を鼻腔に充満させます。その時点で口に含んだ水を飲み込むと、鼻腔内の加圧された空気は耳管を通じて中耳腔へ流入します。
 結果的に中耳腔換気が自然になされる、という訳です(図3)。
 この方法を一般に嚥下ネブライザーと称しますが、子どもたちのあいだでは「ゴックン・ネブライザー」の方がウケが良いようです。
 ジュースのお代わりOKですし。

図01-03

 

中耳炎については、コミックコーナーの医学コミック6巻「中耳炎世界の冒険」もご覧下さい。

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