3443通信3443 News

2020年1月号(No.299)

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手品? 耳から出る煙草の煙

さぁさよい子のわたしたち、寄っておいで見ておいで! エントツ男の登場だ。
 取りいだしたるこの煙草、口から吸うのは当たり前。鼻から出すのも当たり前。それが逆でも当たり前。これならウチのお父さん、誰にも負けずにできるって? それは当然、当たり前。
 昔その名も専売公社、今ならはやりのJTの、昔これまた敷島で、今じゃ横文字ハイライト。それさえ使えば、誰でもできる。
 それじゃどうだい、この特技。ソビエトならばKGB、国家機密に触れちまう。

 スパイじこみの秘密技。鼻から吸ったこの煙、耳から出して見せてみよう。ほらほらご覧この煙、みごと耳から出て来たよ!
 恐怖のエントツ男、登場す(図1)。そんなキャッチフレーズでも使えそうな、耳から出る煙。そこに潜む秘密は何でしょう。
 前項(3443通信297号)でもご説明しましたが、耳と鼻そしてのどとは裏で耳管を介してつながっています。そして鼓膜内側のスペース(中耳腔)では、耳管の機能が正常ならば同じく耳管を通じて空気の入れ替え(換気)が、自動的になされます。
 この働きこそが、鼓膜内外の気圧を均等に保つ、そして鼓膜の正常な動きを確保する、最大の要因です。
 従って、例えば鼓膜に穴の開いている耳管機能正常な人では、鼻をつまんで息を堪えると図2のようなことになります。空気が耳管を通って中耳腔へ行き、それが鼓膜穿孔部から外へ漏れます。
 この図ではその際の空気の漏れる様子を、ゴム管の一方を耳に他方をビーカー内の水に入れ、水の中に気泡が出て来る現象として、図示しています。
 これが「恐怖のエントツ男」の、実はKGB仕込みの秘技なのです。

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図1  恐怖のエントツ男          図2  鼓膜に穴が開いていると……

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図3  鼓膜の穴を通じて、煙草の煙が耳から抜けます

 

中耳炎については、コミックコーナーの医学コミック6巻「中耳炎世界の冒険」もご覧下さい。

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