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みみ、はな、のどの変なとき

57 過剰な免疫能力

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このように本来ならば⼈体を守べき免疫機能が、逆に⼈体に害を与えているアレルギー反応。それには何か、特別な意味があるのでしょうか。

⼈類は⾃⼰の⽣存と種族の保存のために、多⼤な労⼒を費やしました。⻑い間、この⽬的を果たすのに最⼤の敵は感染症でした。
 ことに⾷物が豊富ではなく⼈類が飢えに直⾯していた時代には、⼈体内の防御⼒つまり免疫機構も⼗分な⼒を発揮することができず、多くの⼈間が感染症で死にました。

それに対し、近年の⽇本で乳児死亡率が激減したのは、衛⽣状況の改善によって感染源となる病原菌が減少し、栄養の改善によって⼈体の免疫能⼒が⾼まったため、と推測されています。

つまり⼈間の体は、防衛能⼒が強くなったと表現できるのです。
 ⽪⾁なことに免疫能⼒は、⼒を増しながらも病原菌の減少によって敵を⾒失い、⼒を持て余しています。そこへ、ダニやスギ花粉など無害な異物の⼈体への侵⼊が⽣じた場合、これらの異物は悪影響を体に与える訳ではないのですが、それに対応する⼈体は少し過剰なまでの防衛能⼒を備えてしまいました。

例えば、われわれ⼈間が物理的危害を加えられそうになったとき、⼿に何も持っていなかったら、襲って来た相⼿をかなり強く突き放しても、相⼿を傷つける⼼配はありません。
 しかしもしもわれわれが、たまたま武器を⼿にしていたとしたら、加害者を無傷のまま押し戻すつもりでいて、実際は加害者に損傷を与えてしまいます。
 これを⼈間の場合には過剰防衛と称し、逮捕されてしまいかねない事態です。

つまり正当な⾃⼰防衛努⼒でも、過剰であれば逮捕されたりして、⾃分⾃⾝に結果的に害を与えてしまうこともあるのです。
 同様に⼈体の免疫反応も、さほど強くない時点では異物に対して過剰に反応することもなく、⼈体そのものに害を与えることもありません。しかし免疫能⼒が⼒を持て余しているならば、⼈体は異物に対して過敏に反応し、あげくは⾃⾝にさえ害を与えることになるでしょう。

アレルギーとは、⾼まった免疫能⼒が⾃分の⾝を守ろうと異物に過剰反応する余り、本来ならば保護されるべき⾃⾝に害を与えている病態と、⽐喩的に理解できます。

 

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