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2021年9月(No.319)

 

医師という隣人たち

院長 三好 彰

 

新型コロナウイルスのワクチンで知名度が広まったファイザー製薬の冊子「医師という隣人たち」に、院長の紹介記事が掲載されています。

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子どもの心をつかんで離さない楽しく、わかりやすくの三好流

2002年サッカーワールドカップの会場となる仙台スタジアムのほど近く、仙台の地下鉄の北の終着駅「泉中央」から、徒歩で5、6分の幹線道路沿いに三好彰先生の耳鼻咽喉科クリニックがある。
 耳鼻科は子どもの患者が多い。診療所はとにかく明るくて広い。ペパーミントグリーンでコーディネイトされた内容がじつにお洒落。待合室には子どもたちを飽きさせないように遊び道具をそろえ、カラフルな風船をいっぱいぶら下げて子どもが自由にもち帰れるようにしている。大小さまざまのスヌーピーの数もすごい。また院内には10台以上のテレビが至るところに設置され、子ども向けアニメがいっせいに放映されている。

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子供を泣かせない、そして退屈させない工夫

ちょうど初診の幼児が診療を受ける番になった。すると三好先生、すっと膝を折り、子どもの目線とあわせた。目があった瞬間、パッと棒付きキャンディを差し出す。びっくりしたところで楽しそうなシールもあげる。渡すときにちょっとくすぐる。幼児は思わず笑い出す。

「一瞬の勝負。ここから先はぼくのペース、ウフフフ」

居合い抜きの達人といった趣の三好先生である。

「医の権威で対処するのではなく、子どもたちにパッとキャンディを出すタイミングに日々緊張している。それとシールには、じつはクリニックの電話番号が書いてあるんです。アハハハ」

診療コーナーだけをカーテンでやわらかく知った開放的な診療室。なごやかな雰囲気は、次に待つ子どもたちにも伝わっていく。器具を耳や鼻に入れられる恐怖感から関心をそらすことがまずポイント。スタッフの対応も明るくて優しい。子どもの心をギュッとつかみ“アメニティクリニック”。それは、子どもを泣かせない、そして退屈させない工夫を徹底したものである。

三好流をつらぬくのは「楽しさ」と「わかりやすさ」である。診療時の会話だけでは伝わり切らないということを大前提として、ほんとうに理解してもらいたいことは文書や漫画で情報提供するスタイルを確立している。

「医学は特別なものではありません。病気は日常生活の反映で、病気のときに医学の問題としてあらわれてくるだけのこと。日常生活のレベルで、かつ患者さんの目線で話をしないと何も伝わらない。薬を与えた処置をして、症状が止まるのは、一時的なもの。根本的なものはなんなのかということを伝えてあげなければ、なんの解決にもならない」

それをわかってもらうには漫画が最高というのが、三好流の真骨頂。先生の監修によって出版された漫画シリーズは「花粉症」「ピアストラブル」「中耳炎」「カラオケポリープ」「いびき」をテーマにこれまでに5冊。漫画には、看護婦さんやほかのスタッフも実名で登場、人柄や仕事ぶりもストーリーにうまくとり込まれている。今後は、「めまい」「ダニアレルギー」などをテーマに出版を予定。そこでは「高気密・高断熱の現代家屋ではどんな生活をしたらいいか?」「日本の文化はどこから来たのか?」という方向にも広げていきたいと意欲的に語る。
 臨床論文も精力的に出す一方で、一般向けの書物も毎年1冊のペースで上梓している。このほかにもQ&A形式やイベント情報もからめて文書は毎日出す。「3443(みよしさん)通信」というホームページも発信している。院内のコンピュータとコピー機は毎日フル稼働だ。そのいずれの情報も患者の目線にあわせ、病気の何を理解し、どう対処すればいいのかが楽しく理解できるように、平明かつ具体的に表現されている。

「簡潔にやさしく病気の解説をしようという試みは、コミックによる医学書に到達しましたが、情報サービスの徹底は、診療理念というよりも、ぼくの個人的な楽しみ。好き以外の何ものでもない」と屈託がない。

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アレルギーの解明をめざして視野は世界に広がる

先生は研究の人でもある。ライフワークとしてアレルギーの研究調査を国内外で続けている。たとえば、スギ花粉症は何年か前までは日本にしかないと思われていたが、89年に先生の研究チームが中国での現地調査とDNA分析によって中国のスギ花粉症を発見した。
 そうした経緯から南京医科大学の「国際鼻アレルギーセンター」の教授に迎えられるとともに、98年12月、南京医科大学と三好耳鼻咽喉科クリニックとの合弁で、南京医科大学国際鼻アレルギーセンターを南京医科大学とクリニック内の双方に創設した。
 センターには鼻アレルギーの遺伝的側面を明らかにする分子アレルギー部門と、鼻アレルギーの原因や発声条件を宿主(人間)・病因・環境の3つの側面から、包括的かつ統計的に調査する疫学部門を設置。国際協力の研究を進める学者や留学生も受け入れている。調査は中国とブラジルで進み、次はアフリカへ、と思いはふくらんでいく。

「鼻アレルギーの研究によって、アレルギー疾患の基礎ともいえるアトピーの病態を明らかにしたい」

その目は、初診の幼児にパッと棒付きキャンディを差し出す目と変わらない。硬軟の垣根のない三好流は、医療そのものに、かけがえのない喜びを見つけた人生の反映に思えてならない。

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