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2021年12月(No.322)

 

訪れた人たち
~伊藤 直紀さま~

図01
2021年8月4日

はじめに

蝉時雨がせわしい8月初旬、私の古くからの知人で、元北海道新聞記者の伊藤 直紀さまご夫妻が北海道から来仙されました。

伊藤さまとの出会いは、今から30年以上前に遡ります。
幕末に私の先祖・三好監物が蝦夷地警備のため白老に元陣屋を築いた歴史的なご縁から、耳鼻科医のいない白老町で学校健診を始めたのがきっかけです。

子どもたちの健康を守る学校健診

実は、私が白老町での健診を実施するにあたり、もう一つ重要な理由があります。
 戦後日本に植樹したスギが樹齢30年を迎えて花粉を一斉に飛散させ、多くの国民がくしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状を訴えるようになりました。
 今でこそ、私たちが訴えて来たスギ花粉症の原因はスギ花粉の飛散によるものだということが通説になっていますが、当時まだスギ花粉症の研究も発展途上にあり、様々な異説や風評が研究者の間で提唱されていました。
 中には大気汚染物質が花粉症を増悪させる、寄生虫の分泌物が花粉症の症状を抑える、というような驚くお話も数多く見受けられたのです。

そこで私は、白老町全ての小・中学生を対象にしたアレルギー調査を行なうことを決めました。
 ある病気の原因を探る時、病院に来た患者さんだけを調べていたのでは全く意味がありません。それは、例えば住人全体の食生活を調べようとした場合、食堂に来る人だけを対象に話を聞いても意味がないのと同じです。調べるのであれば、住人全ての家を訪れてメニューを聞いて初めて、その町の食生活の実態が分かって来るのです。
 このような地域全体を対象としたアレルギー調査は世界で初めてであり、そうした文献は世界のどこにもありませんでした。

1989年に最初の年度の結果が得られ、早々に私は北海道新聞に取材の申し入れを行ないました。
 そして記事を書いて下さったのが伊藤さまでした。そこから伊藤さまとの長い々お付き合いが始まることになったのです。

今回、伊藤さまが来仙されるきっかけは、決して嬉しい理由だけではありませんでした。
 滲出性中耳炎(「中耳炎世界の冒険」)で耳の聞こえが悪化し、札幌の耳鼻科医では全く治療ができなかったのです。
 どうしたら良いかとご相談を受け、それなら当院を受診して頂きたいとお伝えしたところ、その数日後に伊藤さんは機上の人となり、当院で耳の治療を受けることになったのです。

伊藤さまの素早い決断が幸いし、耳の聞こえも復調した伊藤さんは「まるで、耳に詰まったナニカがスポーンと抜けたようだ」と、嬉しそうにお話しされていました。

幕末期、先祖である三好監物の蝦夷地警備から始まった白老町とのご縁。
 その不思議な繋がりが、今こうして生かされたことはとても嬉しく思います。

また、その後、伊藤さまの紹介を受けた北海道新聞苫小牧支社・報道部長の中川氏より、私の先祖で蝦夷地警備に赴いた三好監物についての取材を受け、その取材記事が北海道新聞(8/30)に掲載されました(本誌No.320をご参照下さい)。

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