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2022年1月(No.323)

 

小児の中耳炎シリーズ③
ラジオ3443通信「子どもの滲出性中耳炎」

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2012年6月19日OAされた、耳の日の話題をご紹介いたします。

77 子どもの滲出性中耳炎

An:
 三好先生前回は、中耳炎の一種類である滲出性中耳炎について、少しお話を伺いました。滲出性中耳炎って、耳の鼓膜の内側に炎症による水みたいな液体がたまって、鼓膜の動きが鈍くなるんでしたよね?

Dr:
 えぇ、その結果耳の聞こえが悪くなるものですから。

An:
 それも、子どもとお年寄りに多くって、中々診断がつきにくいこともある、と教えて頂きました。

Dr:
 お年寄りでは、年齢的な聞こえの悪化と混同されがちですし、子どもでは自分から耳の聞こえの悪化を、症状として訴えることはないものですから。学校健診などの機会に、耳のチェックをすることは、子どもの耳の健康に役立ちます。

An:
 先生、今回は学校健診に関連した病気のお話ということで、子どもの滲出性中耳炎についてご説明頂ければ……。

Dr:
 大事なことなので繰り返しますが、子どもの滲出性中耳炎が見つかりにくいのは、急性中耳炎のときの耳の痛みなどに比べ、はっきりした自覚症状に乏しいからです。

An:
 じゃ、親がそばで見ていても、気付きにくいことも。

Dr:
 少なくありません。

An:
 具体的に言うと、滲出性中耳炎って子どもでは、どんな状況になるんでしょうか?

Dr:
 最初に、耳の聞こえがやや鈍くなります。でも本人は子どもですから。聞こえが悪いなんて思ってもいません。なんとなくこの頃ボーッとしていることが多くなったとか、テレビの音量をやたらに上げるようになったとか、最近お母さんのお小言をまるっきり聞かなくなったとか(笑)、本人よりも周りの人が先に気付きます。

An:
 お小言を聞かなくなるんですね(笑)。

Dr:
 中には、わが子がテレビににじり寄っていくようになったのを見て、てっきり子どもの目が悪くなったせいだと信じ込んで、眼科に相談に行ったお母さんもいたくらいです。

An:
 確かに目が悪くっても、そうなりますよねぇ。

Dr:
 ズキズキすることはないんですけれど、チクチクと痛むことはあるようです。

An:
 いずれにしても、子ども本人から自覚症状を訴えることはまず無い、ってことですね。

Dr:
 親御さんとか、お子さんの症状をご説明するときには、こういう表現をしています。「ちょうど、新幹線に乗ってトンネルに入った瞬間の耳の感覚」って言って。

An:
 あ、それ、分かります。なんとなく耳がツーンとして、塞がったような、耳に蓋をされたような。そうそう、高い山に登ったときにも、そんな風になることが。

Dr:
 さすが1を聞いて10を知る江澤さん。そんな感じの耳になります。それとね、江澤さん。こう付け加えると、お母さんにはとっても分かりやすいみたいです。「お母さんのお小言だけは聞こえない、都合の良い耳になってますよっ、て。」(笑)

An:
 センセ! それ、すっごく分かりやすいですよね(笑)? 江澤の耳も時々、都合の悪いことはまったく聞こえなくなるんですけど、ね(笑)。

Dr:
 でもそれは、江澤さんお得意の「耳抜き」をすると、治っちゃいますよね?

An:
 耳抜きって先生、鼻をつまんで思いっきりいきむんでしたよね(図1)。

図01 図1

 

Dr:
 それを横文字で、ヴァルサルヴァ法って呼ぶんですけどね。空気を、耳管を通じて中耳腔つまり鼓膜の内側に送って、内外の気圧を調節する手軽な手法なんです。

An:
 でも、子どもさんでは難しそう……。

Dr:
 それ以外にも、子どもさんの滲出性中耳炎には、さまざまの治療法があって。子どもさんの中耳炎の状態に応じて、工夫をするんです。

An:
 子どもさんの滲出性中耳炎は、アデノイドの大きさとか、成長によって変化する要因が多いですからね。

Dr:
 子どもさんの中耳炎はね、江澤さん。成長して体が大人に近くなると、そんなに頻繁に悪化しなくなります。

An:
 それは、どうしてでしょうか?

Dr:
 子どもさんが急性中耳炎になりやすいのは、子どもの耳管が大人に比べて、太く・短く・横向きに位置していて、のどの炎症のバイ菌が中耳腔に入り込みやすいせいです。ですから、急性中耳炎の軽い炎症が中耳腔つまり鼓膜の内側のスペースに、居着いてしまう。そんな機序で起こる滲出性中耳炎も、子どもの耳管の構造に関連して発症するんです。

An:
 大人の耳管って、構造が違うんですか?

Dr:
 大人では、体全体が縦・横とも大きくなるので、耳管もそれにつれて引っ張られるような感じで、細く・長く・斜めというかきつい角度で位置するようになります。このため、のどの炎症のバイ菌も、子どものときほど簡単に中耳腔までは行かなくなります。ですから子どもさんと異なり、大人は急性中耳炎にも滲出性中耳炎にも、なりづらいんです。

An:
 一言で、子どもさんの体と大人の体って区別しますが、大体年齢的にはいくつ位で別れ目となるものなんでしょうか?

Dr:
 男の子と女の子の区別って、単純に考えれば生まれた瞬間から分かりますけど、これを第一次性徴と言います。それに対して、成長するに伴って男の人らしい体になる、もしくは女の人らしい体つきになるのが、第二次性徴と呼ばれる外見の変化です。それが大体9歳前後ですから、子どもと大人の体の別れ目は、9歳と理解して良いかも知れません。

An:
 9歳なんですね!?

Dr:
 思考つまり考え方も、具体思考から抽象思考へと変化しますし、ましてや中耳炎の病態も大きく変わります。

An:
 三好先生、次回のお話、楽しみです。

院長監修の医学コミック「中耳炎世界の冒険」もご覧下さい。

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