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2022年2月(No.324)

小児の中耳炎シリーズ④
ラジオ3443通信「つ」離れをおこす年齢

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2012年6月26日OAされた、耳の日の話題をご紹介いたします。

 

78 「つ」離れをおこす年齢

An:
三好先生、前回のお話では、中耳炎は9歳を境として、病態が大きく変化するとか。本日は、そのお話の続きですね?

Dr:
江澤さん。中耳炎における、「つ」離れって言葉をご存じですか?

An:
 「つ」離れ、ですか? 何のことでしょう、ね(笑)?

Dr:
 急性中耳炎と滲出性中耳炎に、なりやすい年齢が子どもさんにはありまして、ですね。1歳、これはもちろん0歳も含めてのことですけど。1歳から9歳までは、なりやすい年齢と言われています。

An:
 それからは子どもさんの体が、大人のそれに変化するからなんですね?

Dr:
 さすが、1を聞いて10を知る江澤さん。それでは「つ」離れとは、どんな意味でしょうか?

An:
 分かりました先生。1歳から9歳までは、年齢に「つ」という字がくっつきます。1つ・2つ、という具合に。でも10歳になると、10(ルビ:とお)と呼ぶので「つ」は付かなくなる。つまり、子どもとは言えない年齢になることです!

Dr:
 さすがは江澤さん。
 それでは江澤さん、1歳から10歳までの年齢を呼ぶときに、「つ」という文字はいくつ、ついて来るでしょうか、ね?

An:
 そりゃ先生、決まってますよ。1つ・2つと数えて行って、10(ルビ:とお)じゃ「つ」はくっつきませんから。9つですっ!

Dr:
 それじゃ試しに江澤さん。一緒に、指折り数えてみましょうよ。もしも、江澤さんの指の数が足りないようだったら、こちらから指を貸して上げても良いんですよ(笑)。
 それじゃご一緒に。

An・Dr:
 
ひとぉーつ・ふたつ・みっつ・よっつ・いつつ! むっつ・ななつ・やっつ・ここのつ・とお。

An:
 あらっ、指を10本使っちゃった。ってことは先生、1つから10までの数を数えると「つ」は10あるんですね!?

Dr:
「いつつ」に「つ」が2つ、含まれていたんですよね(笑)。で、「つ」離れをすると、人間は中耳炎になり難くなるんです。

An:
 なんだか、納得したような、なんだかケムに巻かれたような……。江澤は奇妙な気分です。

Dr:
 エヘン! 真面目なお話に戻ります。というわけで、子どもの体は9歳を過ぎると大人のそれに近付きますので、中耳炎に関連する耳管も大人の構造となります。このため、風邪などでのどに炎症が発生しても、そんなに簡単には耳管を通過せず、中耳腔にバイ菌が入り難くなります。その結果、10歳以上の年齢では急性中耳炎にはなりづらくなります。

An:
 急性中耳炎になりにくいってことは、滲出性中耳炎からも縁が遠くなるんでしょうか?

Dr:
 さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。10歳以上では、たしかに滲出性中耳炎の頻度も、減少するんです。

An:
 ってことは、逆に言えばその年齢に達するまでは、滲出性中耳炎の管理が重要なんですね?

Dr:
 先にお話ししました通り、子どもさんでは自分の耳が聞こえないなんて、一度も考えたりしませんし。ほったらかしにされると、学校の成績は当然落ちますし……。

An:
 授業でも、内容が聞き取れなかったら、ついて行けませんもの、ね。

Dr:
 友達同士のコミュニケーションも、スムースじゃなくなりますから、一緒に遊ぶときにもなんとなくワン・テンポずれたりして。

An:
 鬼ごっこじゃ、いつまでたっても鬼のままとか(笑)?

Dr:
 それは冗談ですけど、子どもたち仲間の心の通い合いに差し支えることは、あります。このため、一種の仲間外れ状態におかれ、精神的に不安定になったりすることも、ゼロじゃありません。

An:
 そんなに滲出性中耳炎では、聞こえが落ちるんですね?

Dr:
 日常会話が聞き取りづらいくらいに悪化することも、決して少なくありません。このため本人が困るのは当然として、周りの人から見ていても、滲出性中耳炎の子どもさんはボーッとしていて、集中力に乏しいように見えます。江澤さん、ハナ垂れ小僧さんのお話を憶えてますか?

An:
 えぇ、昔懐かしい、ハナから真っ青な2本のハナ水をぶら下げた、あのハナ垂れ小僧さん!

Dr:
 ハナ垂れ小僧さんって、なんとなくボンヤリしていて、反応が鈍いみたいな、その外観から来る印象がありますよね?

An:
 一時代前の、ノンビリした時間のゆっくり進んでいた世相の、生き証人みたいに見えます。

Dr:
 ところがそのボンヤリした外観は、実はハナ垂れに伴う滲出性中耳炎が原因で、耳の聞こえが鈍かったせいだろうと、言われます。

An:
 えっ! じゃあハナ垂れ小僧さんの、成績低下はハナのせいじゃなかった……。

Dr:
 滲出性中耳炎が関与していた可能性も、指摘されています。

An:
 それじゃ、別にハナは垂れてなくとも、成績が下がるんですね?

Dr:
 それどころか、幼児期の言葉を獲得する時期に滲出性中耳炎にかかっていると、言葉の習得そのものに差し支えるとさえ、言われてるんです。

An:
 自分で自覚できない時期の子どもさんの滲出性中耳炎って、重大な影響を及ぼすんですねぇ。

Dr:
 ですから、親御さんの観察だけじゃなくって、3歳児健診に滲出性中耳炎の検査が含まれていて、早めに検出できるようシステム化されているんです。

An:
 その健診でチェックされた子どもさんは、耳鼻科医で検査し治療を受けるんですね。
 本日も重要な興味深いお話を、ありがとうございました。

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