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2022年2月(No.234)

耳のお話シリーズ④
ラジオ3443通信「3・3(みみ)の日とひな祭り④」

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2014年3月18日OAされた、耳の日の話題をご紹介いたします。

 

144 3・3(みみ)の日とひな祭り④

An:
 三好先生、前回は耳の日である3月3日の話題から、難聴者すなわち耳の聞こえない、あるいは耳の遠い人に対して、大きな声だけでは十分な対応になってない、というお話を伺いました。
 江澤は、耳の不自由な方にはとにかく大きな声を心がけるようにしてきたつもりでしたので……。少しショックでした(笑)。

Dr:
 その理由についても、前回は多少触れておきましたね。

An:
 江澤なりにお話を整理しますと。
 例えば、私たちにも身近なお年寄りの耳の遠さに対しても、大きな声必ずしも有用ではない、と。
 それは年齢的に耳が遠くなる場合、全体的に聞こえが悪化するのではなく、高音部つまりカン高い音域から聞きづらくなる、そのせいなんだ、と。
 それは日本語の発音でいうと、「アイウエオ」は聞き取り易いけれども、「サシスセソ」が聞こえていない。そんな現象が生じていて、具体的な日常会話の中では語尾、すなわち肝心のしめくくり部分が抜け落ちて聞こえている。それが、お年寄りの耳の聞こえの実際なんだ。
 そういう、三好先生のご説明だったように思います。

Dr:
 さすがは江澤さん。その通りです。
 そこでどんな行き違いが、現実には生じるんでしょうね?

An:
 お年寄りにも会話の内容の8割方は、ほぼ聞き取れているんですけれども、ですね。問題は語尾、つまり会話の結びの言葉なんですよね、先生。

Dr:
 江澤さん。会話の現場では、何が起きるんでしょうね?

An:
 英語などでは、「イエス」か「ノー」かという意思表示が、会話の最初に来ます。

Dr:
 日本語とは、ちょっと順序が違うんですよね?
 それじゃ、日本語では?

An:
 そこが問題なんですけれど、日本語の「イエス」「ノー」は言葉の最後に来ます。

Dr:
 具体的には? 江澤さん。

An:
 日本では会話本体が先ず、提供されます。そして言葉の最後に、「イエス」「ノー」がやってきます。

Dr:
 と、言いますと?

An:
 江澤が先生に、「良いお天気ですね」と振ったら先生は、「そうですね」とか「そうでしょうか?」って、ご返事になります。

Dr:
 江澤さんは、「晴れ女」ですからねぇ(笑)。「ノー」の返事は、まぁあり得ない。

An:
 (笑)そしてその場合、「イエス」「ノー」に相当する語尾は、「サシスセソ」つまり子音で発音されることになります。

Dr:
 さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。そうです、そうです(笑)。

 そして前回のお話では、お年寄りは子音が得意なんでしたっけ。それとも不得意?

An:
 三好先生、お年寄りの耳は子音すなわち「サシスセソ」は、すごく苦手と教えて頂きました。

Dr:
 すると、どういうことが起こるでしょう?

An:
 先生、ここがとっても大切なお話なんですけれど……。
 そうすると、お年寄りは会話のやりとりなどで、話の最後に「そうした」のか「そうしなかった」のか。つまり話全体がイエスなのかノーなのか、決定的な部分を聞き落とすんです。

Dr:
 話をしていて、肯定しているのか、否定しているのか。
 話の最後の、「そうした」のか「そうしなかった」のか。そこは一番重要ですよね!
 会話の意味が逆転しますから。

An:
 それじゃお年寄りは、会話していて話の8割方聞こえていても、最後に話全体がイエスかノーかが理解できなくなっちゃう。

Dr:
 お年寄りの聞こえの悪化は、英語とは異なる日本語会話の構成とも関連しているんだ、ということなんですね!
 さすがは江澤さんです。
 ハイ、座布団1枚(笑)。

An:
 うれしいっ!

Dr:
 それから、こんなこともあります。
 江澤さんが子どもの頃、お隣の家のおばあちゃんに声を懸けるとき、小さなかわいい声で「おばあちゃん」と呼び掛けても聞こえません。それなら、と大きな声で「おばあちゃん!」と呼ぶと、おばあちゃんはこう応えます。「なんだよ、うるさいね」と(笑)。

An:
 先生。そうでした、そうでした。そういうことって、たしかにありました(笑)。
 江澤もそのとき、おっかしいなぁとは思ってたんですけど。

Dr:
 実はこれ、内耳の神経が年齢的な理由でダメージを受けているときの特徴なんです。

An:
 ヘェーッ!

Dr:
 補充現象と名付けられていますが、小さな音はまるで聞こえないくせに、大きな音はいきなり喧しく聞こえる、そんなことが実際に起こるんです。

An:
 ウソみたい!

Dr:
 ですから、おばあちゃんたちに声を懸けるときには決して大きな声を出さず、耳もとではっきり発音してやった方が、良く会話を理解してもらえます。
 「うるさいね」などと、言われずに済むんです(笑)。

An:
 お隣りのおばあちゃんに話し掛けるときにも、大きな声が却って聞こえづらい、そういうことが起きているってことですね?

Dr:
 ですから耳の不自由な人には、必ずしも大きな声がすべてではない。その現実を、江澤さんの幼時体験(笑)からも、思い起こして頂ければと考えます。

An:
 江澤自身、まさに身近な実体験として、ピンと来ますから、ね(笑)。

Dr:
 さてそれでは、こうした耳の不自由な皆さんのお相手をするときに、私たちがどんなことに気を付けたら良いのか。

An:
 先生、次回はそのお話をぜひ聞かせてくださいな。絶対ですよ! 江澤も常識として、身に付けておきたいと思います(笑)。

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