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2022年2月(No.324)

げんき倶楽部杜人ラジオレポート番外編
げんき倶楽部杜人

~花粉症は鼻の病気です~

図01
樹齢3000年の屋久島・紀元杉
(2022年1月20日、院長撮影)

耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって45年。今回は花粉症シーズンにちなんだ話題を紹介します。

はじめに

毎年2月頃から始まるスギ花粉症シーズン。
 くしゃみ、鼻水、鼻づまりが止まらず、頭がボォーっとして仕事や学業が手につかない。
 この日本人の国民病と言える花粉症、そのルーツは英国にあると言われています。

19世紀の初め、英国の農民が牧草を刈り取る際、人によっては鼻からのどにかけて焼け付くような痛みとかゆみが生じ、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりが止まらなくなるのが知られていました。また、体が熱っぽくなることから、この症状は「枯草熱(こそうねつ)」と呼ばれていたそうです。
 当時、まだアレルギーという概念は生まれておらず、細菌やウイルスなどの感染症だと思われていたんですね。
 日本でも、戦後にハゲ山となった山林への治山治水対策として大量のスギを植樹しました。そのスギが樹齢30年を迎えた1980年、一斉にスギ花粉を飛散させたことでスギ花粉症が日本国内に一気に広がっていきました。

しかし、もともとスギは日本にしか植生しておらず、スギ花粉症は日本固有の病気であると誤解されていた時期がありました。そうした誤解を解くため、私たちは日本と中国などを含めた世界各地でアレルギー疫学調査を行い、中国にもスギが植生していることを突き止めました。そして日中両国のスギの遺伝子が97%同じであることを発見し、両国が氷河期に陸続きで、スギももともと両国に存在したことを立証しました。
 今では、スギある所にスギ花粉症患者ありと、多くの国民を悩ませる季節病として認知されています。

スギ花粉症って?

はた迷惑なスギ花粉症ですが、実は〝体の勘違い〟が原因で起きていることを皆さんはご存じでしょうか。
 スギ花粉症などに代表されるアレルギー症状は、医学用語で“抗原抗体反応”と表します。
 抗原、つまり花粉などのアレルギー原因物質(もしくはアレルゲン)が体内に侵入すると、体の防衛機能である抗体が反応して、せき、くしゃみ、鼻水で体から異物を排出しようとします。

この一連の働きを抗原抗体反応と呼ぶのですが、本来、人体に無害である筈のスギ花粉から、体を必死になって守ろうと過剰反応してしまった結果、風邪と同様の症状を引き起こしてしまいます。

あんなに苦しい思いをしている原因が、実は無害であるスギ花粉を異物と勘違いした自分の体にあるなんて、ちょっと理不尽だと思われるかもしれません。
 では、どうやって花粉症を防げば良いのか? 治すにはどうしたら良いのか? 残念ながら、現在の医療技術では花粉症の完全治療法はいまだ確立されていません。ですが、様々な方法で花粉症の症状を抑えることは可能です。

鼻粘膜へのアレルギー治療

基本的なことですが花粉症は鼻の病気です。ですから、アレルギーで腫れた鼻粘膜に対して、薬の塗布や機器を用いて焼灼する方法が有効です。腫れた組織を収縮させることで鼻詰まりを改善し、かつアレルギー反応それ自体を起こさないようにします。
 病院によってその方法は様々ですが、当院ではトリクロール酢酸というお薬を鼻粘膜に塗り、電気メスで焼灼する処置を行なっています。この方法は表面麻酔とこの薬を塗布するだけなので、大体20分程度で終わります。

こうしたアレルギー反応を起こした部位への直接的な処置に加えて、アレルギー反応が起きるシーズン前に抗アレルギー薬を服薬することで、予防的にアレルギー症状を効果的に抑えることが出来ます。

スギ花粉症の予防策

そもそもアレルギー自体が、原因物質に触れることで起きますので、アレルゲンであるスギ花粉を体内に取り込まない工夫が重要です。
 外出するときはマスクを着用する。飛沫防止メガネを付ける。衣服についた花粉を払い落として、花粉を家の中に入れない。こうした基本的な予防策を徹底すること。
 何より当然ながら花粉症は鼻の病気であることを念頭に入れて、専門の医療機関にかかることをお勧めします。

※「花粉症の方へ」もどうぞご覧下さい。

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