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2022年4月(No.325)

白老健診シリーズ⑤
写真で見るアイヌ文化2
~木下清蔵遺作写真集~

 

図 タイトル背景(左)
図1

前号に引き続きご紹介する「木下清蔵遺作写真集」(図1)は、現在の青森市油川生まれの写真家・木下清蔵氏(1959~1988)(図2)による記録写真を基に、アイヌ民族博物館が編集・発行しました。
 大正から昭和にかけての、民族継承と近代化の狭間を逞しく生き抜くアイヌの姿をご覧ください(以下、写真集より引用)。

図01
図2

●神々とひとびと

熊の霊送り(イオマンテ) 

アイヌ民族にとって、周りにある自然は神の宿るものだと考えられており、自然(神)に敬意をもって接する様々な儀式が執り行われてきました。特に代表的な儀式が、次に紹介する熊の霊送りと呼ばれるものです。
(以下、写真集より引用)

かつて人々は山で熊を獲っていた。その猟は熊が穴ごもりの眠りからさめる2~3月頃が主であった。穴に生まれたばかりの仔熊がいると人々はそれを里に持ち帰り、オリの中で一年ほど近く大事に育てた。
 大体一年が過ぎるあたり、その仔熊は里の人々からおみやげをどっさりプレゼントされ、ていちょうな儀式のもとで親元、すなわち神の国に送られた。
 毛皮をまとって人間の里を訪ずれにきた神すなわち熊の魂を神の国に帰す儀式、それがイオマンテ(図3)である。

図02
図3 写真はイオマンテの際に仔熊をオリから出すところ

 

なお、以下一連の写真は、昭和初期に行われたときのものである(図4)。
 コタン(村)の長老たちが、きれいに彫刻を施したヘペレアイ(仔熊にプレゼントする矢)を射っている。このプレゼント品は熊の神が好むものの一つと考えられていた(図5)。

図03
図4

図04
図5

 

壮年者が仔熊を引きわまし、うしろでコタンの女性たちが掛け声を発し、手拍子でリズムをとりながら最後の別れを惜む。ここらあたりから儀式のクライマックスを迎えていく(図6)。

図06
図6

 

人々に別れを告げた仔熊は丸太と丸太の間にはさめられて仕留められる。ここで仔熊の肉体から魂が遊離するのである(図7~9)。
 こうして、霊送りされた仔熊の肉体は解体され、神の恩恵に感謝しつつ人々へと余すことなく分け与えられることになります。

図07
図7

図08
図8

図09
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つづく

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