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2022年4月(No.325)

小児の中耳炎シリーズ⑥
ラジオ3443通信「水泳と中耳炎」

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2012年7月10日OAされた、小児の中耳炎についてご紹介いたします。

80 水泳と中耳炎

An:
 三好先生、話題は中耳炎のお話のさなかなんですけどもね。自分が子どもの頃、江澤は中耳炎じゃ水泳はできないって、聞いた憶えがあるんですけど。先生、ホントなんでしょうか?

Dr:
 中耳炎って病名を聞くと、そのインパクトがとっても強くって、ですね。すべての中耳炎じゃ水に入れないって、そんな印象を持ちがちです。

An:
 そう言えば中耳炎にも、いくつか種類があるんでしたよね。

Dr:
 急性中耳炎・滲出性中耳炎・慢性中耳炎と、大きく3つに分類した中でプール禁止なのは、急性中耳炎と慢性中耳炎の耳垂れのひどい時期。まず、この2つです。

An:
 それ以外はどうなんでしょうか? 先生。

Dr:
 滲出性中耳炎では、その治療のために鼓膜に穴を開けて、中耳腔換気のためのチューブを入れてあることがあって、その場合は要注意です。そうでなければ、大部分の滲出性中耳炎ではプールOKです。
 慢性中耳炎でも、耳垂れの無い状態が続いているならば、工夫次第で水泳可能です。

An:
 江澤は小さい頃、お年寄りから注意されまして。
「江澤ちゃん。頭っから水に飛び込むと、中耳炎になっちゃうからね。水に飛び込んじゃあ、いけないよ」
 そんな、お話でした。

Dr:
 ははぁ、江澤さんはきっと、すっごく活発な子どもさんだった!?

An:
 いいえ、三好先生。江澤はとってもおしとやかな、よい子でした(笑)。

Dr:
 そのお年寄りはきっと、頭っから水に浸かると、耳の穴つまり外耳道から水が中に入り込んで、それで中耳炎になる。そんな風にご自身も子どもさんの頃、聞かされて育ったんでしょう。

An::
 だけど三好先生。お風呂だって、思いっきり頭まですっかり入ってしまうと、耳からお湯が中に入るんだって、私お年寄りから聞きました。

Dr:
 江澤さん、耳の中って、どういう構造でしたっけ?
 耳の穴を外から順番に、考えてみてください。まず、耳の外側の耳たぶですね。

An::
 その次は先生、耳の穴があって、内部に繋がっています。

Dr:
 それを外耳、耳の構造のうちの一番外側の部分、と呼びます。
 その次には、江澤さんお得意の、fmいずみの微妙なサウンドつまり空気の動きを感じ取る……。

An:
 三好先生、そこには鼓膜が存在します。

Dr:
 鼓膜の内側を中耳腔と呼び、中耳炎の発生する部分でもあります。ということは江澤さん、中耳炎の現場と耳の穴との間には、薄い1枚の膜が張っていてですね。お風呂に頭から飛び込んでも、お湯は中耳腔には届かない。そういうことに、なりますね。

An:
 じゃあ、江澤が教わったお年寄りの長年の知恵は……?

Dr:
 現代と異なり、不衛生だった時代の日本では、ハナ垂れさんばかりではなく、耳垂れのある人も少なくはありませんでしたから。おそらく、小児期に急性中耳炎を患い、鼓膜にキズのついたまま、放置していた人も少なくなかったのではないかと。

An:
 鼓膜に穴の開いたままの人が、頭からお風呂にザブッと入ったり、プールで飛び込んだりしたら……。三好先生、鼓膜の穴から不衛生なお湯や水が中耳腔に入り込みますよねぇ。あぁ、そうか。だから中耳炎が……。

Dr:
 病気の発生を考える場合、時代の状況を頭に入れることは重要です。
 だって、スギ花粉症でさえ。

An:
 江戸時代にもスギは存在したけれど、日本国中に植えられたのは、第二次世界大戦後の復興期でした。だから、戦後スギ花粉症は日本人の国民病になったんでしたもの、ね。

Dr:
 ですから現在では、不潔なお湯や水が耳の中に入って中耳炎を起こすことは、まずありません。
 でも、もちろん急性中耳炎の人は、プールはダメですよ。

An:
 そりゃ先生。急性中耳炎の人は、そもそも風邪の真っ最中だから。

Dr:
 慢性中耳炎で、耳垂れがさかんに出ているときも、良くありません。

An:
 耳そのものが、バイ菌の感染中ですもの、ね。清潔にしておかなくっちゃ。

Dr:
 慢性中耳炎とか小さいときの鼓膜の穴の名残とか、そういう状態でも工夫次第で水泳はできるんです。

An:
 滲出性中耳炎の治療で、鼓膜に換気チューブが入っていても、と伺いましたが。でも先生、滲出性中耳炎で鼓膜に換気チューブを入れるって、どういうことなんでしょうか。

Dr:
 滲出性中耳炎の中耳腔は、空気の入れ替えのできない密閉した部屋みたいなもんだ。そういう話題に、以前触れたことがあります。

An:
 そういった部屋は、現実問題として湿り気が多く、ジメジメしやすい。そんな内容でしたよね。

Dr:
 そして中耳腔も、空気の入れ替えつまり換気ができないと、ジメジメすると言いますか滲出液がたまって来る。そうしたご説明も、お聞き頂いたと思います。

An:
 そう言えば滲出性中耳炎って、のどや鼻の奥と中耳腔を繋ぐ耳管が、うまく開かなくって……。中耳腔が、閉鎖空間になっちゃっているんでしたっけ?

Dr:
 耳管の機能を回復させて、中耳腔の換気をうまく行なうと、中耳腔の滲出液が排液されて、鼓膜は元通り動くようになります。

An:
 聞こえも良くなるんですね?

Dr:

その目的のために、治療法の1つとして鼓膜に換気用のチューブを、留置します(図1)。

図01
 図1 医学コミック「中耳炎世界の冒険」より抜粋

 

An:
 それで、換気が長続きするんですね?

Dr:
 ただし、水泳やお風呂ではそのチューブの管理に、注意が必要です。

An:・Dr:
 お話は次回に続く、です(笑)。

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