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2022年5月(No.326)

耳のお話シリーズ⑦
ラジオ3443通信「補聴器装用と耳掃除」

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2014年4月29日OAされた、耳についてのお話をご紹介いたします。

147 補聴器装用と耳掃除
An:
 三好先生、前回までのお話で、耳が聞こえにくいこと、すなわち難聴にはさまざまのタイプがあって、大きな声が万能ではないことについて、伺いました。
 そしてその中でも老人性難聴は、すべての人間が長生きする場合避けて通れない話題ですので、すこし詳しくご説明頂いてます。
 もちろんこの老人性難聴に対しても、こまやかな心遣いは大切なんですけれども、電話機を発明したあのグラハム・ベルが、実は難聴者のパートナーのために、当初は補聴器を開発しようとしていたとのエピソードも聞かせて頂き、補聴器を活用するためのいくつかの注意点について、お話が進んでいました。
 最近の補聴器はデジタル化が進んで、性能が昔と比べてすっごく良くなっている。江澤は先生から、デジタル化の原理まで教えて頂いて、納得しています。
 それでも補聴器装用には、その前にチェックしておくべきポイントが、あるんでしたよね? 先生!
Dr:
 補聴器の機器それ自体の、すばらしい性能を活かすためにも、実はまず補聴器を使用するお年寄りの耳を、耳鼻科で良く観察しておく必要があります。
An:
 専門医である耳鼻科医の管理が必要なことは、江澤にも良く判りますが……。具体的には、どのようなことを耳鼻咽喉科では診てもらうんでしょうね?
Dr:
 江澤さんは子どもの頃、お母さんに耳掃除をしてもらった思い出が、あるでしょう。とくに今日のような晴れた日には、縁側でお母さんの膝の上に寝かされて。片耳を上にして待っていると、お母さんがそっと江澤さんの耳を優しく覗き込んで、竹の耳掻きで少しずつ耳穴をこすってくれた、そんな記憶が。
An:
 縁側……。なつかしいですね、先生。
 あのポカポカとした日差しとお母さんの膝の温かさとは、今でも江澤の思い出に残っています。
Dr:
 そのなつかしい記憶は、一生忘れられないかもしれませんねぇ。
 ところで江澤さん。この頃は、ちゃんと耳掃除を自分でしてますか?
An:
 はい!! 昨日の夜に耳掃除しました。
Dr:
 江澤さん、老人性難聴で補聴器の必要な方は、果たしてきちんと耳掃除を受けているでしょうか。
An:
 先生、耳掃除にはお母さんの手と、縁側とが必要不可欠ですけれど、縁側のある家自体今ではそんなに多くないような気がします。
Dr:
 ということは、お年寄りの耳穴には、もしかすると……。
An:
 耳かすが一杯詰まっているなんてこと、ゼロじゃなさそうです。
Dr:
 昔の補聴器は、ごくフツーの耳栓で耳穴にあてがっていましたから。
An:
 耳かすがあっても、そんなに不都合じゃなかった(笑)?
Dr:
 それは言い過ぎですけど。現在のデジタル補聴器ですと、耳穴の内側の音響効果もすべて計算に入れて音を増強しますから。耳かすで耳穴がゆがむと、その影響さえ馬鹿にできないんです。
An:
 ヘェーッ!
Dr:
 補聴器の耳栓は、今では耳の穴の形を採取して、使用する方の耳穴の特性を十分に計算に入れて、補聴効果を上げているんです。
An:
 すごいんですねぇ。
Dr:
 ですから、補聴器装用の前に耳鼻咽喉科で耳穴を確認しておく。それはぜったい必要なんです。
An:
 知りませんでした。
Dr:
 それからお年寄りの中には、昔むかし子どもの頃に中耳炎の手術を受けたことのある方もおられまして。
An:
 今のように、有効な抗生物質のなかった時代、ハナ垂れ小僧さんもたしかに多く見かけましたけれど。先生、急性中耳炎などの耳の炎症もたくさんいましたよね。
Dr:
 その急性中耳炎でも、ひどいタイプになると髄(ずい)膜炎(まくえん)にまで至るものも、時に見かけまして。
An:
 それは、手術が必要になるんでしょうか?
Dr:
 私の祖父と父親も耳鼻科医だったんですけれども、その時代には耳の緊急手術を受ける子どもさんも、珍しくなかった。そんな記憶があります。
An:
 子どもの時分に耳の手術を受けたお年寄りって、耳に手術の傷跡が残ってるんでしょうか?
Dr:
 耳の穴の形が、凹んでいたり、他のお年寄りとは少し形が違います。
An:
 そういうお年寄りでも、補聴器はフツーに使用できるものなんですか。
Dr:
 先程お話しましたように、現在の補聴器はその高性能をムダにせぬよう、耳穴の形まで採取して音響効果のアップに役立てます。
 その際に、耳の穴の形をいわばセメントみたいな柔らかい、そして後で固くなる素材を使用して、耳穴の形を確認するんです。
 ところが、子どもの頃の手術で耳の穴の歪んだお年寄りでは、耳穴の型を採取しようとして、セメントみたいな素材を注入すると。さぁ大変(笑)!
An:
 そのセメントみたいなのが、耳穴の中で固まって、絶対に取り出せなくなっちゃうわけですね。想像するだけで、恐ろしいような。
Dr:
 耳鼻科医に診てもらわずに、補聴器店だけで耳型を採取しようとして、そのセメントみたいな材料が術後の耳から取り出せなくなってしまう。そんな事故が、あちこちで起こっているみたいなんです。
 幸い、耳鼻科医を受診すれば、これを除去してもらうことは、簡単なんですけど。
An:
 もしも近くに耳鼻科医のいない所で、そんな事故が起こったら……!
Dr:
 そのお年寄りは死ぬまで耳の中に、セメントみたいなものをいれたままになっちゃう、かも(笑)?
An:
 江澤はそんなの、絶対イヤです(笑)。補聴器は、耳鼻科医の診断を受けてから、お店で購入しましょう!
 おもしろいような、コワイお話でした。

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