3443通信3443 News

2022年7月(No.329)

 

耳のお話シリーズ⑨
ラジオ3443通信「難聴の種類2」

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2014年5月27日OAされた、耳の聞こえについてご紹介いたします。

149 難聴の種類2
An.
 三好先生、前回は耳の構造と聞こえのシステムについて、お話を伺いました。
 お年寄りはじめ、耳の不自由な人と会話を交わすためにも、こうした基礎知識は最低限、身に付けておいた方が良いんですよね、先生。
Dr.
 以前からご説明してきましたように、耳の不自由な人に話し掛ける場合、大きな声が万能でない。それは確かなんですけれども。
 でも一方では、大きな声が役に立つ難聴のタイプも、それもあるわけで。
An.
 それじゃ先生。江澤が頑張って声を振り絞ったら、江澤の真心は耳の遠い方に通じますでしょうか?
Dr.
 江澤さんの真心なら、何を言わなくとも、どこでも通用しますから、大丈夫(笑)。そこで江澤さん。前回のOAで分類した難聴の各タイプですが、どのタイプの難聴が対話に際して、一工夫必要なんでしょうね?
An.
 先生から教えて頂いたお話では、たしかお年寄りの難聴は年齢的に耳の神経の感度が変化する、それが背景の1つにあるような。江澤はそう教えて頂きました。
Dr.
 その通りです、江澤さん。
 だとすると、少なくとも年齢的な聞こえの低下は、耳の神経に原因がありそうです。
 それを江澤さん。どんな性質の難聴って、呼ぶんでしたっけ?
 耳の神経は、音を伝える機能ではなくって、音を感じ取って電気信号として脳へ伝えてやる役割を果たしていました(図1)。

図01
 図1

An.
 先生。音を感じる部分に原因のある難聴は、感音難聴(かんおんなんちょう)です。
Dr.
 と言うことは、音を電気信号に変換して脳に伝えてやる、精密機械みたいな部分の機能低下ですから、脳に伝えられる電気信号の乱れも、感音難聴で生じ易い。そう考えることが、できますね。
An.
 ってことは……、先生!
 耳全体の機能を考えるならば、感音難聴では聞き取った音が歪みがちになるってことですね?
Dr.
 さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。お年寄りなどの聞こえの悪さは、高音部の感度低下や補充現象などを伴うことが多く、拡大した音声だけでは聞き取りが悪いんです。
An.
 よく理解できました、先生。でもね、さきほど先生は、大きな声が役に立つ難聴のタイプもあるって、言っておられましたけど。
 それは、どんなタイプの難聴なんでしょうか?
Dr.
 耳の中の音を感じる神経部分の原因で、歪(ひず)んだ聞こえが発生しますけれど、音を単純に物理的に伝える部分。外耳や中耳などの原因では音は歪まず、聞こえの物理的エネルギーの減少が起きます。
An.
 だだ単に、聞いた音が小さくなっちゃう?
Dr.
 それが伝音難聴(でんおんなんちょう)の特徴なんですけれども。この場合には、耳に入る音の、エネルギーが小さくなって内耳へ届きますので、音の歪みは生じません。
An.
 この場合には大きな声でも……?
Dr.
 大きな声なら、音声の物理的エネルギーが強くなりますので。
An.
 内耳に伝わる声は、そのまま大きく聞こえる……わけですよね、先生!
Dr.
 例えば中耳炎や外耳道炎など、伝音難聴を起こす耳の病気では、大きな声はとっても役立ちます。
An.
 先生が話題にしておられた滲出性中耳炎でも、伝音難聴が起こりますね。
Dr.
 こうした外耳や中耳の病気は、努力して治療すると、改善することも少なくありませんから。
An.
 たしかに滲出性中耳炎による難聴は、中耳腔の換気のための治療で、聞こえがかなり良くなります。
 そうした事情を考えますと、耳の遠い人では、その難聴の原因を耳鼻咽喉科でしっかり診断して、治療を受ける努力をしないと……。
Dr.
 せっかくの、もって生まれた耳の機能を活用できませんし。何より治療で改善する病気をいつまでも長引かせたり、それどころか却ってこじらせて、悪化させてしまう可能性だって、ゼロじゃありません。
An.
 先日先生に聞かせて頂いた、耳かすのお話も江澤はすっかり、納得しました(笑)。そんなふうに、耳鼻科医のチェックを受けておかないと、やっぱりいけないんですね?
Dr.
 聞こえのタイプには、もう1つありましたよね、江澤さん。
An.
 聞こえの悪さつまり難聴は、伝音難聴・感音難聴に加えて、その両者の入り交じった混合性難聴と呼ばれるタイプもあります。
Dr.
 それはつまり、今まで触れて来ましたように、老人性の感音難聴に滲出性中耳炎の伝音難聴を、併せ持っていたりする場合に見られます。
 それに、以前のこの日本でも良く見かけましたように、子どもの頃からの中耳炎を放置しておいて、耳垂れが長引きますと。
An.
 中耳炎の耳垂れって、ハナ垂れ小僧さんと同じ理由で、つまりバイ菌が原因になってましたよね?
Dr.
 有害なバイ菌を、わざわざ鼓膜穿孔状態の耳の中で飼育しているようなものですから。バイ菌の毒素が、いつかは内耳の神経に波及して、神経の性能を低下させるようなことが起こります。
An.
 そうすると、もともと鼓膜に開いた穴のために伝音難聴が存在していたところへ。
Dr.
 毒素による内耳神経への障害が加わって、新たに感音難聴が起きてきます。
An.
 伝音難聴プラス感音難聴ですから……、ああそうか、混合性難聴ができちゃいます(笑)よねぇ。
Dr.
 ハナ垂れ小僧さんもそうですけれど、耳垂れなどの耳の明確な病気も、放置せずに耳鼻咽喉科で診察を受けておきたい。そう思います。
An.
 神経まで病変が波及すると、これはもとに戻りませんからね。
Dr.
 攻撃は最大の防御って言いますけれど、予防は最大の治療ってことも、また真理なんです。
 お話は続く、です。お楽しみに!
Dr.・An.
 本日は、ありがとうございました。

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