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2022年8月(No.330)

 

院長著書『みみ、はな、のどの検査処置』より
さあ大変! ぼくの鼻血が止まらない(鼻出血の止血法)


止まらない鼻血
 あれれれ、ぼくはどうしたの?
 ぼくの鼻から鼻血がポタリ、ぼくもびっくり、お母さんは大慌て。
 落ち着きが、そういうときこそ重要です。焦ってみんなで大騒ぎ、ぼくも何だか胸ドキドキ、なかなか鼻血が止まらない。そんな混乱起こさぬように(図1)。

図01
 図1

一般に子どもの鼻血(鼻出血)は、鼻の入り口の血管の集中している部分から、であることが多いものです。ですから気を落ち着かせて、ゆっくり血止めの処置を行なえば案外手こずることなく、鼻血は止まってしまうようです。
 応急処置として、鼻血の子どもは決して仰向けに寝かせないことが大切です。鼻血が飲み込まれると気分も悪くなり、血の混じったどす黒い胃液を吐くこととなり、一層焦りが募ります。
 鼻血の子どもは軽くうつむかせて椅子に腰掛けさせ、小鼻のところを圧迫してじっと5分間、待つのが良いとされています(図2)。

図02
 図2

鼻の真ん中の骨(鼻中隔)の入り口の部分は、キーセルバッハ部位と呼ばれる血管の集中している場所です(図3)。ですからちょっとした刺激で、不意に鼻血が出てきやすいところなのです。ぼくたち子どもは、ついついそのキーセルバッハ部位を傷つけてしまい、鼻血を見ることも多いようです。
 耳鼻咽喉科でこの部位からの出血を止めるには、電気で血管を焼く処置をします。図4にお示しするバイポーラ―と称する機器で、図のように出血部位の血管を焼灼するのです。

図03
 図3

図04-05
 図4

子どもでは、女の子よりも男の子のほうが鼻血の出る頻度は高いようです。別に男の子が活発で、何かに鼻をぶつけがちだという訳ではないのです。鼻血の背景にはアレルギーの隠れていることが良くあって、子どもでは男子の方が女子よりアレルギーを生じ易いためらしいのです。
 ことに鼻アレルギーのある子どもでは、鼻が痒くなり無意識に鼻をこすったり鼻くそほじりをして、キーセルバッハ部位の粘膜を傷つけ、鼻血を出しやすいという事情もあります。鼻血を繰り返す子どもには、一度アレルギーの検査を受けさせて下さい。

 図5は、実際の症例の鼻の中を撮影したものです。
 赤線で示した部位に赤く出血した箇所が見られます。
 ここがキーセルバッハ部位と呼ばれる静脈が集まっている場所で、鼻血はこの血管が切れて出血することで良く起こります。

図05a
 図5


 なお鼻出血が怖いのは、背景に白血病などの血液疾患の隠れていることがあることで、そのため鼻出血の処置に際しては血液検査等が欠かせません。
 以下はその実例です。

症例1
 6才 男子。
 鼻出血にて当院受診。
 採血検査にて白血球の異常増加あり。市立病院小児科を経て東北大へ入院。白血病の治療が行われたが死亡した。
 当院受診前に2カ所医療機関を受診していたが何ら精査がなされておらず、手遅れとなった感をぬぐえない。

症例2
 10才 女子。
 当院受診の前日に鼻出血あり。翌日受診。止血処置を施行した。
 その際の血液検査で異常が認められ、こども病院へ入院した。

 病名は急性骨髄性白血病。

 これら2症例で理解できるように、単なる鼻出血でも背景に重大疾患の潜んでいることがあります。当院では単なる鼻出血に見える症例でも、必ず精査を行ないますが、症例1のように手遅れとなることを予防するためです。
 ただの鼻血と決して軽んじてはなりません。
 現実に白血病の鼻出血は存在するのです。

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