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2022年10月(No.332)

 

英国紅茶シリーズ⑧
ラジオ3443通信「ロビンソン・クルーソーと砂糖貿易」

 

ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
 ここでは2013年6月25日OAされた、英国紅茶にまつわる話題をご紹介いたします。

121 ロビンソン・クルーソーと砂糖貿易
An.
 三好先生、前回はブラジルで砂糖きびの生産の行なわれたことが、世界に砂糖の広まる原因だった。そんな話題を聞かせて頂きました。ブラジルはたしか、ナポレオンに本国を追われたポルトガルが支配した領地でしたから、ヨーロッパにはポルトガルから砂糖が入って来たんでしょうか?
Dr.
 さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。17世紀の中頃に、ポルトガルから英国王室に嫁いだ「ブラガンサのキャサリン」として知られる王女が、その結婚の折に英国に砂糖を持ち込みます。
An.
「結婚の折」と言いますと、持参金代わりでしょうか。
Dr.
 ますますサエてる江澤さん。当時一般的には、銀を持参金にする習慣があったんですけど、キャサリンは船いっぱいに砂糖を積んで英国へお嫁入りしたんです。
An.
 船1艚分の砂糖でしょうか!?
Dr.
 その当時の砂糖は貴重品で、本当に銀と同じ価値がありましたので、持参金として通用したんです。
An.
 その砂糖は、紅茶を飲むのに必要不可欠になったわけですね?
Dr.
 実際、英国における紅茶の消費量と砂糖の消費量を比較したグラフを見ると、両者の増加がまったく同時に生じていることが、理解できます。
An.
 英国は砂糖を、すべてポルトガルからの輸入に頼っていたんでしょうか。
Dr.
 ポルトガルはブラジルで、砂糖きびを栽培していました。砂糖きび栽培には、赤道直下の暑い厳しい気候の下で、勤勉に働く労働力が必要です。
 江澤さん。ポルトガルがブラジルに王室を移動したとき、一緒に連れて行ったのはどんな人たちだったでしょうね。
An.
 三好先生! 三好先生がブラジルでアレルギー調査をしたときのお話、憶えています。
 ポルトガルはアフリカからブラジルへ、奴隷を労働力として連れて行ったんでしたね!
Dr.
 江澤さんのお好きな、ブラジル音楽のサンバ発祥の地と言われる、バイーア州のサルバドール。ブラジルの東海岸に位置するこの町は、現在ではブラジルで3番目に大きな都市として知られてます。
 サルバドールという名前は、ポルトガル語で救世主つまりイエス・キリストを意味していますが、ブラジル最初の首都でした。
 ですからこの町は別名「サン・サルバドール」、つまり「聖なる救世主」とも呼ばれるんです。
An.
 サンバの生まれた町ということは、アフリカから移住した住民が多いんでしょうね?
Dr.
 この町こそが、「ブラガンサのキャサリン」の大量の砂糖の産地で、ポルトガルがアフリカから奴隷を運んで砂糖きび栽培に従事させたんです。
An.
 サンバと砂糖きびの町なんですね。
Dr.
 英国はポルトガルを見習い、当時英国の植民地だったカリブ海で砂糖きび栽培を始めました。
 ところで、江澤さん。江澤さんは、「ロビンソン・クルーソー」のお話を知ってますよね?
An.
 絶海の孤島で、何年間も1人暮らしをした男の人の、有名な小説ですね。
Dr.
 絶海の孤島と小説の中に書いてある島は、もちろん実在しません。でもその孤島のあった位置は、現在では南米・ベネズエラから大西洋に注ぐ、オリノコ川の河口の少し東にあると、考えられています。
An.
 えっ、先生。ロビンソン・クルーソーの住んでいた島が、今じゃ分かっているんですか?
Dr.
 そのロビンソン・クルーソーが、アフリカからブラジルへの奴隷貿易を手懸けようとして、パートナーに選んだのがサルバドール。つまりサンバの町、なんです(図1)。

ロビンソン・クルーソー(文庫) から
 図1


An.
 そんなお話もあるんですねぇ!
Dr.
 英国に生まれたロビンソン・クルーソーは、このサルバトールで4年間砂糖きび農園を経営し、成功を収めます。
 世界地図を見ると、アフリカの黄金海岸沿いのギニア湾は、大西洋を挟んでサルバトールのすぐ北西にあります。
 ロビンソン・クルーソーは、サルバトールの港を出て北上中の船が赤道を越える頃、最初の嵐に遭遇しオリノコ川の方向に流されます。
 そして第2の嵐のために難破し、いわゆる「孤島」に打ち上げられます。
An.
 地図で見ると先生、そこはカリブ海の東側に相当しますね。
Dr.
 ロビンソン・クルーソーの物語は、実はカリブ海の英国の領地の近辺で進行する、冒険小説だったんです。
An.
 と言うことは、当時の英国にとってカリブ海は重要な土地だった?
Dr.
 さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。そこから、紅茶に入れる砂糖のお話に戻るんですけど。
 その前に少し、ブラジルのサンバに纏わる話題を触りだけ(笑)。
An.
 先生はサンバに、特別な思い入れがあるんでしょうね。
Dr.
 サンバはサンバでも、ちょっと違う意味のサンバとご縁がありまして。ブラジル関係ですけれど、ね。
An.
 何でしょう? 先生のお話、おもしろそう!
Dr.
 私のブラジルでのアレルギー調査については、先に触れたことがあります。
 この調査は南緯10度のブラジル北西部の町、レシーフェ市で行なわれました。
An.
 南緯10度ですか。きっとステキなところなんでしょうね?
Dr.
 私が宿泊した海岸沿いのホテルからは、窓一杯に海が広がっていて。私は生まれて初めて、大西洋から昇る朝日を見ることができました。
An.
 大西洋の朝日!? それはスゴイ。
Dr.
 このときの調査については、後程ご説明しますが。これとは別に、南緯3度の地域つまりフォルタレーザ市でのJICA(ジャイカ)のプロジェクトに協力したことがあります。
An.
 次回はそのお話ですね。楽しみです!

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