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2023年3月 No.337

 

朝のスタッフ勉強会10
アレルギーと花粉症のお話10
~医学コミック8巻「愛しのダニ・ボーイ」より~

コミック⑧ 表紙【構成用】


引き続き
 当院では朝礼時にさまざまな資料を用いて、接遇や医学・医療についての勉強会を行なっています。ここでは、いま使用している院長監修のアレルギーに関する医学コミック『愛しのダニ・ボーイ』、その解説についてご紹介致します。
 なお、解説含めたマンガも当院ホームページで無料閲覧できるよう準備中です。

28.アレルゲン接触の頻度がカギ
 日光のいろは坂において、車両の通行量増加に一致してスギ花粉症が激増したこと。日光では、杉の多く通行量の少ない山中よりも、花粉の落下量は普通だが通行量の多い国道沿いの方が、スギ花粉症の頻度は高いとされること。しかしそれは、調査した小泉氏らの主張するようなディーゼル排出物の影響よりも、通行車両の車輪が落下花粉を再び巻き上げ人間の鼻粘膜に何回も接触するためであるらしいこと。これらについて、前項は触れました。

 私たちのこの説を証明するには、けれども次の事項をはじめに証明しておかねばなりません。
 それは、花粉などアレルゲン(アレルギーの原因物質)に接触する量もしくは時間の増加するほど、花粉症の頻度が増えること。その増加は、異なる被験者を比べた場合だけでなく、同一の被験者の経時的変化を観察して確認してあること。そして逆にアレルゲンの接触が減少すれば、花粉症の頻度の少なくなること。この3条件です。

 アレルゲンの増加と花粉症の頻度については、白老町や栃木県栗山村で私たちが実証したデータがあります。全町内の小中学生についての調査で、年齢の上昇するほど花粉症の頻度は増加していたのです。この年齢に伴う頻度の増加は、何年間も同じ児童を追跡した調査でも観察され、同一被験者でも同じ傾向であることが分かりました。すなわち、個人差つまりDNAの相違のために、花粉症の頻度が異なる訳ではないのです。

P.105


29.花粉量減少で発症も減少
 さて、花粉症になってしまう場合、その頻度がアレルゲンとしての花粉と接触するその量もしくは時間に関連するとの推測は、前回ご説明した事実からある程度裏付けが可能です。加えて、花粉の量が減少した場合に花粉症の症状が軽くなる、そんな現象が確認できれば、私たちの推理は証明されたことになります。

 実は私たちの共同研究者である、中村晋前大分大学教授のデータがあります。中村前教授は大分大学在学生を対象に、1年生の時点と4年生になってからの2回、アレルギー学的検査を実施しています。この結果、スギの多いことで知られる大分大学在学中のほとんどの被験者で、1年生のときよりも4年生になってからの方が、花粉症の頻度は高いことが分かりました。

 ところがそれにも関わらず、冷夏の翌年でスギ花粉飛散のすごく少なかった1994年春の調査では、4年生の花粉症発現は1991年の1年生時より少なかったのです。
 つまり前回記載したように、アレルゲンに接触するその量や時間が増加した場合には、原則的に花粉症の頻度は増える。しかしアレルゲンの量が少ないと、症状の出現する頻度は減少する。こうした原理は間違いのないことが、改めて実証できたことになります。

 こうして見ると、日光におけるスギ花粉症の増加も、花粉の量や接触時間に無縁ではなさそうですし、激増した通行車両の車輪による花粉の再飛散が、それらの原因として疑われることも理解できるように思います。

P.106


30.花粉成分を保持するディーゼル排出物質
 日光におけるスギ花粉症の激増は、車両通行量増加に比例していること、そしてそれは車両のディーゼル排出物が原因ではなく、落下スギ花粉が通行車両の車輪に巻き上げられて何度も人間の鼻腔に接触するためであること、について前回までご説明しました。

 しかし小泉氏らは、マウスの腹腔内にスギ花粉とディーゼル排出物質(DEP)を注入し、この両者を併せて注入した際にはスギ花粉単独のときよりも、アレルギー反応の強く起こることを、実験で証明しています。これは、大気汚染説の証拠とはなり得ないのでしょうか。
 DEPの成分は、実は炭素です。そして小泉氏ら自身の実験でこの炭素は、スギ花粉成分を吸着し保持する力を持っていることが分かりました。

 つまりもしもスギ花粉の成分が人間の鼻粘膜から流れ落ちたとしても、そこにDEPは残留して吸着した花粉成分をなお放出し続ける可能性があるのです。
 一方、私たちの共同研究者である高橋裕一山形県衛生研究所主任研究員は、空中の花粉成分の飛散状況を分析しました。そしてシーズン中の大気中には、スギ花粉そのものだけでなく、花粉成分を吸着した微粒子が多量に浮遊していること、この微粒子はDEPである可能性の高いことを報告しました。
 つまりDEPはアレルギーを亢進させるよりも、花粉成分を長く空中に保持し、その結果鼻粘膜のアレルギー反応を長引かせているのです。

P.107


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