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2023年3月 No.337

 

航空自衛隊主催の
松島基地航空祭2022観覧レポ

秘書課 菅野 瞳


はじめに
 残暑が残る2022年8月28日(日)、仙台市から車で約1時間の距離にある、航空自衛隊松島基地に行って来ました。
 向かう先が松島で、自他共に認める食いしん坊の私ではありますが、決して松島の名産、牡蠣を食べに出向いたのではありません(笑)。
 今回の目的は、コロナ禍中のため3年ぶりの開催となる、松島基地航空祭の観覧です。今年は入場制限が設けられており「見たい見たい! 行きたい行きたい!」と駄々をこねても、期日までに応募をして当選しなければ、入場することが出来ません。

 今年は抽選なんですね……久々の航空祭ですが「行けますかねぇ?」と、訝しげな表情の院長。はい、行けると思います。これは全く以って確実性のない、私の勝手な参加表明です(笑)。
 何の根拠もないにも関わらず、どこからともなく湧き出る、私の自信満々の発言に、よくまぁ~発したものだと、自分で自分が怖くなります。怖いもの知らずとはこういうことを言うのですね(笑)。

日の丸アクロバットチーム“ブルーインパルス”
 さて、航空自衛隊松島基地の代名詞と言えば、言わずと知れた“ブルーインパルス”ではないでしょうか。ブルーインパルスとは、航空自衛隊が誇る、ジェット機の編隊曲技飛行チームの通称で、航空自衛隊の存在を多くの人々に知ってもらうために、航空祭や国民的な大きな行事などで、華麗なアクロバット飛行(展示飛行)を披露する専門のチームです。
 正式名称は、宮城県松島基地の第4航空団に所属する「第11飛行隊」です(図1)。

図01
 図1 ”ブルー”の使用するT-4


 私の勝手な憶測ではありますが、あまりにもブルーインパルスという言葉が国民に浸透しているため、これが正式名称だと思われている方が多いのではないでしょうか。
 遡ること2年程前になりますが、ブルーインパルスに関する報道で、私が胸を熱くしたニュースがありました。
 新型コロナウィルス感染の収束が見えない中で、連日コロナウィルスの対応に当たっている医療従事者に、敬意と感謝の気持ちを示すために、東京都心の上空を、華麗に飛行したという内容でした(動画)。

 真っ青な空に白い筋を描き、自在に飛行する“ブルー”の姿に、人々が歓声を上げている様子が映し出されていました。メディアは、それを“医療最前線へのエール”などと伝え、病院の屋上で看護師や職員等が、大きく手を振る姿が、とても印象的でした。それでこそ国民に、夢と希望・感動を与えるアクロバットチームです。

 私の馬鹿がつく程の飛行機好きを既知している方には、必ずと言って良いほど驚かれますが、私は未だにブルーのアクロバット飛行を、リアルタイムで見たことがありません。遅ればせながら、確実性のない参加表明をした私ではありましたが、無事2万5千人の当選者の一人として、当選はがき(図2)を片手に入場をさせて頂き、今回が正真正銘の初観覧の機会となりました。

図02
 図2 観覧チケット


いざ! 航空祭へ!
 航空祭当日は、数日前から出されていた雨予想が的中し、なかなか止みそうにない雨模様です。東松島市内に、当選者用の駐車場を11カ所に用意しています、と告知を頂いていたので、駐車場には困らないだろうと高を括っていた私でした。
 ところが実際は、満車満車・駐車出来ませんという門前払いの嵐です。東松島市内をいったい何周したことでしょう。なんとか駐車スペースを確保し、その後は松島基地まで約3キロの徒歩移動です。松島基地はどの方角にあるのか? それすらも分かっていない私ではありましたが、松島基地に向かう人の流れに身を任せ、迷うことなく無事辿り着きました。

ようやく入場……おや?
 まずは正門前で、当選はがきと身分証明書のチェックがあり、次に検温と持ち物検査へ進みます。その流れ作業のようなチェックを終えると、本日のプログラムが渡されます。やっと入場完了! 一息ついてプログラムに目を落としていると、そこに場内アナウンスが……。

「オープニングフライトは、天候不良により中止となります」

 ガ——ンッ(泣)。いま何と……?

 金槌で頭を叩かれたかのうように、私は脳しんとうを起こしかけました。本日のオープニングフライトでは、公式な愛称ではありませんが、一部の関係者やファンの間では、「平成の零戦」と称されている、F-2という戦闘機(図3)の飛行が予定されていました。“零戦”……いつ聞いてもいい響き(笑)。自我が思わずあふれ出てしまいましたが、何を隠そう、私は大の零戦ファンです。零戦をこの目で見に行くためならば、右に左に、どこへでも飛んで行きます(笑)。是非とも平成の零戦の飛行をこの目でと思っていたので、それはそれは無情なアナウンスでした。

図03
 図3 GD製F-16をベースに日米共同開発されたF-2支援戦闘機


 平成の零戦への思いはさておき、気を取り直してブルーの訓練飛行を待つとしましょう。雨は相変わらず止む気配がなく、空は雲が低くどんより。ブルーの機体が映える空模様ではありませんが、ブルーの一番機はウェザーチェックのため、ゆっくりと動き出し、基地上空をグルグルと飛び回ります。祈るような気持ちでブルーの帰還を待つ私達の耳に、またも悲しきアナウンスが……。なんと午前の部のブルーインパルスの展示飛行も中止と致しますとのこと。

 F-2に続く悲報に、観衆からはどこからともなく溜息がもれました。ブルーの展示飛行の後に予定されている、救難隊の訓練飛行。まさか救難隊のヘリもが、悪天候で飛行中止に? なるわけ……なかったです(笑)。
 ホッと胸を撫でおろし一安心。颯爽と救援機U-125AならびにUH-60Jが飛行準備に入るため、誘導路に姿を現しました。待ってましたぁ~思わずそう叫びたくなったのは、私だけではなかったと思います。

「あなたが待っていたのはF-2でしょっ!?」と言いたげなUH-60Jの顔がいかつく見えたのは言うまでもありません。

 UH-60Jは、降りしきる雨をもろともせず、自分が最後の砦だと言わんばかりの訓練飛行を見せてくれました。残念ながら、UH-60Jと同じタイミングで動き出していた、U-125Aの飛行は中止となり、午前の部はこれにて終了です。

 一向に止む気配のない雨にたたかれ続けているせいか、午前の部の終了時には、会場を後にする方が大勢見受けられました。方向音痴の私は、航空基地祭に出向く人々の波に乗り、ここまで辿り着くことが出来ましたが、帰路に就く人の波に乗って退場する気にはどうしてもなれず、ここは粘ろう、きっとブルーは飛んでくれる筈だと信じて午後の部の開始を待つことにしました。

 長いながぁい待ち時間だなと思いきや、有料観覧席が設置されているすぐ横のA格納庫に、平成の零戦が展示されているではないですか。
 近い近い近い!! その迫力たるや。気付けばあっという間の90分を、こちらで過ごしていました(笑)。

待ち望んだ午後の部
 13時を過ぎ、そろそろ午後の部のスタートの時間になると、観衆の切なる思いが届いたのか、雨も小康状態となり、上空をがっぽりと覆っていた雲は途切れ、雲の切れ目からは日の光も差してきました。
 これは良い兆候……午後の部のスタートに登場予定のF-2(図4)、本日の主役ブルーは、その雄姿を見せてくれるのでしょうか。一時は、度重なる飛行中止のショックに、廃人(俳人ならば素敵な一句でも詠めたのでしょうが)になりかけていた私ですが、本日の天気のように、気持ちは打って変わり、動き出す姿を確認できた、F-2とブルーの飛行を前に心躍りました。

図04
 図4 滑走路上で待機するF-2


 90分の休憩時に、F-2を隅々まで見渡し堪能した私ですが、結局航空祭当日は、F-2の飛行を拝むことは叶いませんでした(泣)。晴れ間は見えてきたものの、雲がだいぶ低い位置にあることが、飛行の中止に影響を及ぼしたようです。そのような状況下でもブルーは、見事に飛び立ち、観衆を一瞬にして笑顔にしてくれました。

 私の周りでは、指笛でブルーの飛行を称える方もいらっしゃいましたが、私は逆に、自分の想像を遥かに超えるブルーのあまりの格好良さに、言葉が出ませんでした。基地上空を自由自在に飛び回り、まるで空が自分達のキャンパスのように弧を描き、高く高く上を目指して突き進むその姿に、目を奪われ目を離したくなくなります(図5、6)。

図05
 図5 C隊形で飛行するブルーインパルス

図06
 図6 B隊形で「チェンジオーバーターン」を披露


 見るもの全てを唸らせ、虜にしてしまうブルーの雄姿……私は語彙力に乏しいので、これ以上ブルーを絶賛する表現が見つかりませんが、本当に本当にいいものを見せて頂きました。

 ブルーインパルスに魅せられ、遠方から車中泊までしてイベントに足を運ばれる方が、大勢いらっしゃるという話を聞き、物好きですね~などと思った私ではありましたが(零戦のために九州にまで飛ぶアナタが言うんじゃない! と言われますね)、素直に謝罪しようと思います(笑)。

 明朝からの優れない天気に翻弄され、予定されていた飛行展示のプログラムは順調に進まず、肩を落としていた方は大勢いらっしゃいました。しかしながら、終わり良ければ全て良し! という諺があるように、ブルーインパルスの華麗な飛行は、観衆のそんな想いを一蹴し、有終の美を飾ることが出来たのではないかと思います。零戦をこよなく愛する私が言うのも、烏滸がましいのかもしれませんが、航空自衛隊が誇るブルーインパルスは、文句なしに格好良かったです。夢のようなひと時を、有難うございました。

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