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2023年6月 No.340

 

日耳鼻総会 in 福岡
雨の長崎・旅情レポ

院長 三好 彰


はじめに
 毎年、5月連休が明けると日本耳鼻咽喉科学会の総会が開催されます。
 今回は2023年5月17日(水)~20日(土)の会期で、福岡国際会議場をメイン会場として全国から多くの耳鼻科医が参加しました。
 私はこの機会に長崎まで足を延ばして、旧友を訪ねることにしました。

涼しい九州
 全国的に猛暑となった5月17日(水)。仙台も30℃を超す夏日となりましたが、訪れた長崎はあいにくの曇り模様。そのため気温も20℃前半と涼しい日和となりました。
 この日、私が30年ほど前に訪れたことのある郷土料理店「一二三亭(ひふみてい)」の別店で、旧友である藤原久郎先生(記事「訪れた人々」より)と3443通信でご紹介した吉田翔先生(長崎みなとメディカルセンター)(記事「第22回ありのまま自立大賞 参列レポ」)と夕食をご一緒しました(図1)。

図01
 図1 楽しい時間を過ごせました

図02
 図2 お店のある思案橋横丁(3年ぶりの長崎くんち練習の後ろ姿)


 吉田先生は、私たちが実施した新型コロナウイルス対策マスクと難聴児・者のコミュニケーション問題についてのアンケート(記事「難聴児・者に対するコロナ対策マスク装用の影響」)にご協力を頂きました。

雨の長崎
 翌18日(木)。今にも雨が降りそうな曇天の下、観光タクシーを利用して市内を巡りました。坂の町・長崎の名所旧跡を約3時間の行程です。歌手・里見浩太朗氏の『雨の長崎』ではありませんが、シトシト雨の降る長崎もまた趣のある雰囲気を楽しめました。

平和公園(図3)

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 図3 鎮魂の祈りを込めて……

原爆の爆心地(グラウンド・ゼロ)の北側にある平和公園には、青銅製の巨像「平和記念像」が威風堂々とした姿で鎮座しています。天に指した右手は「原爆の脅威」を、水平に伸ばされた左手は「平和」を表し、原爆の脅威と鎮魂の願いが込められています。

 タクシーの運転手さんいわく「モデルは力道山です」(図4)。

図03 長崎の平和公園の記念像(力道山)2
 図4 悠然と佇む力道山?


松山町防空壕群(図5)

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 図5 防空壕の説明文と実際の防空壕跡

平和公園のある丘周辺には、避難するための防空壕が設けられていました。爆心地から180メートルしか離れていないも関わらず、濠に避難した町民は原爆の強烈な熱波の影響を最小限に抑えられたため生存することが出来たそうです。


医学博士・永井隆Dr.の如己堂(図6)

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 図6 このわずか2畳一間の如己堂から、永井Dr.は研究結果や随筆を生み出しました

放射線物理療法の研究に取り組んだ永井医師が晩年を過ごした庵です。原爆症を発症した永井医師はこの二畳一間の庵で原子病の研究を続け、『この子を残して』や『長崎の鐘』など多くの小説や随筆を書き上げました。


亀山社中記念館(図7)

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 図7 坂の中腹の住宅地の中にある記念館

長崎市を一望する風頭山(かぜがしらやま)の中腹に建つのが、亀山社中記念館です。土佐藩を脱藩した坂本龍馬たちによって結成された日本最初の商社と言われるのがこの亀山社中で、イギリスの貿易商グラバーから、当時最新のライフル銃や蒸気船(ユニオン号)を買い付け、幕末期における戦争形態に大きな変化を与えました。
 館内には竜馬が持参していた回転式拳銃や刀のレプリカ(図7)や、市内を一望する『竜馬ぶーつ(上海で入手?)像』が展示されています(図8)。

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 図8 社中内の展示品

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 図9 長崎市を一望できます


眼鏡橋と”恋”が叶うハートストーン(図10、11)

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 図10 日本初のアーチ式石橋

国定重要文化財で日本初のアーチ式石橋である眼鏡橋(表紙参照)。その橋近くの護岸にはハート型の石垣(図10)があり、恋の叶うパワースポットとして男女問わず人気があるそうです。言われてみれば確かにハート型の石が見つかりましたが、なんとこのハートストーンは20個近くもあるのだとか。他にも丸い石と細長い石で“i”の形の石があったりと、色んな形のパターンが楽しめるのだそうです。

 また、この眼鏡橋は中国興福寺の2代目住職・黙子如定(もくしにょじょう)が、中島川の度重なる氾濫によって橋が流出するのを見かねて、中国から石工を呼び寄せてこの眼鏡橋を建造させたと言われています(図12)。

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 図11 じつは20個近くあると言われるハートストーン

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 図12 黙子如定の像


グラバー園(図13)

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 図13 ツツジが見頃を向かえたグラバー園

江戸幕府により世界5カ国との修好通商条約が結ばれ、開港都市となった長崎には外国人の住まう居留地が生まれました。グラバー園にある9棟の伝統的建築物の内、旧グラバー邸を含む3棟は居留地時代に建てられた国定重要文化財で、残る6棟は明治中期頃に市内に建てられた洋風建築を移築したものです。
 160年近く長崎を見守り続けた趣と風格のある建築物を前にすると、思わず感嘆のため息が漏れてしまいます。

長崎伝統芸能館(くんち資料館)(図14)

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 図14 船を模した山車が納められています

前述のグラバー園の西側に隣接した場所にある長崎伝統芸能館には、当地で有名な奉納祭『長崎くんち』に使われる山車・壇尻が展示されています。
 長崎くんちとは、長崎市の諏訪神社の祭礼で、毎年10月7~9日の3日間に渡って開催されています。国の重要無形民俗文化財に指定されたこの祭礼は、1634年(寛永11年)に行われたのが最初と言われています。龍踊(じゃおどり)や、御朱印船などを模した色とりどりの装飾が施された山車などが大通りを行きかい、外来文化に触れることの多い港町ならでは活気に満ちた催しです。
 コロナで3年ぶりとなる「くんち」を前に、山車も嬉しそうです。

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