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2024年2月 No.348

 

三好耳鼻咽喉科クリニック ラジオレポート
ラジオ3443通信「発話法とグラハム・ベル一家」

図00
2022年9・10月号掲載


 耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって45年。今回は2014年7月にfmいずみで放送された内容を紹介します。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

発話法とグラハム・ベル一家
An.
 電話機を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルはもともと「発話法」に携わる言語療法士だったと、前回伺いました。「発話法」って、江澤たちが習ったリスナーが聞き取りやすい発音方法の訓練のようなものと理解してよろしいんでしょうか?
Dr.
 その通りです。言語療法士の行う発音練習には後で述べるように、さまざまな内容が含まれますが。江澤さん。アナウンサーとしての発音の特訓、キツくなかったですか?
An.「キツい」よりもまず、戸惑ってしまいました。大げさなほど大きく口を動かす訓練は、まぁ、予想していた通りだったんですけれど。「口元から」ではなく「お腹の底から」、腹筋を駆使して声を出すんです。
Dr.
 江澤さんの特訓のそれも、発話法の一種なんですけれども。グラハム・ベルが父親から教わったのは「口の形をビジュアル化」して、誰でもどんな発音でもその口の形をまねすれば、正確な発音ができるようになる、いわば発音の記号化システムだったんです。
An.
 グラハム・ベルの父親は、それで何をしようとしたんでしょうね?
Dr.
 グラハム・ベルの一家は、もともと英国の北東部にあるエディンバラ近辺の、セント・アンドリュース地方の生まれ。電話を発明したベルのおじいさんは、このセント・アンドリュース・グラマー・スクールという、正式の英語を教える学校の発音の教師でした。英語の弁論と朗読、それに加えて吃音の矯正も、担当していたんです。
An.
 それじゃ、本場物の英語、つまりいわゆる「クイーンズイングリッシュ」も、教えていたんでしょうね?
Dr.
 同じ英国内であっても、交通や通信、マスコミュニケーションが行き渡っていないと、各地方の言語はずいぶん違っていたみたいですし。
An.
 そういえば江澤の子どもの頃、仙台でも仙台周辺でしか通用しない言葉がありました(笑)。世界の七つの海を制覇した英国では、標準語的な正式の発音が、クイーンズイングリッシュだったんでしょうけれど。
Dr.
 江澤さんの言われるように、英語にもきっと仙台弁みたいな英語は、あったんでしょう。そんな、いわば「センダイイングリッシュ」(笑)の矯正も、ベルのおじいさん、お父さんはプロとして手掛けていたんです。
An.
 一つの物語になってもおかしくないようなお話ですね!
Dr.
 ベルのお母さんの名前は「イライザ」っていうんですけど。このイライザを主役に、下町英語をしゃべりまくる花売り娘が大活躍する、ミュージカルがあります。
An.
 せ、先生、それはもしかするとオードリー・ヘップバーンの「マイ・フェア・レディ」(図1)じゃありませんか!?

バーナード・ショーとマイフェアレディ 1校
 図1


Dr.
 江澤さん。ハワイじゃなくって、ロンドンへご招待しますよ。ベル一家の友人だった、バーナード・ショーがベル一家のエピソードを基にストーリーを作り、戯曲を書きました。
An.
 それがミュージカル化されて、あの映画になったんですね!
Dr.
 ここにそのDVDを、持っていますが。
An.
「原作:バーナード・ショー」って書いてありますね。ステキ!
Dr.
 3月3日「耳の日」生まれの、グラハム・ベルについては、もっともっと面白いエピソードがあります。次回をお楽しみに。

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