3443通信3443 News

2024年3月 No.349

 

『0歳からのオーケストラ』鑑賞記

秘書課 菅野 瞳

20240116131628-0001


 あと数日で、今年も終わりの足音が聞こえてきた2023年12月16日(土)、青葉区旭ヶ丘にある日立システムズホールにて行われた『0歳からのオーケストラコンサート』に行って来ました。

 今回で2度目の鑑賞となる“Concert for KIDS 0歳からのオーケストラ”ですが、未就学の小さなお子さまとご家族が一緒に楽しめる、約1時間のクラシックコンサートになっており、楽しいお話やお子さまの大好きなリズミカルな曲を交えながら、大人にも聴きごたえのある演奏を届けようというコンセプトのもと、全国各地で開催をされているそうです。

 さて、私も0歳になったつもりで鑑賞するとしますか!(笑)いや、これはかなり高いハードル? いえ、無謀なハードルになりますので、私は0歳の子どもを持つ母親の目線で鑑賞していこうと思います。
 入場手続きが済み、本日のプログラムが手渡されました。なんと本格的なコンサートなのでしょう! 0歳の子どもに聞かせるというプログラムの序曲に、オペラ序曲で有名なモーツァルトの“魔笛”(図1)があるではないですか! 0歳に聞かせるコンサート……侮れません(笑)。

図01
 図1 モーツァルトの「魔笛」


 どうやら本日の演奏会は、この魔笛を元にパパゲーノが大好きなパパゲーナちゃんを探し、クラシックの名曲に出逢いながら旅をするというオリジナルのストーリー仕立てで進んでいくようです。

 序曲が終わり、どこからともなく笛の音が聞こえてきたなと思いきや、大変陽気でおしゃべりが大好きなパパゲーノが登場しました。鳥を捕まえることが得意なパパゲーノが、上手に笛を吹けば、沢山の鳥たちがその音色に惹かれ、集まってきているであろう様が浮かびます。
 鳥たちは集まれど、パパゲーノが大好きなパパゲーナちゃんが、どこにも見当たりません。彼は会場内を見渡し、必死でパパゲーナちゃんを探します。

「こんにちは~!」と、どこからともなく声を掛けられたパパゲーノ。

「君は誰だい?」

「僕はね、ヨハンネス・クリュソストムス・ウォルフガングス・テオフィルス・モザルトだよ。」

 ……??? これには、パパゲーノだけではなく、会場内からもどよめきが起こりました。えっ? 名前は何て?

「僕はね、モーツァルトだよ。僕は音楽を作ることが、とっても得意なんだよ。」

 と、無事互いの自己紹介を終え、私が初めて“0歳からのオーケストラ”鑑賞時にもコーナーが設けられた、オーケストラを作り出している楽器紹介へと移りました。

 モーツァルトさんの指示の下、弦楽器・木管楽器・金管楽器・打楽器、それぞれの楽器の音色と共に紹介をしながら、コンサートはテンポ良く進行していきます。楽器紹介コーナーの中で、オーケストラ内では正直、あまり目立つことがない楽器“オーボエ”にスポットが当てられました。

 まずはオーボエの音出しです。……なるほど、期待を全くと言って良い程裏切らない、予想通りの音出しとなりました(笑)。おっと、ここからです。このオーボエ、コンサート開始時に大事な任務があることをご存知でしょうか? オーボエという楽器は演奏開始時の音合わせをリードしているのだそうです。ほとんどの楽器は、温度や湿度などの状況によってピッチが不安定になるもので、奏者がチューニングできるような仕組みを備えているのが普通ですが、オーボエは構造上リードの抜き差ししかピッチを調節できるところがないのだそうです。クラリネットで樽を抜くように、またヴァイオリンで弦の張り具合を変えるようには、音の高さを調整することができないのです。
 オーボエが音の高さを変えるには、リードの幅や長さで調節をするしか術がなく、演奏当日にその場でパッと変えるのはほぼ不可能。オーボエは音程を調整しにくい、そのため周りの楽器が合わせなければいけない、それで音合わせの基準になっているのだそうです。

 ……いやはや、0歳から参加可能なオーケストラのコンサートで、まさか豆知識が学べるとは……恐れ入りました。

 それぞれの楽器を紹介しながら、各々が一番活躍するであろう曲目を演奏して聞かせ、その楽器の特徴を伝えるという流石の手法に“プロの技”を感じました。

 さて、オーケストラだけでなく、観客をも巻き込んだパパゲーナちゃん探しは、一体どうなったのでしょうか。

「僕だけでは、なかなかパパゲーナちゃんを見つけられない……皆さんも一緒に、パパゲーナちゃんを呼んで下さいな! せーの!」

 の掛け声で、会場内には「パパゲーナちゃ~ん」の声が響き渡りました。

 その声を聞きつけたパパゲーナちゃんは、お着替えをして? いざステージへ。

 ……んっ? おやっ? 会場内は一転、苦笑いがこぼれました。

 それもその筈です。パパゲーナちゃんの正体それはあのモーツァルトさんだったのです。そうきましたか(笑)、これが私の率直な感想でしたが、無事にパパゲーナちゃんが見つかり、会場内の子ども達は大喜びです。

 最後はモーツァルト作曲のオペラ“魔笛”より『パ・パ・パの二重奏』が演奏されました。唇が痙攣してしまうのでは? と心配な程に、パパパパ・パパパパと、パパゲーノとパパゲーナのデュエットが披露され(“パ”を何度言ったことか……)、近くで鑑賞をしていた子供が、それを真似ながらしっかりリズムを取っていた姿を目にし、こういったコンサートの開催が、子どもたちに与える影響の大きさは、計り知れないのだろうなと実感しました。0歳からは、だいぶ遠のいている私ではありますが、優しい音楽に触れるいい機会になりました。

20240116131704-0001

[目次に戻る]