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2024年5月 No.351

三好耳鼻咽喉科クリニック ラジオレポート
ラジオ3443通信「バーナード・ショーの逸話」

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 耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって45年。今回は2014年8月にfmいずみで放送された内容を紹介します。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]

バーナード・ショーの逸話
An.
 この機会に、今までの話題周辺のエピソードについて、先生の話術のさえをお聞きしたい気がします。
Dr.
 私は、江澤さんのおねだりにすごく弱いものですから…。周辺の話題として、バーナード・ショーの「ピグマリオン」からいくつか。江澤さんは「マイ・フェア・レディ」については、よくご存じですよね?
An.
 ロンドンの街角で花売り娘をやっていた、オードリー・ヘップバーンが血のにじむような努力…。
Dr.
 血というよりは冷や汗のにじむ、でしたけれども(笑)。そうした努力の結果、見事貴婦人に変貌を遂げるんでした。でもね、江澤さん。ヘップバーンの演じるイライザは映画の中で、厳しい語学教育を施したヒギンズ教授に感謝の念を抱くようになるんです。
An.
 なんだか、うそみたい。あんなに厳しく、しごかれたのに…。
Dr.
 映画のストーリーにも実は2種類あって。一つはイライザが、感謝の念からやがて深い愛情を持つようになり、ヒギンズと結ばれるというハッピー・エンド。ヘップバーンですよね。
An.
 すてき! 江澤はヘップバーンに憧れちゃいます。
Dr.
 もう一つ、こちらが原作通りなんですけれども。イライザは語学教育の結果、下町の花売り娘から人間的にも成長を遂げ、その結末として堅苦しい言い方をすれば「自我に目覚め、自立していく一人前の女性」として、自分なりの選択をする。イライザはヒギンズを捨て、自分に求愛した若者に嫁ぐんです。
An.
 それもすてきなエンディングですねぇ。
Dr.
 バーナード・ショーは1856年にアイルランドに生まれ、産業革命直後の英国で若き日々を過ごします。この時代の英国は、社会全体が経済的に豊かになる途中経過の真っ最中で。
An.
 以前の放送で伺った記憶があります。英国の社会は貧富の差が拡大し、労働者階級の生活は経済的にとっても大変だったんですよね!
Dr.
 マルクスとエンゲルスがその実態を報告した論文を、バーナード・ショーの生まれる10年前に発表しています。
An.
 そんな不穏な雰囲気に覆われていた時代なんですね?
Dr.
「ピグマリオン」も時代の雰囲気を背景にしていましたし、ショーご本人もすごい皮肉屋だったものですから。そのショーの書いた戯曲がスムーズなハッピー・エンドになるわけが…(笑)。
An.
 あるわけはありませんよねぇ。それで、本来のストーリーでは自立したイライザと権威主義的なヒギンズ教授は…。
Dr.
 幸せに結ばれることはありませんでした。でも戯曲や映画のファンはバーナード・ショーほど、社会的な問題意識を抱いている人間ばかりではありません(笑)。戯曲や映画は、ファンの希望を反映せざるを得ませんので見終えた観客が「見て良かった」という満足感に浸れるように。
An.
 ハッピー・エンドが上演時のパターンになってしまったわけですね(笑)。お話をお聞きすると、バーナード・ショーって相当な皮肉屋さんだったみたいですね。その辺りについても、ぜひ教えていただきたいと思います。

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