3443通信 No.359
ラジオ3443通信「クリミア戦争とナイチンゲール」
ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
ここでは2012年9月11日OAされた、学校健診にまつわる話題をご紹介いたします。
85 クリミア戦争とナイチンゲール
An.
前回は、三好先生が町内の全児童生徒の耳鼻科学校健診を担当し、スギ花粉症などアレルギー疾患の疫学調査を、実施して来られた北海道白老町のお話と、その歴史的背景について伺いました。
先生はいつ頃から、この調査に携わっておられますか?
Dr.
1988年から開始していますので、もはや四半世紀になります。
An.
幕末からのご縁とはいえ、四半世紀は長いですよね!
Dr.
この白老健診をきっかけに、チベットを含む中国、そしてブラジルなど南半球でも調査を実施してますから、時間的にもですが範囲の広さも世界的と、言って良いでしょう。
はっきり申し上げて、これだけの規模の調査は、世界最大規模かもしれません(笑)。
An.
セーンセ、万里の長城みたいな話題になってきましたね(笑)。でもお話の流れは、最初の調査地である北海道白老町の、先生のご先祖との関連について、でしたね。
Dr.
そうそう、お話は仙台藩白老元陣屋つまり蝦夷地警備の、拠点ができたところまでしか、進んでいませんね。
An.
で、その歴史的な流れなんですけども、ね。ロシアの南下があって、日本では一番北にある蝦夷地が、まず話題になるんですけど。ロシアっていう国は、西洋と東洋に跨がる(またがる)広い国ですから、その問題は蝦夷地だけじゃなかった、のかしら?
Dr.
さすが1を聞いて10を知る江澤さん。
白老の元陣屋、つまり蝦夷地の3分の1を警備する拠点の基地という意味の言葉なんですけど。仙台藩がこの陣屋を建設した1856年は、クリミア戦争の終決した年なんですよ。
An.
クリミア戦争って、江澤も聞いたことがあります。たしかナイチンゲールが活躍し、赤十字も有名になった戦争、でしたよね。
Dr.
江澤さんはスゴイ!
それまで医師主体だった医療体制が、病人のケアなど看護師の業務が重要視されるようになった。ナイチンゲールの活躍が、その流れを作ったんですけどね、別の機会にお話ししましょう。
それはともかくクリミアというのは、ですね。江澤さん、世界地図を見てください。ヨーロッパとアフリカと、その間にある地中海と。
An.
先生、地中海を見つけました。
Dr.
地中海の真ん中に、長靴の形をしたイタリアが見えます。その南に、マルタがあって。そう言えば江澤さん、私は昔ダイビングをやっていたことがありまして。その免許のための講習を受けたのが、マルタって会社でした。
An.
まぁステキ! 先生は地中海まで、講習を受けに行って来たんですかぁ?
Dr.
いいえ、その会社は岩手県にありまして、ですね。親代々から伝わる古い家紋がですね、江澤さん。マルにたんぼの田の字を描くマークの会社でですね。
このマークをなんと読むか、江澤さん、お分かりですか?
An.
マルに田の字でしたら・・・・・・、マルタ。
えっ、まさか先生、先生のダイビングを教わった会社の名前じゃあ。
Dr.
そのまさか、だったんですよ、江澤さん。つまり私がダイビングを教わったのは、地中海のマルタではなくって。
An.
岩手県の、マルの田んぼの田の字の、ふるーい会社だったんですね!
Dr.
でもそれじゃあ、あまりに聞こえが悪いから。何も言わずに「マルタで習った」って、人には言うんですけどね(笑)。
An.
話を進めましょうよ、先生。
Dr.
でそのマルタを東に行くと、イオニア海があって、その北はジブリの『紅の豚』で有名なアドリア海。
アドリアって言葉を英語読みすると、江澤さん。何て読むでしょう?
An.
「エイドリアン」でしょうか・・・・・・。
Dr.
その通り、です。江澤さんは「ロッキー」というボクシングの映画を、見たことがありますか?
An.
シルヴェスター・スタローンの、あの名作ですね。知ってます、知ってます。
Dr.
『ロッキー』第1作のラスト・シーンで、ロッキーが試合で健闘し奥さんの名前を絶叫します。
An.
「エイドリアーン、エイドリアン!!」って、ですね。私、あれ見て泣いちゃいました。
Dr.
ほら、その「エイドリアン」がこのアドリア海に由来する名前なんですよ。
で、地中海をさらに東へ進むとギリシャがあって、エーゲ海に入ります。
An.
ギリシャ神話で有名な、美しい海ですよね。江澤は、憧れちゃいます。
Dr.
エーゲ海の北東の端(はじ)に、シュリーマンの発見したトロイの遺跡があります。
An.
トロイの木馬で有名な、幻の遺跡都市ですよね!
Dr.
このシュリーマンは幕末の日本を訪問し、その見聞記を書いています(図1)。
図1
An.
へぇー。そんなことがあったんですか?
Dr.
シュリーマンがトロイの遺跡を発掘したのは、1871年のことでした。
その少し前のことですが、1865年に彼はインド・中国・日本と航海し、サン・フランシスコへ向かいます。
An.
明治維新が1868年のことですから、シュリーマンの来日は、幕末のすごい風雲の時期だったことになりますね。
Dr.
仙台藩の白老元陣屋の置かれた時代と、年代的に重なってますもの、ね。
で、そのシュリーマンのトロイ遺跡から、ダーダネルス海峡を通ると、いよいよ黒海つまりクリミア戦争の舞台に近付きます。
An.
お話は核心に向かって一路前進していますが、先生、今回はお時間です。
Dr.
残念。お話は次回へと続く、ですね。
An.
本日も面白いお話、ありがとうございました。