3443通信 No.360
『オーケストラと遊んじゃおう!2024』鑑賞レポ
秘書課 菅野 瞳

図1
去る2024年4月7日(日)、普段の仙台フィルとは別の顔を拝むことが出来るイベント『0歳からのオーケストラ!オーケストラと遊んじゃおう!2024』(図1)を、童心に帰り鑑賞して来ました。
この特別演奏会は仙台フィルが長年続けて今年で20回目となる子ども向けイベントで、対象者をお子さんにしていることもあり、終始リラックスモードで開催されます。
初見の方は驚かれるかもしれませんが、この演奏会時には団員の方々が決まって色とりどり(生まれ月により着用カラーが違います。詳しくは3443通信 No.335へ)のTシャツに身を包み、楽器を奏でられます(図2)。
本日の特別演奏会もまた、この演奏会は「リハーサルなのでは?」と思わせるような大変和やかな雰囲気の中スタートをきりました。

図2
あの国民的アニメの声優が!?
今回のスペシャルゲストは、当初の予定では皆さんがご存知であろう国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』の声優をされている、TARAKOさんが出演予定でした。
TARAKOさんは、2003年、2005年にも同演奏会にゲスト出演されており、常連さん(笑)の方です。
2005年以来の久しぶりのご登場となるこの演奏会では、司会をこなし、会場の子どもたちと歌や手遊びを楽しむ筈でした。
ところが、演奏会があと1カ月に迫った矢先、TARAKOさんの訃報が発表されました。
以前、TARAKOさんが登壇されたステージでは、誰もが予期せぬタイミングで突然ちびまる子ちゃんの声になって驚かせていただいたり、また時には、七色の声で会場全体をハッピーな気持ちにしていただいたり、団員の方々は久方ぶりのTARAKOさんとの共演をとても楽しみにされていたのだそうです。
団員の方々だけでなく、TARAKOさんのファンの方は勿論、ちびまる子ちゃんのファンの方も皆が一様にTARAKOさんにお会い出来ることを楽しみにされていたと思います。
私も無論例外ではなく、演奏会のチケットを入手したその時から長年決まった時間にちびまる子ちゃんを見ていた世代としては「まる子の肉声を聞かせていただける~!」と、別の意味で心弾んでおりました。
TARAKOさんが残された同演奏会での功績は、共に演奏をされた団員の方々の胸にしっかり刻まれ、本日の日を迎えられていると思います。TARAKOさんの意を受け継ぎ、本日のスペシャルゲストという大役を担われたのは、NHK『おかあさんといっしょ』という長寿番組の第18代うたのおねえさんである、つのだりょうこさんです。
うたのおねえさんが登場!!
子どもさんとのコミュニケーションは「私にお任せあれ!」とばかりに、うたのおねえさんらしい美声と活舌の良さで、司会進行を務められました。
本日の演奏会は、例年通り午前の部・午後の部の2講演の開催となりますが、なんと両講演ともにチケットは完売しているそうで、仙台フィルが奏でる異色のコンサートへの関心の高さがうかがえます。
曲目『星条旗よ永遠なれ』
さぁ本日はまず、元気が湧いてくる私の大好きな曲、スーザ作曲『星条旗よ永遠なれ』、続いてロッシーニ作曲『ウィリアム・テル序曲より“スイス軍の行進”』からスタートです。
前者の曲は、私が勝手に抱くイメージになりますが、アメリカ人の愛国心の象徴ともいえる行進曲だなと思っています。軽快でリズミカルな音色に、気付けば無意識に手拍子をしていた私ですが、曲の要所要所で響くピッコロの甲高い音色と、重なるように響くトロンボーンの音色が、気持ちの良いハーモニーを醸し出していました。
曲目『ウィリアム・テル序曲より“スイス軍の行進”』
アメリカ軍の行進曲に続いては、同じ行進曲と言えどもカラーが異なる、スイス軍の行進曲になります。
これは私だけなのでしょうか? もう幾度となくこの曲を耳にしていますが、この曲が始まると、何故かタクトを振りたくなるという衝動にかられます(笑)。威勢の良さを表し、力強く刻まれるリズムがそう思わせるのか? 疼く右手を抑え、雄大に奏でられる名曲に合わせ、心の中でタクトを振りました。
誰もが耳にする『山の音楽家』
2曲続いた行進曲の後は、子どもたちがヒットするであろうこと間違いなしの曲『山の音楽家』の演奏です。
この曲は、老若男女が知っていて、誰しもが口ずさむことが出来るドイツ民謡です。「~してみましょう」という提案からの、「いかがです~」のお返事、そうですあの曲です。
歌詞の中に、山の音楽家である動物が入れ代わり立ち代わり登場することは覚えていますが、どのような動物だったかな? と記憶を辿りながら、楽しそうに歌詞を口ずさむお子さんたちを見ていると、なんとビックリ! 親御さんたちもまた、お子さんに負けず劣らず、軽快に歌詞を口ずさんでいました。
子育て真っ只中の親御さんは、流石に違いますね(笑)。そんな親御さんを尻目に、子育て卒業世代の私は、次々に登場する動物たちの演奏に、耳を傾けました。まず先陣を切り登場するのは、山に住む小リスさんです。小リスさんはヴァイオリンを奏で、次いでうさぎさんがフルートを、お馬さんがトランペットを、たぬきさんが太鼓を打ち、最後は足並み揃えた、山の音楽家(この会場では、仙台の音楽家?)の演奏となりました。
あまりの会場の一体感に、司会のつのだ氏からは「最高~っ!!」の雄叫びが発せられました。これぞまさしく、本日の演奏会のタイトルにもあるように、オーケストラと遊んじゃおう! の醍醐味だなと感じました。
涙を誘う愛される『にじ』
会場のお子さんたちや親御さんからは、満足げな表情が垣間見られ、深呼吸をして呼吸を整える姿も見受けられました。
そして、興奮を冷ます絶好のタイミングで演奏される次曲は、『にじ』という曲です。「にじがにじが~、空にかかって~、きっと明日はいい天気」というフレーズが脳裏に焼き付く名曲です。
この曲は、なんと30年も前に誕生して歌い継がれており、歌詞の一つ一つを見ていくと、自身の幼少期にはこんな感じがあったなぁと、いつでも子供の頃を思い出すことができ、静かに長く支持されています。
うたのおねえさんであるつのだ氏が歌い上げる『にじ』は、じんわりと胸に沁み、励ましを受けたような、そんな気分になれる人生の応援歌でした。つのだ氏の美声に聞き入り、観客の呼吸も落ち着きを取り戻したところで、またも次曲は、子どもたちが大喜びをするであろう“わらべうた”が3曲続きます。
曲目『げんこつやまのたぬきさん』
まずは『げんこつやまのたぬきさん』。この曲は、タイトルを耳にしただけで続きを歌いだしたくなる、そんな曲です。げんこつやまのたぬきさんをドラえもんに替え、ドラえもんに登場するキャラクターを次から次へと登場させ、見事な替え歌演奏になっていました。
曲目『とんとんとんとん ひげじいさん』
次いでの“わらべうた“は『とんとんとんとんひげじいさん』です。とんとんとんのリズムに合わせ、会場のお子さんたちは、元気に手あそびをします。手あそびをしながら体の部位を学ぶことができ、次のとんとん先はどこになるかな? と、子どもたちは集中して聞き耳を立てていました。
そんな必死さ満天の我が子を見守る親御さんの表情は、とても微笑ましく、私には癒し効果が絶大でした。
曲目『あたま かた ひざぽん』
2曲続いた“わらべうた”のラストを飾る曲目は『あたまかたひざぽん』です。かたこと語りになってしまいそうなタイトルではありますが、こちらの曲もまた成育に際し、五感を刺激する優れた曲になっています。頭・肩・膝、ポン! の音頭を口ずさみ、それぞれの部位に触れていくと、あら不思議! 知らぬ間に部位名とその箇所がインプットされているという、一石二鳥の手あそび歌です。
淡々とリズムを刻むように3曲の演奏が終わり、いよいよ本日の演奏会最後の曲となります。
最後の曲目『くるみ割り人形』
本日のトリを飾る曲目は、チャイコフスキー作曲の『くるみ割り人形』です。手あそび歌を楽しむお子さんには、ちょっと難しい曲だったかもしれませんが、チャイコフスキーが手掛けた、三大バレエ組曲の一つに数えられています(余談になりますが、他2曲は、こちらも皆さんご存知の白鳥の湖・眠れる森の美女です)。
私が普段耳にするよりも、一段階? いや二段階? ほどスローテンポでの演奏になっており、相変わらず滑らかで優美な旋律が耳に残り易く、お子さん向けアレンジでの演奏を聞かせていただきました。
大盛況のうちに幕を閉じた演奏会は、近い将来、本日来場のお子さんの中から、仙フィルの一員として、同ステージで一緒に演奏するお子さんが出てくるのでは?と、そんな思いを抱かせる、子どもも大人も一緒に楽しめる、素敵な素敵なコンサートでした。