3443通信 No.365
耳のお話
聴力検査とは
はじめに
当院で実施している様々な検査の内、耳の聞こえを測るためのもっとも代表的な検査が聴力検査です。
ここでは、受診する患者さん向けに配布している解説資料をご紹介いたします。
●耳の聞こえを測る検査
耳がちゃんと聞こえているかどうかを測定する検査を標準純音聴力検査と言います。
この検査にはヘッドフォンを耳にかけて普通に音(音波)を聞かせる気導聴力検査(図1)と、耳の後ろの骨にレシーバーをあてがって音を聞かせる骨導聴力検査(図2)とがあります。
こうして2種類の検査を行うのは、それによって耳の中の病変部位が推定できるからなのです。

●耳の構造
耳の中は、外耳・中耳・内耳の3つの部分から出来ています(図3)。
これらのうち内耳の有毛細胞、これは図3の蝸牛(カタツムリ管)の中にありますが、この奥は音を感じて聴神経へと伝える部分で、外耳と中耳そして内耳のリンパ液は有毛細胞に振動として音波を伝える部分です。

このため内耳の奥から先の神経に原因のある難聴つまり聞こえの悪さを感音(性)難聴。外耳から内耳リンパ液にかけての鼓膜から中耳に原因のある難聴を伝音(性)難聴と称します。
ところで、気導聴力検査では音波は外耳・中耳・内耳と伝わり(図3・A音)、骨導聴力検査では音波は内耳へ直接入ります(図3・B音)。このため内耳に原因のある感音難聴では、気導骨導ともに検査成績が悪く、主として外耳から中耳に原因のある伝音難聴では気導聴力が悪いのに骨導検査の成績が良いという結果を示します。
これを表示するのにオージオグラム(聴力検査表もしくは聴力図)(図4・5)という方法を用います。


●標準純音聴力検査の結果の読み方
この表(オージオグラム)では、聞こえの悪さの程度とその周波数、そして難聴の種類を読み取ることができます。ここでは右の気導聴力(図3・A音)を“○”で示して実線で結び、右の骨導聴力(図3・B音)を“ [ ”で示します。
左は気導聴力を“×”とそれを結ぶ点線、骨導聴力を“ ] ”で示します。この表(オージオグラム)では右側が高い周波数の値を示しており、○や×もしくは括弧が下に位置するほど大きな音でなければ聞こえない。つまり聞こえが良くないということを意味しています(〇×が上に位置すると、聞こえが良いということです)。
この○も×も20歳(ハタチ)までは
で示す20dB(デシベル)という音量ライン(音の大きさ)の上におさまっています。
しかし20歳を過ぎると、耳も他の体の部分と同じように使われていわば部品がすり減ってくるものですから、性能が落ちて、聞こえの検査結果としては○や×が20(dB)の音量ラインよりも下にはみ出す、つまり聞こえが悪いことになります。
例えば図4は右側伝音難聴の例の右側のみを表示したもので、骨導聴力(神経の状況)が良いのに気導聴力(主に中耳の状況)が悪いことが理解できます。
また、図5は左側感音難聴で気導骨導ともに検査成績(つまり中耳よりも神経の状況)の良くないことが見て取れます。
なお通常オージオグラムは、この両側の検査結果をひとつの表(図6)として示します。

●よく働いてくれたことに感謝を……
耳の聞こえは、体の他の部分と同じように長いこと使ったために性能が落ちるので、「何十年も耳にお世話になった、よく人の話を聞いて来た」という耳の神経の疲れが、検査結果に表れている訳です。
その意味では、耳が聞こえなくなったことを嘆くよりも、長いこと良く働いてくれたな、と耳に感謝してやって頂けると、耳も喜ぶと思うのですが、どうでしょうか。
耳の聞こえの悪化はそれまで無事に生きて来たことの証明でもありますし……。
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