3443通信 No.365
大川”竹あかり”制作ワークショップ参加レポ
秘書課 菅野 瞳

図1
ワークショップに参加!
去る2025年3月2日(日)、初開催から本年で4回目となる『大川竹あかり』の制作ワークショップ(図1)に参加して来ました。
あれ? 大川竹あかり献灯式は、東日本大震災が発生した3月11日では? と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
それもその筈。大川竹あかりの行事には第2回目の開催から(一昨年・昨年)足を運んでいますが、なんと今年は行事の目玉となる竹灯篭作りのワークショップに参加して来ました。
いざ、石巻の大川小学校へ
仙台から車を走らせること1時間強。石巻市震災遺構大川小学校への入り口である河北ICを降り、1年ぶりとなる北上川の景色を横目に作業場を目指します。
大川竹あかりワークショップは、午前と午後の二部制になっており、事前参加登録が要らないだけでなく短時間の参加でも大歓迎とのことで、誰もが気軽に参加することが出来ます。
10分前行動を心がけている私は、石巻市針岡にある作業場にしっかりと10分前到着。受付を済ませ、新調したMY軍手を装着し、準備完了です。
初参加のド素人である私が、何から手を付けて良いものかキョロキョロしていると、作業場では既に慣れた手つきで作業に取り組む方の姿が見受けられました(図2)。

図2 すでに多くの方が作業に没頭しています
皆さんに後れをとり、足手まといにならぬよう、すぐにでも手を付けられる仕事はないものかと目を細めている私に、救いの一声が……。
「是非こちらをお願いします!」とのお声を掛けて頂き、私は二つ返事でお引き受けしました。
快諾をした私が任されたお仕事……何とそれは、竹あかり献灯式のシンボルとなる“大川竹あかり”という文字が刻まれた竹灯篭の穴あけ作業でした。
ド緊張のシンボル作成
張り切って腕まくりをしてはみたものの……
「えっ!?」
手渡されたものは、見た目以上にずっしりと重い電動工具です。私のみなぎるやる気とは裏腹に、私の右に出る不器用さんはいないのでは? と言われている私に、この工具が扱えるものか……? と、ちょっと雲行きが怪しく感じたのは、言うまでもありません(笑)。
私の人生史上、間違いなく初体験となる電動工具を使っての作業、ということだけでもプレッシャーですが、シンボルの竹灯篭の穴あけ作業をこの私が……(泣)それを上回る重圧です(図3)。

図3 震える手(振動)で丁寧に彫っていきます
ちょっと凍りついてしまった私ではありますが、何事もチャレンジ精神で生き延び、頭で考える前に行動! が私のモットーですので、早速お手本を見せて頂きおっかなびっくり作業に取り掛かります。
安易に予想はついていましたが、電動工具の扱い方が分からない私は工具への力加減の強弱に四苦八苦。恐る恐る力を込めては慌てて脱力……これを何度か繰り返し、ようやく勝手が分かってきました。
一彫入魂(私が作った四字熟語です)、ふと我にかえった時には1秒間に3カ所も穴が開けれるのでは? という程の早業(勿論、自称です)にまで上達し「上手いもんだね~」と、お褒めの言葉を頂きました。
一彫一彫に想いを込め作業を進めていくと、まだ竹にデザイン紙が貼られたままではありますが、“大川竹あかり”の彫跡文字が鮮やかに確認出来ました(図4)。

図4 見事に彫り抜きました!
「うわっ、これを見ただけでも泣きそうだ! 頑張った甲斐があった!」と自画自賛が甚だしく、お恥ずかしい限りだとは思いつつも、その一瞬で点灯時の映像が脳裏によぎり一人感動を覚えました。
本年の大川竹あかり行事の作業は、1月26日(日)の竹の切り出し作業からスタートしました。亡くなられた児童の親御さんらが主体となり、50本程の竹が用意され、2月2日(日)から全5回にわたり行われた制作作業は、好天に恵まれたことと県内外から大勢のボランティアの方が来て下さったことなどから順調に作業が進み、3月11日(月)に行われる大川竹あかり献灯式で光を放つ108本の竹灯篭が、無事完成しました(図5、6)。

図5 複雑な文様が彫られた竹

図6 一つ一つに太さ毎にナンバリングされたドリル
コンセプトは“わ”
本年で4回目となる大川竹あかり献灯式ですが、竹灯篭の配置は毎年違い本年の配置は“わ(和→平和を願う。輪→皆で輪になる)”を基に構成されていて、我が子を包み込むような抱きしめているかのような、そんなデザインになるのだそうです。
私が、このワークショップに参加させて頂いたのは、僅か一度きりでしたが、ご遺族の想いを噛みしめながら、大好きな小学校で命を落とすことになってしまったお子さんたちに心を寄せ、一彫り一彫りの制作作業に携わることが出来たことは、感慨無量でした。
不本意ながら本年は大川竹あかり献灯式への参加は叶いませんが、鎮魂の祈りが込められた竹あかりの穏やかで温かい光は、会場に集った方々の心に触れ、優しく包み込んだことと思います。
私は、東日本大震災の話題に触れる度に、都度事の成り行きを注視していた大川小学校津波裁判の話、例年足を運ばせて頂いている大川竹あかり献灯式の話をします。
命の大切さ、そして災害への備えや防災の必需性を未来に伝え続ける為です。
私のこの想いが通じたからでしょうか(笑)、新年度の宮城県の中学校で使用される美術の資料集(副読本)に、“大川竹あかり”が掲載されることになったそうです。そんな心温まるニュースが耳に入り、献灯式当日に参加が出来ない無念さが残っていた私の胸に、ポッと灯りが燈りました。
是非来年もまたこの場所で、微力ながらも精一杯、灯りを燈すお手伝いに、足を運びたいと思います。
(タイトル下の図1は、私が作成したシンボルがテレビ放映されたものです!)