3443通信 No.366
三好耳鼻咽喉科クリニック ラジオレポート
ラジオ3443通信「中国でのスギ花粉症調査」

耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって45年。今回は2015年4月にfmいずみで放送された内容を紹介します。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]
中国でのスギ花粉症調査
An.
前回は、スギ花粉症が中国にも存在するというお話でした。アレルギー反応の原因物質は医学用語で「抗原」と呼ぶんでしたね、先生?
Dr.
いきなり正解です。今日も絶好調な江澤さん(笑)!
An.
スギ花粉症の抗原は「日本スギ」花粉、その名前から日本特有と勘違いされやすかった。でも、先生たちの中国の調査でもスギ花粉のアレルギー検査で「プラス」となる現地の学生が少なくなかった。
Dr.
「抗原抗体反応」といって、スギ花粉のような抗原が存在するから抗体が作られ「アレルギー反応」になるんです。
An.
アレルギー反応が発生している事実は、抗原がその場に存在することの証明…ということですね?
Dr.
さすがは1を聞いて10を知る江澤さん。全くその通り(笑)。つまり「中国にもスギが生育している」と断言して間違いありません。
An.
日本特有といわれてきたスギ花粉症は中国にも見られるんですね?
Dr.
日本スギと中国スギが、ほぼ同一であることについては、この番組の第16回で話題にしました。
An.
スギそのものは、200万年前の第三紀鮮新世のときに地上に出現したのでしたね。先生?
Dr.
日本列島と中国を含む大陸は、氷河期の終了する1万年前まで陸続きでした。氷河期が終わり、溶けた氷河で水面が上昇すると…。
An.
あら不思議(笑)、日本列島と大陸の間に日本海ができます。
Dr.
列島と大陸の間に連続していたスギの植生は?
An.
日本海で離れ離れに(笑)。三好先生が日本と中国のスギのサンプルをDNA分析したところ。
Dr.
両者は97%同じものであることが、実証されたんです。
An.
サンプルのDNA分析とは別に、先生は日本人と中国人の被験者に、中国スギと日本スギの花粉のアレルギー反応を確認しましたね。中国人被験者の鼻粘膜に日本スギのサンプルを挿入したら、花粉症発作が発生した…とか(笑)。
Dr.
その逆も(笑)。
An.
先生は中国の雲南省で採取したスギ花粉を、北海道在住のスギ花粉症の内科医の鼻粘膜に挿入した!
Dr.
被験者にはひどくつらい思いをさせてしまって…。〝人体実験〞の1種ですから(笑)。
An.
写真で見ましたが、あの雲南省のスギは樹齢800年、直径2メートルの大木。幹に「元の時代のスギ」と記されていた覚えがあります。
Dr.
元は当時大国で、この番組の第140回で中国製の陶磁器がトルコのコバルトブルーで染色されている歴史を話題にしました。
An.
こうして伺ってきますと、別々のようで実は関連のある話題だと理解できます(笑)。
Dr.
お話は戻りますけれど、スギ花粉症の抗原であるスギ花粉は「日本スギ」、つまり「クリプトメリア・ジャポニカ」と称されていた。
An.
中国スギは違うんでしょうか?
Dr.
中国でスギを研究し、現地のスギに「クリプトメリア・フォルトネイ」という学名を付けたのは番組の第126回でも触れた「プラントハンター」で植物学者のロバート・フォーチュンです。
An.
次回のお話が楽しみです。