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3443通信 No.366

 

仙台フィル&アキラさんSPコンサート2 in 2024
鑑賞レポ

秘書課 菅野 瞳 

図01
図1


 去る2024年8月3日(土)、本年で2度目の開催となる『仙台フィルハーモニー管弦楽団withアキラさんスペシャルコンサート』を鑑賞して来ました。
 指揮者であり演奏家であり天才編曲者である宮川彬良氏が手掛ける、満席恒例・満席御礼のコンサートです。
 ある日、「菅野君、君が一番楽しみにしているイベントの案内ですよ」と、院長から手渡された1枚のパンフレット(図1)。

 もしやあの……?と、思い浮かんだお顔がありましたが、やはりそこにはアキラさんのお顔がありました。
 彰さん(院長)からアキラさんのご案内を頂いた次第です(笑)。

 会場であるイズミティ21(図2)に到着し、まずは夏真っ盛りの暑さに負けず劣らずの会場の熱気を感じます。渡されたパンフレットに目を通し、早速本日のセットリストを確認します。

図02
 図2 超満員のイズミティ21


 やはりオープニングは、アキラさんの十八番ともいえる『クインテット』、そして今回の目玉はご存知の方も多いかと思いますが、本年で誕生(放映開始)50周年となる『宇宙戦艦ヤマト』ではないでしょうか。
 アキラさんのお父様である宮川泰氏が作曲をされ、大事に大事に受け継いでこられた、皆に愛され続けるヤマトへの想いは一塩だと思います。私の大好きなショパンの名曲に始まり、童謡そしてラストは宇宙戦艦ヤマトというラインナップに、私の知的好奇心がくすぐられました。

 ――パチパチパチパチ!!!!

 盛大な拍手に出迎えられ、本日の主役である宮川彬良氏がステージ上に姿を現しました。

「皆さん、本日は遠路遥々、ようこそお越し下さいました。あっ、遠い所遥々出向いたのは、私の方ですね(笑)。」

 これぞ、というアキラさんの第一声、相変わらずのアキラ節です。これが聞きたかったんです! 掴みはOKとばかり、アキラさんの軽快な口調で曲紹介が始まりました。

1.スペシャル na ショパン
 アキラさんに選ばれしトップバッターを飾る曲は、私の初恋? ではありませんが、幼少時から大好きで、ポーランドにある生家にまで足を運んだ作曲家フレデリック・ショパンが作曲の3曲になります。

「ショパンの曲をオーケストラで聞けるなんて!?」と、純粋にワクワクしていた私ではありますが、ふと一抹の不安がよぎりました。

 私の知り得るフレデリック・ショッパンは、ピアノ一筋。言い方を変えるならば、ピアノ一代の為の作曲をされていた方です。ショパンの名作に天才作曲家であるアキラさんが手を加え、どのような曲に生まれ変わるのか興味津々です。
 アキラさん曰く、ショパンの曲と言うのは、本当に非の打ち所がない構成の曲ばかりですが、私の耳には貴方が作った曲はこう聞こえるのですよ! をコンセプトに、オーケストラとピアノのコンツェルトに編曲したのだそうです。

 ショパンシリーズを飾る最初の曲は、誰しもが何度となく耳にしているであろう『英雄ポロネーズ』です。
 この曲の特徴と言えばやはり独特の三拍子。何とこれがオーケストラとのコラボ演奏となると、三拍子の力強さや迫力が段違いになります。
 胸を張り、堂々たる出で立ちで、勇ましく行進する貴族の姿が目に浮かぶようでした。

 さてお次は、私がショパンの楽曲の中で断トツで一番好きな曲です。これが練習曲と言うのですから驚きですが、通称『別れの曲』です。
 この曲のテンポ指定は、“ゆっくりと、しかし過度にならずに”です。
 私は、自らこの曲を演奏することもあり、耳にタコという程に慣れ親しんでいますが、今まで耳にしたどの演奏よりも群を抜いてスローテンポでの演奏で、たっぷりの抑揚を味わえる演奏と言われればそれはそれで納得なのですが、私は正直、ショパンが指定をした“ゆっくりだけれど、過度にならずに”に、もう少し重点を置いて頂きたかったなと感じました。
 しかしながら、ピアノ練習曲である『別れの曲』が、オーケストラとのコラボ曲に生まれ変わった演奏は一味違った新鮮さを感じました。

 そしてショパンのプログラムのラストを飾るのは、リズミカルで美しいスケールとトリオの甘いメロディが特徴的な曲『子犬のワルツ』です。
 3曲の中で、ピアノ独奏時の演奏と一番相違があったのではないかと思います。この曲は“子犬が自分の尻尾を追いながらぐるぐる回る習慣“を表した曲なのですが、オーケストラの演奏では、面白い程にスケールが大きく雄大になってしまい、子犬は見当たりませんでした(笑)。
 もっと言ってしまえば、ショパンが大好きな私が、何度となく聴いていても決して色褪せることのないメロディですが、ピアノ独奏時とは思っていた以上に違う演奏に、ショパンも影を潜めてしまったような、そんな気がしました。

2.オーケストラ de 日本のメロディ
 さてお次は気分を変え、日本のメロディ(童謡)の演奏に移ります。
 まずは、日本の童謡と言えば……の作詞作曲家であるお二人がタッグを組まれた作品。北原白秋作詞、山田耕作作曲『からたちの花』続けて『砂山』の演奏です。
 『からたちの花』は、仙台フィルが誇るトランペットソリストの演奏が光り、続いて演奏された砂山は、ハープの音色がどこまでも美しい旋律を奏でていました。
 ふと目を瞑れば、自分の懐かしの故郷が思い出されるような、ほんわか温かい演奏でした。

 さて、日本のメロディの章でラストを飾るのは……あのアキラさんが、ちょっと照れ隠しをしながら曲紹介をしていた『ゲバゲバ90分』です。
「んっ?」と、このタイトルを見た時には「アニメだろうか? 何のことやら?」と思った私ですが、この曲は宇宙戦艦ヤマトと同様にアキラさんのお父様が作曲を手掛けられました。
「日本発祥にもこんなおしゃれなメロディがあるのですよ!」と、皆さんにお届けしたいとの思いで、選曲されたのだそうです。

「ターラララ・ターラララ……♪」 https://www.youtube.com/watch?v=fH1ARNTWXN4 (ユーチューブより)

 曲が始まるや否や「うわ~っ、これですか、この曲でしたか!」と納得し、うんうんと首を縦に振っている方がちらほら。
 そして曲が進むにつれ、リズミカルな手拍子が始まり、演奏は尚一層の盛り上がりを見せ、ステージと客席が1つになる何とも気持ちの良い一体感に身震いを覚えました。

オーケストラ to 世界旅行
 興奮冷め止まぬまま暫しの休憩の後、後半プログラムは長年歌い続けられている名曲『いい日旅立ち』の演奏からスタートです。
 この曲は、ご存知ない方はいないのでは? という大変メジャーな曲ですが、アキラさんはこの曲をアレンジして世界旅行をしてくれるのだそうです。

 いい日旅立ちの世界旅行、いざ情熱の国スペインからのスタートです。

 街歩きの楽しさを表すような軽快なリズムで奏でられるメロディ。スペインから、世界遺産大国のイタリア、そして中盤はショパンの生まれ故郷であるポーランドへ。
 音楽の都ウィーンを経由して最後はハンガリーへ。思わず、世界地図を眺めたくなりました。
 私はこの“欧州紀行”の中で、特にポーランドが印象に残りました。いい日旅立ちwithショパンの名曲という、アキラさんならではのアレンジには脱帽でした。是非ともショパンに聞いて頂きたかったなと思ったのは、恐らく私だけではないでしょう。

 さてお次は、欧州を飛び出し、アメリカ大陸へと向かいます。

 旅は南米へと向かい、最後はなんと大都市ニューヨークへ。
 “アメリカ大陸紀行”は欧州紀行のメロディとは打って変わって打楽器が大活躍する、ラテン音楽のようなテンポでの演奏でした。
 こうして欧州からアメリカ大陸まで無事世界巡りを遂げましたが、これはもうアキラさんの天才ぶりが大いに発揮されたプログラムだなと感じました。

「あら? お次は、世界を飛び出し、宇宙へ行ってしまいましょう!」

 何やらアキラさんが、とんでもないことを仰っています。
 それもその筈。クライマックスへ向けての序曲は坂本九さんが歌われた名曲『見上げてごらん夜の星を』のアレンジ曲『星に願いを、宙(そら)にロマンを』です。

 皆さんを宇宙へお連れしましょう、というアキラさんの言葉にも痺れましたが、仙台フィルが奏でる宙(そら)の星は、煌々と輝き、ロマンに満ち溢れる宇宙が見えました。

 鳴り止まない拍手・拍手・また拍手。終わりの見えない拍手に、流石のアキラさんも、本日初めてのとまどい顔をされていました。

 ふぅ~と一呼吸をおき、いよいよ本日の大トリを飾る曲は、そう『宇宙戦艦ヤマト』です。早く聴きたいような、聴きたくないような……この曲が演奏されるということは本日の演奏会の終わりが見えてしまいます。
 アキラさんの指揮も熱を帯び、宇宙戦艦ヤマトの力強い演奏が始まりました。

 お恥ずかしい話になりますが、私は宇宙戦艦ヤマトの詳細を知りません。そんな私なので、宇宙戦艦ヤマトと言えばもうこの逞しいテーマ曲一択を思い浮かべます。落ち込んでいる時や、元気がない時に聞くこの曲は、個々が持つエネルギータンクを一瞬にしてフルにしてくれるような、みなぎるパワーを感じました。
 音楽は人を元気にするとは言ったものですが、まさしく、その言葉をうなずける演奏でした。

 会場は最高潮の盛り上がりとなり、拍手喝采に混じ「ブラボー!!」のコール。その声に後押しされるかたちで、アキラさん最大のヒット曲『マツケンサンバⅡ』が演奏されます。
 待ってましたとばかり、アキラさんと言えば……のこの演奏には、曲の鳴り出しから練習をしたかのような、まるでメトロノームを思わせる手拍子が起こり、サンバのリズムを刻んでいました。

 なんと、ステージ上をよーく見てみると、観客だけではなく仙フィル団員の方もノリノリでステップを刻んでいます(笑)。
 素晴らしい! という一言では言い表せない、興奮と感動に包まれた演奏会はブラボーの最上級・ブラビッシモでした。これだけの盛り上がりをみせる、仙台フィルとアキラさんのコラボ演奏会は、私の中で密かに夏の風物詩になっています。是非、

 第3弾となるコラボ演奏会の開催を、願って止みません。

図03
 宮川 彬良さんのプロフィール


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