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3443通信 No.368

 

めまいには様々な病態があり、その多くは耳に原因があると言われています。ですが、なかには脳などの命の危険が伴う中枢性めまいも存在します。 ここでは、過去に学会で発表しためまいに関する症例についてご紹介します。

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学会発表「椎骨動脈の奇形による垂直性眼振の1症例」

期 日:2008年10月30日
学会名:第67回 日本めまい平衡医学会
会 場:秋田ビューホテル

三好 彰(三好耳鼻咽喉科クリニック)
中山 明峰(名古屋市立大学)
石川 和夫(秋田大学)
鈴木 淳一(日本ヒアリング・インターナショナル)


症 例
症 例:K.S 65歳 女性
現病歴:左側耳鳴・難聴を訴えて、2002年7月30日に三好耳鼻咽喉科クリニックを受診(図1、2)。めまいの訴えはなし。
既往歴:1995年8月2日より1週間、めまい発作にて東北大学附属病院に入院。

図01
 図1

図02
 図2


所 見
 鼓膜所見に異常なし。赤外線カメラ下に左方へ向かう水平性眼振を観察。指標追跡検査は異状なし(図3、4)。

図03 図04
 図3            図4


経 過
 当初は内耳性の耳鳴・めまいと考えて、ATP静注と鎮暈剤にて治療開始。
 2002年末から2003年始めにかけて、下眼瞼向き眼振が出現。指標追跡検査も所見出現(図5)。

図05
 図5


 アーノルド・キアリを疑い、徳洲会病院放射線科にて脳幹を中心に画像診断を行ったが、異常なしとの回答(図6、7)。

図06
 図6

図07
 図7


 国立仙台病院(当時)脳外科の、鈴木晋介医師を紹介。
 頸椎の変形と右側椎骨動脈奇形が発見されて、原因が判明(図8~12)。
 後日談だが、原因の判明後本人がナースに「そう言えば縦に揺れるような気がする」と告白し、自覚皆無のアーノルド・キアリとは異なることが、症状からも理解できた。

図08
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図09
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図10
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図11
 図11

図12
 図12


まとめ
1.椎骨動脈の奇形と年齢的な頚椎変形に起因する、下眼瞼向き眼振(垂直性眼振)の1症例を報告した。
2.特殊な病態であり、原因の追究は困難であったが、正確な神経耳科学的知識に基づいた所見の把握から、画像診断に結びつけることの必要性を強調せねばならない。
3.反省を込めて、自覚症状をより正確に把握しておく必要性をも、痛感した。

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