3443通信 No.370
陸上自衛隊東北方面隊
創隊64周年記念コンサート鑑賞レポ
秘書課 菅野 瞳

図1
はじめに
去る2024年9月21日(土)、本年で創隊64周年を迎えた陸上自衛隊東北方面隊記念コンサート(図1)に行って来ました。
本年のテーマは『前進~踏み出そう、この一歩を。~』です。
本日のプログラムは、前半後半と合わせて10曲編成になっており、勇ましい行進曲から、力強い太鼓を奏でる曲、そして海外の民謡まで盛沢山です。
新型コロナと共に生まれた曲
まずは東北方面隊の伴奏に合わせた国歌斉唱の後、オープニングを飾るに相応しい曲『プロローグ・ワン』の演奏です。この曲は2021年、新型コロナウィルス感染症によるパンデミックの時に作曲されました。
普段の何気ない行動や生活が制限されるだけでなく、人々の間で受け継がれてきた伝統や文化が断たれそうになるという、全く想像もできなかった社会が現実に広がっていました。
とはいえ、ピンチの後にはチャンスありとは言ったもので、減退や停滞の次にあるのは、常に“前進”です。そんな時だからこそ、新たな文化や発想を生み出し、厳しい世界を助け合いながら生き抜く仲間を得ることで、一人ひとりが一層力強いスタートをきるチャンスではないか……そんな作曲者の世界へ対する様々な想いと、未来の希望が託されている曲なのだそうです。
ファンファーレを彷彿させる足並み揃ったトランペットの音色から始まり、中盤には陸上自衛隊唯一のフラッグ隊が華麗に舞い、明るい未来を照らしだしているような、そんな演奏でした。
OP曲『プロローグ・ワン』(東北方面隊広報チャンネル)
観閲式のテーマ曲
次いでの演奏曲は、3曲のメドレーで構成されている『伝統~平和のために~』です。んっ? この曲は聞き覚えがあるようなと感じたのは、私の勘違いではありませんでした。
『陸軍分裂行進曲』は、陸上自衛隊の観閲式において使用されるとてもメジャーな曲なのだそうです。毎年のことですが、創隊記念コンサートの翌日には、仙台市宮城野区苦竹にある仙台駐屯地にて記念式典が行われます。
その際の観閲式は、隊員の方々の日々の鍛錬の成果を披露する場になっており、行進曲が響き渡る中、隊員の勇ましい姿を拝見することが出来ます。
続いての演奏は、車両行進曲『陽光を背に』です。
……んっ?これも前曲に続いて聞き馴染みのある曲です。
この曲は車両部隊観閲行進時に演奏される曲ですが、東北方面音楽隊コントラバス奏者である岩渕陽介さんが作曲をされた曲なのだそうです。曲の中盤には『君が代』を基にしたと言われる一節があり、耳を凝らして聞き入りました。
本日のコンサートでは、隊員の方が、ステージの隅から隅までを大胆に使い、パレードを思わせるような圧巻のマーチング演奏を披露され、行進曲に相応しく、逞しさや力強さが伝わりました。
勇者への手向けに
メドレーの最後の曲は『勇者たちの夢』です。
この曲は、愛国心に溢れ日夜鍛錬に励む隊員に向け、厳しい訓練での疲れを取り、明日からの活力と勇気を培うため深い眠りへと誘うという曲想です。
曲の始まりは、甲高いトランペットのソロ演奏から始まるため、曲想に反しているのでは?という違和感を覚えましたが、これはとんでもない勘違いでした。気を引き締め、日夜鍛錬に励んだ隊員に向けて、今日も君たちはよくやった!頑張ったよ!と語りかけるような、そんな優しいメロディが奏でられました。
目を瞑って聞き入っていると、私の方が危うく眠りに誘われそうなそんな、心に沁みる演奏でした。
3曲メドレー『陸軍分行進曲』『陽光を背に』『勇者たちの夢』
大人気アニメ・ゲーム作品から!
そして次の演奏曲は、1996年にゲームとして発売され、瞬く間に人気となりテレビアニメ化・舞台化した大人気作品“サクラ大戦”の中から、パリを舞台にした3作目の主題歌『御旗のもとに』。そして1、2作目の主題歌である『檄!帝国華撃団』です。このアニメを知らない私は、まずはアニメの概要を知らねばなりません。
物語の舞台は大正時代。時代をときめく素敵なレディが架空の日本都市“帝都・東京”の平和を守る為、帝都殲滅を狙う敵性勢力を相手にバチバチと戦うお話で、仲間との絆を深めながら、自らの使命を果たす為に奮闘するというストーリーだそうです。
バチバチの戦闘モード曲なのかと思えば、曲の出だしは管楽器や木管楽器の優しい音色に包まれ、意表をつかれます。
帝都・東京の安寧はここまで……いざ戦闘!と言わんばかりに、優しかった音色が一変しました。
そして登場したのは、サクラ大戦の戦士“真宮寺サクラ”になりきった東北方面隊の女性隊員です。
「私たち、日本の国土を守ります。たとえそれが困難な任務でも、私たちは一歩も引きません。それが、第9師団なのです!!」
うわ~っ、舞台上で述べた隊員のこの言葉に武者震いを覚えました。大勢の観客を前に、緊張もあり、歌声が時折震えていましたが、ステップでリズムを刻みながら、演奏する隊員を率いて堂々と歌い上げていました。
アニメ・ゲームの大人気曲『御旗のもとに』『激!帝国歌劇団』
もはや定番のこの曲!
次いでの演奏曲は、何度聞いても惚れ惚れしてしまう、東北方面隊・八戸陣太鼓の隊員が奏でる『大地の響き』です。
これでもか!と言わんばかりの東北の大地の力強さが、一打一打から感じ取れます。毎年記念コンサートに足を運ぶ私ですが、この曲を一番待っている?と言っても過言ではありません。
『大地の響き』(以下の曲とのメドレー)
戦艦大和に想いを馳せて
八戸陣太鼓隊に続いては、船岡さくら太鼓の隊員が奏でる『大和ふたたび』です。まるで、アニメ“ドラゴンボール”の主人公である孫悟空を思わせるような真っ赤な衣装を纏い、逞しい二の腕で堂々たる演奏です。
この曲は、1945年4月に米軍の猛攻を受け、沖縄の海に沈没した戦艦“大和”が、大海原を激進する際に飛び交う数々の大砲の音やその勇ましい勇姿を、太鼓の音色で表現した曲なのだそうです。
阿吽の呼吸、そして音色の強弱やリズムの緩急で惹きつける、見事な演奏でした。
そして太鼓演奏の最後を飾る曲は、両太鼓チームの隊員が息を併せて奏でる曲『挑戦』です。タイトルにもあるように、どんな困難にあっても、そがれることのない強い気持ち、前へ歩みを続ける陸上自衛隊員を、力強い太鼓の音で表現する曲なのだそうです。一球入魂という四字熟語がありますが、これはまさに一打入魂の全身全霊を注いだ演奏でした。
映画でも良く知られた難関曲
会場を飲み込んだ圧巻の太鼓演奏の後は、雰囲気をガラリと変え、誰もが知るミュージカル作品の曲『レ・ミゼラブル』です。
不朽の名作と言われ、今なお世界各地で上演されています。音楽隊の演奏に合わせたフラッグ隊員が艶やかに舞い、フラッグは隊員の身体の一部であるかのように自由自在にたなびき、堂々たる演技を披露されました。
続いては、レ・ミゼラブルの舞台であるフランスからひとっ飛びし、演奏の舞台はアフリカへ。
そして、クライマックに向けての最後の2曲は、アイルランド民謡・舞曲の演奏になります。『アフリカン・シンフォニー』は、元々はディスコ曲であったものを日本では吹奏楽用にアレンジして演奏されています。
その代表的なものは、夏の甲子園球場で演奏される応援曲です。
本日の演奏には、また新たな編曲が加えられており、応援歌らしい一面を残しながらも激しいだけではない、映画音楽にでも使われていそうな壮大なサウンドでの演奏を聴かせて頂きました。
映画で良く知られた『レ・ミゼラブル』
ディスコ曲のアレンジ『アフリカン・シンフォニー』
アイルランドより愛を込めて
次曲は、イギリス領北アイルランドにおいて事実上の国歌として扱われている曲で、日本では『ロンドンデリーの歌』もしくは『ダニー・ボーイ』の名で知られています。
素朴で美しい旋律は、聴く者の心を穏やかにし、ゆっくりとした時間の流れが心地良い、温かみを感じる演奏でした。
『デリー地方のアイルランド民謡』
ダンスリズムに乗せて!
そして本日の最後を飾る曲は、ダンス・リズム感がたっぷりで、これでもかこれでもかと畳みかけられ、今にも踊りだしたくなるような曲『リバーダンス』です。音楽隊員各々が奏でる楽器の音色の他に、時折、手足を楽器として使い発せられる音色。これがまたいいアクセントになり、更なる躍動感を生みだしていました。毎年足を運ばせて頂いている記念コンサートですが、ご多分に漏れず、今年もまた大満足の素晴らしい演奏を聞かせて頂き、明日からの活力源となりました。
ED曲『リバーダンス』

