3443通信 No.371
三好耳鼻咽喉科クリニック ラジオレポート
ラジオ3443通信「毛沢東の大躍進運動」

耳・鼻・喉に関する病気を扱う「三好耳鼻咽喉科クリニック」の三好彰院長は、耳鼻咽喉の診療に携わって45年。今回は2015年6月にfmいずみで放送された内容を紹介します。
[An.…江澤アナウンサー、Dr.…三好院長]
毛沢東の大躍進運動
An.
前回、産業革命後の英国のガーデニングのブームの背景に、世界中から観賞用の植物を集めた「プラントハンター」がいたこと、当時の「清」の国から輸出厳禁だった「お茶の木」を持ち出し、英国の紅茶のいわば国産化を成功させたのが、ロバート・フォーチュンというプラントハンターだったことについてお話を伺いました。フォーチュンは、三好先生の研究対象でもあるスギ花粉症の中国のスギの木を発見し、学名として自分の名前を付けたんでしたね?
Dr.
日本スギの学名は「クリプトメリア・ジャポニカ」ですが、中国スギは「クリプトメリア・フォルトネイ」、つまり「フォーチュンのスギ」という意味なんです。
An.
三好先生はそのクリプトメリア・フォルトネイでも、ジャポニカと同様スギ花粉症が発生することを、世界で初めて証明されたんでしたね!
Dr.
ロバート・フォーチュンのおかげで、私は様々な場所でスギ花粉症の講演をすることになった、そんな気もします(笑)。
An.
その講演はいかがでしたか?
Dr.
江澤さんは毛沢東とスギの関連について、ご存知でしょうか? 日本でスギ花粉症が国民病となったのは戦後、ハゲ山となった全国の山々で洪水が多発し、その対策としてスギ植樹による治水がなされたためでした。
An.
その植樹されたスギの木が、樹齢30年になって一斉に花粉を飛散させるようになった。
Dr.
スギ花粉症が問題になっているのは、日本だけじゃなく中国本国でも、似たような経緯からスギ花粉症が増加しているからです。
An.
中国でも山々の木々を切り倒し、洪水が多発してスギを植樹した?
Dr.
1を聞いて10を知る江澤さん。今朝もさえてますね! 毛沢東が1958年に開始した有名な「大躍進」運動の結果、中国全土がハゲ山だらけに。
An.
日本の戦後の状況と、似たような環境に?
Dr.
そうすると、わずかな降雨でも日本同様、中国の山々も洪水を引き起こします。それに対する、最も有効な治山治水の方法は…。
An.
ハゲ山に木々を植樹することです。
Dr.
中国でも、盛んに緑化運動が行われました。そしてこの際に使用された樹木は、日本とまったく同じスギの木だったんです。なぜスギの木が選ばれたのか。この謎は私たちが「中国革命揺籃(ようらん)の地」といわれる井崗山(せいこうざん)の風景を見た瞬間、氷解しました。江澤さん、この井崗山全山が見事なスギの木に彩られ、しかも当時の毛沢東の住居さえ、スギ林の目の前に建てられていたんです。
An.
ということは、つまり?
Dr.
毛沢東と共に青春を革命に費やした若い中国共産党幹部、後に政府の幹部になった人たちですが。その柔らかい頭脳に「スギの木で覆われた緑の山」が鮮やかに刻み込まれた幹部たちが、植林対策を実施するとしたら何の木を植えるでしょう?
続きは、次回のお楽しみです。