3443通信 No.371
めまいには様々な病態があり、その多くは耳に原因があると言われています。ですが、なかには脳などの命の危険が伴う中枢性めまいも存在します。
ここでは、過去に学会で発表しためまいに関する症例についてご紹介します。

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学会発表『前庭内神経鞘腫症例の25年間の聴力像』
(ポスター発表)
期 日:2011年11月26日
学会名:第70回日本めまい平衡医学会
会 場:ホテルニューオータニ幕張
三好 彰(三好耳鼻咽喉科クリニック)
石川 和夫(秋田大学)
三邉 武幸(昭和大学)
中山 明峰(名古屋市立大学)
まとめ
1.本症例の1996年の左側難聴は、突発性難聴であったものと推測される。
2.それに対し右側難聴は1986年の時点から前庭内神経鞘腫がその原因であったものと理解できる。
3.関係者の協力により入手できた二十数年間の聴力像は、貴重な本症例の経過を辿る上で重要な意味を有している。
4.本症例はすでに高齢であり、疾患も良性であることから、積極的な治療の対象とは考えにくい。
5.しかし本症例のような臨床例に遭遇した際に、過去にさかのぼって経過を十分に把握しておくことは、難聴のみにとどまらず、あらゆる疾患の成立機序を解明する上で有用であろう。
6.突発性難聴症例においては、新鮮例のみならず、陳旧例に対しても、 MRI撮影を考慮すべきかも知れない。
7.その際、三次元CTや三次元MRIなど最新の機器を活用すること は、疾患の実態把握にヒントを与えてくれる可能性を予感させる。
8.2011年3月11日の自宅半壊以降受診はないが、震災からの復旧を待って経過観察を再開したい。
Ⅰ.はじめに
今回は症例の内耳病変についての発表であるが、本症例はいびきを主訴として当院(三好耳鼻咽喉科クリニック、以下同)を受診し、スクリーニングMRIで前庭内神経鞘腫が発見されたものである。
Ⅱ.いびきについての病歴
症 例:65歳 男性
主 訴:いびき、右側難聴、右側耳鳴
既往歴:両側突発性難聴、高血圧
現病歴:1975年頃よりいびきが出現、自覚症状はないが、家族より無呼吸を指摘されている。2005年7月10日、当院を受診。
受診時所見:中咽頭粘膜狭窄以外の所見なし。
Ⅲ.受診後の経過
SASの精査も兼ねて実施されたMRIにて、右前庭内に造影MRIで濃染される腫瘍が存在。右側前庭内神経鞘腫と診断される。
一方、PSGにてAHIは6.5にすぎなかったことから、神経鞘腫について精査がなされた。
Ⅳ.耳症状についての経過
次に内耳症状に焦点をしぼって経過を整理する。
・1986年夏、右側聴力悪化に気付く。
・公立佐沼病院耳鼻科を受診し、入院治療となった。その時点ではそれ以上の所見は見出せず、経過観察となった。
・1996年8月22日起床時、左側難聴、めまい、嘔気が出現し、公立佐沼病院耳鼻科を受診。1カ月の入院治療で左側の聴力は回復した。
・2005年7月10日の当院受診を経て、9月15日秋田大学耳鼻科で精査を受ける。
・聴力像は後に供覧するごとくであり、当院と秋田大学におけるカロリックテストもDPOAEも右側無反応で内耳機能廃絶であった。
・年2回のフォローアップMRIでは、腫瘍のわずかな増大傾向が確認されている。
Ⅴ.聴力像の経時記録

1986.6.6(佐沼)(図1)

1988.18(佐沼)(図2)
公立佐沼病院に本症例の20年間の聴力検査が保存されていた。そして1986年6月6日と1988年8月18日の聴力像は、内耳腫瘍による急性感音難聴発症前後の検査結果である。

1989.2.6(佐沼)(図3)

1989.4.17(佐沼)(図4)
佐沼におけるその後の経過。

1996.8.22(佐沼)(図5)

1998.3.18(佐沼)(図6)
本症例は、1996年に左側の突発性難聴で入院するが、同年8月22日の聴力像も保存されていた。この左側突発性難聴は回復したことが、1998年3月18日の記録から判る。

2005.3.15(佐沼)(図7)

2006.3.9(秋大)(図8)
その後の公立佐沼病院と秋田大学における検査結果。

2007.6.27(当院)(図9)
(眼振)

2005.10.16(当院)(図10)
2007年6月27日の当院における検査結果である。左側の聴力は正常だが、右側はスケールアウトで、右方へ向かう眼振の見られることが理解できる。

2011.1.24(当院)(図11)
当院における最新の検査結果。
2011年3月11日以降の受診はない。
次にMRI画像(図12、13)を示すが、矢印が右側前庭内神経鞘腫である。

図12 図13
情報量を増やすために、本症例の内耳を3次元CTで立体化した画像でチェックすることにした。
Virtual EndoscopeによるIAMの観察。
Virtual Endoscope(仮想内視鏡)と称されるもので、3次元CTで右側内耳道を画像化した(図14、15)。

図14

図15
神経鞘腫は内耳道内に発生することが多いのでチェックしたが、内耳道内には異常は認められなかった(図16)。
V.Eの観察方向(図17)

図16

図17
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