3443通信 No.372
ラジオ3443通信「珍しい食事」
ラジオ3443通信は、2010年から毎週火曜10:20~fmいずみ797「be A-live」内で放送されたラジオ番組です。
ここでは2013年1月8日OAされた、学校健診にまつわる話題をご紹介いたします。
98 珍しい食事
An.
三好先生、前回は雲南省の昆明市で昆明医学院と先生との共同研究の際、珍しい食事をして来られたと伺いました。
バター茶のお話も新鮮だったんですけど、先生、珍しい食事ってなんだったんでしょう?
Dr.
江澤さんは、イナゴの佃煮って食べたことがありますか。
An.
イナゴって先生、あの虫のことでしょうか・・・・・・。江澤はあまりなじみはありません。
Dr.
私が子どもの頃は稲刈の後の時期に、田んぼでイナゴを捕まえては、佃煮にして食べました(図1)。

図1
An.
それって・・・・・・、おいしいんでしょうか?
Dr.
砂糖としょうゆとで甘辛く煮付けて食べるんですけど、日本では古くから動物性たんぱく質を摂取するために、食用にされていたんです。
An.
ちっとも知りませんでした。
Dr.
「本草和名」という918年頃作成された資料に、日本人がイナゴを食べていたことを示唆する記述がある、と言われます。
ですから日本人の食事としては、歴史的になじみ深いものと言えそうです。
An.
ヘェーッ。
Dr.
先に述べましたように、こうした昆虫食は動物性たんぱく質の摂取が目的ですので、肉食が禁止されていた江戸時代の日本でも、貴重な栄養源と考えられていたようです。
An.
そうだったんですねぇ。
Dr.
ですから、明治維新後の日本では肉食が普及し、昆虫食の習慣は激減しました。しかし食糧難に見舞われた戦中から戦後にかけて、昆虫食は復活したんです。
ただ一時期、水田に過剰な農薬散布が行なわれ、イナゴも少なくなったんですけど、殺虫剤の多用が批判されるようになって。
An.
イナゴはまた、増加したんですね?
Dr.
それで以前のようにイナゴ採りが、行なわれるようになりました。
An.
動物性たんぱく質の摂取が目的でしたら、他にも日本には、昆虫食の習慣があるんじゃあ?
Dr.
特に山間部の、肉や魚の手に入れづらかった地域では、イナゴだけでなくハチノコや、ザザムシと呼ばれる川の浅瀬に住む昆虫類、そしてカイコガなども食用にされました。
An.
ハチノコって、江澤も聞いたことがあります。
Dr.
信州つまり長野県では、スズメバチの巣を採取して、巣の中の幼虫やさなぎを佃煮に料理します。
An.
ススメバチの巣って、そんなに簡単に採れるんですか!? 危険じゃないんでしょうか?
Dr.
ハチの巣を見つけたら、夜になってからハチの出入口に特殊な花火を仕掛け、ハチを煙で燻す(いぶす)んです。
An.
そして、ハチがまひしたところで・・・・・・。
Dr.
ハチの巣を採取するんです。
An.
ハチの巣って、そんなに簡単に見つかるものなんでしょうか?
Dr.
井伏鱒二って小説家の名前を、江澤さんはご存じですよね。
An.
えぇ、「山椒魚」や「ジョン万次郎漂流記」で有名ですよね。そうそう、「ドリトル先生アフリカ行き」を訳したのも、井伏鱒二でしたよね。
江澤はドリトル先生が大好きで、何回も繰り返し読みふけった記憶があります。
Dr.
私もあれは好きでした。動物語の話せるドリトル先生が、奇妙な名前の・・・・・・そうそう「オシツオサレツ」なんて名前の動物もいましたね(笑)。そんな動物たちと、アフリカで活躍するんでしたねぇ。
An.
あのドリトルという名前も・・・・・・。
Dr.
そうなんです。つまり英語の "Do Little"ですから、日本語に訳すと「何にもできないお医者さん」という、すごい名前なんです(笑)。
An.
で、その井伏鱒二が?
Dr.
この井伏鱒二には、「スガレ追ひ」っていう短編があるんですけど。その中に、信州の伊那地方で子どものときからハチの巣採りをやって来た人たちの、お話が紹介されています。
An.
それは面白そうですね。
Dr.
今でもハチの巣を採取するのは、この方法が一般的らしいんですけど。
まずカエルを捕まえます。
An.
カエルですか?
Dr.
その肉を、小さな肉団子にします。
An.
直径2~3ミリって感じでしょうか。
Dr.
作った肉団子に目印として、よじった真綿をくっつけておきます。これは、発泡スチロールでも代用できるみたいですけど。
An.
目立つようにしておくんですね。
Dr.
カエルの死骸を、ハチが飛んで来そうな場所においておくと、働きバチがやって来て肉団子を作ります。
An.
光景が、目に浮かびそうです。
Dr.
機を見て、その肉団子を真綿付きのそれに取り替えます。するとハチは、自分の肉団子と真綿肉団子を取り違えて、真綿の目印付きの肉団子をしっかりと抱いて(笑)。
An.
巣へ向かうんですね?
Dr.
暮れかけてまわりが薄暗くなっても、この白い真綿が目印となって・・・・・・。
An.
ハチの飛んで行くのが、よく見えるんですね(笑)。
Dr.
その跡を追い掛けて、ハチの巣のありかに辿り着くんです。
An.
そして、その巣を燻す(いぶす)んですね。
Dr.
江澤さん。さっそくマネしちゃいけませんよ(笑)。
An.
お話は次回に続く、ですね。本日はありがとうございました。