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3443通信 No.372

 

めまいには様々な病態があり、その多くは耳に原因があると言われています。ですが、なかには脳などの命の危険が伴う中枢性めまいも存在します。
 ここでは、過去に学会で発表しためまいに関する症例についてご紹介します。

 

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学会発表『家族性両側性聴神経腫瘍の2家系』

期 日:2007年5月18日
学会名:第108回日耳鼻総会
会 場:ホテル日航金沢ほか

三好 彰(仙台市)
殷敏・石川 和夫(秋田大)
程雷(南京医大)
三邉 武幸(昭和大藤が丘)
稲川 俊太郎・中山 明峰(愛知医大)
鈴木 淳一(HIJ)
荒井 祥一・今田 隆一(泉病院脳神経科)


はじめに
 
われわれは今回、家族性両側性聴神経腫瘍の2家系を経験しましたので、ご報告させて頂きます。

症例1(家系1)
既往歴:なし
家族歴:父親(症例2)が35歳時、両側聴神経腫瘍で脳外科にて摘出術を受けている。
現病歴:1996年5月上旬、両側の耳閉感が出現。5月14日、三好耳鼻咽喉科クリニックを受診します。
 症例1は、1996年5月に三好耳鼻咽喉科クリニックを受診した18歳の女性です。後刻判明したのですが、本症例の父親が35歳のときに両側聴神経腫瘍にて脳外科による摘出手術を受けています。ここでは父親を、症例2として扱うこととします。

受診後の経過
 受診後の経過ですが、聴力は変動を繰り返しており、2000年の脳外科のMRI(図1)では内耳道に腫瘍陰影なしと診断されています。
 しかし難聴の増悪が見られ、再度2003年に撮影したMRI(図2)では、両側難聴の増悪があり、両側内耳道に造影される腫瘍陰影が発見されました。

図01
 図1

図02
 図2


 聴力像の変化(図3~5)です。ご覧のように両側難聴は時期により変動し、腫瘍の発見まで診断に悩む結果となっています。
 腫瘍発見時の眼振所見(図6)をお示ししました。本症例は脳外科受診後、γナイフの適応となりました。

図03
 図3

図04
 図4

図05
 図5

図06
 図6


症例3(家系2)
症 例:50歳、女性
既往歴:なし
現病歴:2006年5月1日より左側難聴と耳鳴が出現。5月8日に某医受診し、原因不明とのことで内服治療するも改善なく、5月10日に三好耳鼻咽喉科クリニックを受診します。
 症例3は50歳の女性で、2006年5月急性難聴のために三好耳鼻咽喉科クリニックを受診しています。
 聴力像と眼振所見(図7)です。造影MRI(図8)にて両側内耳道に濃染像を認めます。

図07
 図7

図08
 図8


受診後の経過
 受診後3日目となる5月12日にMRIにて両側聴神経腫瘍が発見され、泉病院脳神経科を経て東北大学耳鼻科にて経過観察中となっています。

症例4
症 例:23歳、女性
家族歴:母親(症例3)に両側聴神経腫瘍。
現病歴:2007年1月29日、右耳閉感と難聴を自覚し、2007年1月31日に三好耳鼻咽喉科クリニックを受診します。
 聴力像と眼振所見(図9、10)です。

図09
 図9

図10
 図10


 ステロイドと低分子デキストランの使用で、聴力は一旦正常に復します(図11)。
 しかし造影MRI(図12)にて、両側内耳道に腫瘍が観察されます。腫瘍発見後は東北大学耳鼻科にて経過観察となっています。
 両側性聴神経腫瘍は、以前はレックリングハウゼン病と混同されていましたが、現在では遺伝子型の異なる別の病気と認識されています(図13)。

図11
 図11

図12
 図12

図13
 図13


 今回われわれの報告した2家系・4症例は家族性両側性聴神経腫瘍であり、神経線維腫症2型つまりNF2と診断されました。
 通常NF2型の聴神経腫瘍は、30歳までにほとんど全員が発症するとされています。今回報告した症例3は初診が50歳ですが、聴神経腫瘍そのものは30歳までに発生しており、その後サイレントであった可能性を否定できません。

 症例3および症例4の聴神経腫瘍発見に際しては、症例1・2の経験が非常に役に立ちました。いわばわれわれに対する学習効果があったと表現できるかも知れません。
 突発性難聴を思わせる急性難聴の症例に対して、いつの時点でMRIを実施すべきか迷うことがあります。しかし聴神経腫瘍の頻度は、以前想像されていたよりもはるかに高いようにも感じられます。
 あるいはMRIは必須と考えた方が良いのか、現時点ではわれわれには断言できずにおります。

 われわれはここで、家族性両側性聴神経腫瘍の2家系・4症例を報告しました。
 2家系目の症例の早期発見には、第1症例の診断に苦労した経験が役立ちました。
 急性難聴症例におけるMRI撮影の時期について考え直しを迫られると同時に、これまでこのような症例を見逃していた危険性についても、われわれ自身深く反省しているところです(図14)。

図14
 図14


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